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 重い足を引きずり階段を一段ずつ上がって自室へ戻り、ひとりベッドで寝ていたみーさんを抱く。大きく溜め息をつき、モフモフした彼の首筋に顔を埋めていると、後ろからクスクスと笑い声が。顔を上げると、栞里が腕組みをして柱に寄りかかり、面白そうに私を見下ろしていた。


「お疲れー」

「マジ疲れたわ……」

「やられるお姉ちゃんは大変だと思うけど、仕方ないよね。お母さん、寂しいのよ。お父さんは毎日帰り遅いし、お姉ちゃんは滅多に帰ってこないし。私だって忙しいからいつも構ってあげられるわけじゃないしさ。ずっと専業主婦で家族の面倒見るのを生きがいにしてきた人だもの、他に何も無いじゃない。だから、まぁ、親孝行だと思って諦めるのね」

「それはわかってるんだけどさ。私だって体力気力の限界ってものがあるからね」


 ここまで疲れ果てるともう、苦笑いしか出てこない。


「わかってるんだったら、少しは考えたら? 私だっていつまでも家にいるわけじゃないのよ?」

「そうだけど……。でもさ、それってなんか矛盾してない? あんたが嫁に行って、私まで結婚して家を出てったら、お母さん、それこそ寂しくなっちゃうんじゃないの?」

「そんなことないわよ。お父さんだってもう数年で定年だし、その頃には孫もいるし、きっと毎日ウキウキお父さんと孫の世話してるわよ」

「孫? えぇ? あんた、もしかして……」

「違うわよ。私はちゃんと計画してるの。あんたみたいに行き当たりばったり生きてるわけじゃないんだからね」

「うー……、はいはい。栞里さんはしっかり者だもんね。どーせ私なんかとは違いますよ……」


 まったく誰に似たのか知らないが、妹の栞里は、何をするにもまず計画。姉の私とは比べ物にならないほどしっかりしてる。父母からの信頼も厚く、幼い頃は確かに私が姉だったが、成長した今となっては、すっかり私の方ができの悪い妹扱いだ。


「ところでさ、さっきの話……お姉ちゃん、本当に彼氏いるの? 全然いるように見えないんだけど?」

「え? ああ彼氏。んー、いるようないないような……」

「いるの? いないの? どっち?」

「だからー、いる、と言えばいる? いない、と言えばいない?」

「なにそれ? 意味わかんない。そんなんだから、お見合いしろって言われるのよ。ちゃんと考えた方がいいわよ。このままだと、本当にお見合い結婚させられちゃうから。そうなってから泣くのはあんたなんだからね」

「大丈夫。そうなる前に逃げ……」

「逃すわけないでしょ!」


 いつの間に上がってきていたのか甲高い声とともに母が部屋に乱入してきた。まずい。どこから聞かれていたのだろう。ドアは開け放していたから声は筒抜だったはず。ここは笑ってごまかさなくては。


「ははは。やだ……お母さん。なんの話?」

「あんたを片付けるのはお母さんの使命よ! さあ、みーちゃん、おいでー、お母さんと寝ようねー」


 ヘラヘラと笑う私を無視した母は、つかつかと歩み寄ってきて、私の腕からみーさんをさっと抱き上げ愛しそうに頬をスリスリしている。


「ちょ……、みーさんは私と寝るのに!」

「あんたは独り寝の寂しさでも『満喫』してなさい!」


 冷徹な捨て台詞を残した母に、大事な彼氏であるみーさんを連れ去られてしまった。


「ホント……どうなっても知らないよ?」


 栞里にまで冷めた目で一瞥され、私はもう縮こまって膝を抱くしかなかった。





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