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16.アーツとスキルと熟練度



 さて。アリスとの話を終えて、喫茶店から途中寄り道をして冒険者組合へとナインは移動していた。

 昨日と今日とで見慣れつつある門戸を開けば土曜の夜であり、ゲーム内では昼間のために多くのプレイヤーやNPCが様々な会話を交わしている。


 そんな組合の中を多少の人目を引きながら受付へと向かえば、受付嬢さんの方から声をかけられた。


「本日はどういった御用件でしょうか、ナインさん」

「おっと。今日は訓練場って所が有るって聞いたので」

「なるほど。でしたらそちらの出口からとなります」


 説明された方へと首を巡らせれば、入り口よりも小さい出口が目に入る。


「利用するのに何か注意事項はあります?」

「いえ、冒険者登録されているので自由にご利用できますね」

「どうも、ありがとうございます」


 目当ての場所が判れば受付嬢に頭を下げて礼をした後、そちらへと向かわせて貰う。

 出入口では無い出口を潜れば、幾つかの人影が見える小さな運動場ほどの敷地がナインの視界に入った。





 街並みの中で四方を建物に囲まれた中庭のような場所へと足を踏み入れると、いくつかの案山子や木製の人形のようなもの、よく見る射的の的なども有り、訓練場と言うのに相応しい空間がそこにあった。

