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23.視線の正体と波紋

やっと一章が終わりに近づいてきました。



 生産職のルークと別れた後、ナインは冒険者組合で古都近辺の依頼を受ける事と北の森へ足を運ぶことを交互に繰り返した。


 月曜日は依頼、火曜日は北の森へ遠出、水曜日はまた依頼。そして木曜日の今日にも遠出をし、アイテムをそこそこに持って帰路に着いていた。

 ちなみにこの数日でナイン達が独占していた北の森はいくらかのプレイヤーが訪れ始めていた。


 恐らくこれが本来の到達速度なのだろう。そう思うと飛ばし過ぎていたのかなともナインは思う。


「そして今日も、なんだね」


 最近日常の様に古都に隣接したエリアに入ると、半々ぐらいの確率で月曜日に感じたものと同種の視線を感じる。

 だが妙なのは、その数や質が若干異なっていたこと。


 つまり、私を監視?しているのは集団ないし組織……などとナインの考えは至っていたが、段々とその感覚も鬱陶しくなってきたところだ。

 流石に四日続けては面倒臭い予感がするので、対処しなければならないだろう。


「そろそろ、白黒つけたいんだけど。出て来ないなら戦闘の意志あり、と判断するよ?」


 足を止めて、視線の方へと振り返っては盾の代わりにナイフを取り出して構え、声を飛ばす。

 すると隠れている相手が居るであろう方向の草むらが揺れた。


 見立て通りの位置だ、後は狙いを絞るだけ。

 呼びかけに返事もない、ならば――


「待ッテクレ!」


 左手を振りかぶり始めた時、草むらから誰かが飛び出してくるのを見て、攻撃の意思が無いと判ればナイフを投げずにインベントリへしまう。

 が……ナインは剣を抜いた。


「……ゴブリン?」


 姿を現したのは低身長で緑の肌をしたゴブリンだった。





「……それで、君たちはなぜ私を見ていたのかな。四日間も」

「ソレハ……」

「俺タチ、助ケガ乞ウ」


 一匹……一人?通常の敵と違いNPCと同じ白いネームアイコンのゴブリンが姿を現すと、同じような個体が二体ほど追加で現れた。

 彼らは武装こそしているものの、戦意は無いようで座って頭を下げ始めた。


「どういう事か、説明してくれる?」

「助ケテクレルノカ!」

「説明を」

「オ、オウ」


 訳が判らないために説明を求めれば、勘違いし始めて嬉々とした表情を見せたので軌道修正しておく。



「我ラノ族長ガ、殺サレタ」

「王ガ訪レ、従エト迫ッテキタ」

「近クノ都ヲ、襲オウトシテイル」


 主な彼らの話を整理すると、こうだ。


 ゴブリンの中では穏健な一族であったが、突如この地域に現れた王が恭順を誓うように強要し、断った族長を殺してしまったらしい。

 どうしてそんな事をしているのかと言えば、その王とやらが都……おそらく古都の事だろう、そこを襲撃しようと画策して居るらしい。

 なお彼らの一族は散り散りになったが無事では有るそうだ。


 話は理解出来たものの、一体私がどう助けられるというのか……そう思っていると、意外にもゴブリンがその答えを教えてくれた。


「オ前、強イ。ダカラ都デ顔キク!」

「知ラセテ欲シイ!」

「ツイデニアノ暴君ヲ倒シテホシイ!」


 なるほど。どうやらある一定以上のレベルと、NPCとの友好度のようなものの両方が必要だったのだろう。

 それなら納得だ。スプークはまず最低限しか関わっていないだろうし、アリスやヒューイも、程々の筈だ。



「なるほどね、解った。伝えておくことにするね」

「アリガトウ!」

「感謝ダ!」

「後、もしそのゴブリンの王を倒したら……何か、貴方達は……」

「ソノ時ハ、俺タチオ前ニ感謝スル!」

「一族、困ッタ時ニ協力スル!」

「ソレデ恩義ヲ返スゾ!」


 冒険者組合や掲示板にこの情報を上げるのが良いだろう。

 そしてちょっとだけ湧いた欲から訊ねてみれば……不定形だが、報酬は確約出来た。


 ナインがその事実にちょっとしたやる気を誘われていると、目の前にウィンドウが開いた。



+--------------------------------+


サブクエスト 侵攻の予兆


発行者:ゴブリン

内容:ゴブリンキングが古都へと攻め入ろうとしている。

   その事実を冒険者組合に報告せよ。

条件:なし

※このクエストは成否に関わらず一度しか発行されません。


報酬:????

   ゴブリン族友好度


受注しますか?


《Yes / No》



+--------------------------------+



「ん、そう言えばそのゴブリンの王が居た、っていう証拠はどうすればいいのかな」

「王ハオーラヲ纏ウゾ」

「他ノごぶりんニハ出来ナイ」

「大キナ剣モ持ッテイル!」


 クエストの受注を選択して、ふと内容の中の報告という単語に改めて彼らへと問い掛ける。

 冒険者組合にせよ掲示板にせよ、その事実の裏付けが必要だから、だ。


「それと、その軍団の数は判る?おおまかでいいから」

「ドレグライダ……?」

「千ヨリモ多イヨナ……」

「千ヲ十ダ!」

「はー1万?嘘でしょ」


 1000を10、つまり一万もゴブリンの軍勢は擁して居るらしい。


 最悪(ナンバーテン)だ。





 友好的なゴブリンから粗方情報を聞き取り終えたナインは、掲示板へ書き込みつつ古都の冒険者組合へと向かった。

 依頼のあった北の森のアイテムを納品し、報酬を受け取るついでに普段の笑顔を曇らせながら受付嬢さんへと相談を持ち掛けてみる。


「すみません受付さん、ちょっと込み入った話をしても?」

「冗談ではなさそうですね……奥の個室へどうぞ」


 一礼してから在席していたカウンターに中座を示す立て札を立てた受付嬢さんに先導され、組合の奥へと案内される。


 そこは少々広い応接間のようで、一対のソファがテーブルを挟むように置いてあった。

 ソファまで向かった受付嬢さんに促され、お互い腰を掛けてから話を切り出す。


「信じて貰えるか、自分でも怪しいと思うんですけれども」

「はい。一体どんなことが有りましたか?」

「北の森から帰る途中、オーラを纏って大きな剣を持った巨躯を見たんです」

「それは……ゴブリンジェネラルですか?」

「わかりません。ただ大きかったことと帰路だったので、戦ったら不味いと思って逃げ帰ってきたのですけれど……」

「けど……?」

「その途中でひしめくゴブリン達も見たんです。1000じゃ足りない数の集団がいくつか」

「…………冗談では無いですよね」

「だったらいいんですが。もしそれがこの古都に来たら不味いかな……と思ったので」


 実際には聞いた話だが、出来るだけ真実味を帯びるようにナインは話した。

 それを聞く受付嬢さんも口元を抑え長考に入ったので、背もたれに背を預け細く長い息を吐く。


「……わかりました。冒険者組合からも裏付けの為に人を出しましょう」

「ありがとうございます」


 数分悩んだ彼女が決断した顔で了承してくれた上に、前向きに動いてくれたことに安堵の笑みが零れる。

 そしてすぐに非礼を詫びて部屋を出る受付嬢さんを見送りつつ、ナインは次へと行動を移す事にした。




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