 まばらながら剣を振るNPCや、奥で的を相手に木製の射撃台で弓を射るプレイヤーの姿も見える。


 それらを確認し、ナインは入り口付近で腕を組みながら全体を眺めている、いかにもと言った風体の男性に声をかけた。


「今、いいでしょうか?」

「うん?お前は……異邦人(プレイヤー)か」

「ええ、此処を利用したいと思いまして」

「それは構わないが……」

「何か問題が有りましたか?」


 渋る、と言うよりは困惑する様な表情を向けられて、疑問に首を傾げるとすぐにそれは解決された。


「いや、初心者と言えなさそうな者が来るとは思わなくてな」

「ああ……専門外の練習、をしようと思っていて」

「なるほどな。他の奴らに邪魔にならないよう、好きに使ってくれ」

「ありがとうございます」



 あっさりと此方でも許可を得ることが出来れば、頭を下げ奥の空いたスペースまで足を運ぶ。

 的である木人形を持ち上げて片隅へと置き、大体20メートルほど距離を取って向き直り――


「本当にコレで大丈夫なんだろうか……」


 インベントリという名の懐から取り出したのは、巻かれた羊皮紙で作られる|魔法陣を込められたアイテム《スクロール》だ。

 冒険者組合に赴く前に雑貨屋で話を聞き、魔法道具を取り扱う店で購入したものになる。


 通常の物は書き込まれた魔法陣に魔力を流すだけで簡易的で素早く魔法を発動したり、一度しか使えないがその魔力自体が込められているものも有るらしい。

 今回ナインが取り出したのは前者の方で、極初級のスキル習得の為の初心者用の物だ。


 無論、スキルポイントと言うレベルアップごとに貰えるものでも習得できるが……こちらは、取っておきたいというのがナインの本心だ。


「……ファイア」


 疑心のままスクロールへと魔力を流し込みつつ、起動の術名を唱えれば――少々小さめの炎が、空へ向けた手の平の上に灯った。

 拳ほどの芯が燃える様な規模、ぶつければ顔面を覆えるぐらいだろうか。


「なるほど、これは少しステータスのINTを上げた方がいいかな」


 攻撃に使うというよりも、牽制用と言った方が良いレベルの火を人形へと放れば、予想通り表面を僅かに焦がすだけに留まった。

 実際レベルアップのボーナスを振っても居ないし、魔法を今迄使っていない為に上がる事も殆どなかった。

 故の、初心者並のこの低火力だろう。


「仕方無い、よね」


 苦笑しながら風魔法のスクロールも使い、晴れて火と風の属性の魔法をナインは一応使えるようにはなった。





「さて教官」

「教官?俺の事か?」

「ええ、なんて呼べばいいか判らなかったもので」

「ははっ、そりゃあいい」


 何度か魔法を使ってみて、その低火力の程と今後の事に想い馳せながらMPを使い果たした後、ナインは最初に挨拶した男の元に居た。


「ちょっと訊ねたいのですけれど、アーツはどういった感じで覚えるんですか?」

「アーツ?それなら熟練度が一定以上有れば覚えてるはずだが……」

「今迄使ってなかったというのも有るんですかね?」

「……もしかしてお前、チュートリアルで試しても居なかったのか?」

「はい」


 正直に尋ねられた事に答えれば、教官(仮名)が目元を抑えるように頭を抱え始めた。

 どうしたのかと、体調不良かと思ったが……すぐに立ち直った様子を見て安心していると、呆れた口調で彼は言う。


「アーツやスキルの一部は、その系統の行動や動作をしないと覚えることが出来ないんだ」

「先程やった魔法のように?」

「そうだ。そして剣術のアーツならば《スラッシュ》という初期アーツを覚えている筈だ」

「……あ」


 言われた通りにメニューを開きウィンドウを操作していくと、確かにアーツの項目とその中に技が一つ登録されていた。


「その装備などの熟練度も有るが、アーツの使用回数なども次のアーツの習得条件にもなっている」

「なるほど。要はそこを飛ばしたから……」

「お前は習得出来ていなかった。まあ今からでも使えば大丈夫だろう」

「そういう事でしたか」


 ようやく納得することが出来て安堵の一息をついてナインが頷けば、大丈夫かと心配される様な視線を感じる。

 失敬な、と目を細めてから苦笑を見せ、先程かすり傷と焦げ目を作った木人形の元へと歩み――


「《スラッシュ》」


 剣を構えぼそりと呟けば、剣が一人でに動いているかのように、身体を引いて斬撃を放つ。

 それを受けた人形に深い痕を残すも、その後も僅かに動けない時間が有り……しばらくすると身体が動くようになる。


「始めて使った感想はどうだ?」

「……よほどの緊急時でなければ、使いたくないですね」

「そりゃお前さんの力量でならな」


 いつの間にか近くまで来ていた教官(仮名)に苦笑されては、ナインも頬を掻くしかない。

 どうも勝手に身体を動かされる感覚だけはどうしようもなく慣れそうにはない。


「ただ、通常攻撃よりも威力があるのと、移動系のはそう言った硬直は少ないぞ」

「……ふむ」

「まあそちらの習得も頑張る事だな」


 そう言って手を振って元の場所へと歩いて戻る彼の背中を見送りながら、その言葉の意味を考える。


 確かに攻撃のアーツは使い勝手が悪く感じた。

 だが、アーツでしかない攻撃方法なども有るだろうから、習得すること自体は悪いことではないだろう。

 それに……おそらく彼の言葉にあった移動方法。戦闘ではもちろんそうでない場面でもきっと使える事だと思う。


「なら、少しづつ覚えて行かないと、だね」


 やることが多いと自分自身の行動に苦言を漏らしつつ、その日は就寝の為にログアウトするまでナインはアーツや魔法の練習を続けていた。




name:Neinナイン

Lv:20

種族:人間

職業:

所持金:47910シルブ


・ステータス

HP:340 MP:90

STR:42 VIT:14

DEX:31 AGI:46

INT:12 MND:14

LUK:13


・装備

右手:ブロードソード

左手:アイアンシールド

胴:鉄の胸当て

腕:鉄の籠手(DEX+1)

腰:チェーンベルト

脚:革ズボン

靴:鉄板入りグリーブ(AGI+1)


・熟練度

《片手剣》Lv.15

《片手盾》Lv.16

《短剣》Lv.12

《近接格闘》Lv.9

《投擲》Lv.14

《火魔法》Lv.3

《風魔法》Lv.4

《回避》Lv.11


・スキル

《投擲》《射撃》《剣術》《盾術》《見切り》《受け流し》《火属性魔法》《風属性魔法》

《身体強化》《スタミナ強化》《魔法耐性》《精神異常耐性》

《偽装》《看破》《探知》《暗視》《気配察知》《危機感知》

《歩行術》《逃走術》

《装備変更》《戦闘続行》

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