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お手伝い①
「マスター」
呼ばれたギルは振り返り、少し視線を落とす。
「どうしたの?」
「マスター。私は何をすれば良いですか?」
「う~ん。そうだな」
ギルは腕を組んで唸る。
「ヨツバは包丁を握ったことはある?」
「知識としてはあります。ナイフと似たような刃物ですよね? でしたら扱えます」
「じゃあやってみようか」
ギルはヨツバに包丁を握らせる。
「ターゲットは?」
「……ターゲット? えっと、切ってほしいのは、まな板の上の野菜なんだけど。届かないか」
台所もそうだが、この家はギルに不便にならないように元々、大きな獣人族が住んでいたのを村の人に提供してもらっているのだ。だから小柄なヨツバだと台所から顔が見えるぐらいだ。
「大丈夫です。ターゲットを視認しました」
機械的に言うとヨツバは高く跳躍。そして逆手に持った包丁を両手で振り上げて、ニンジンに突き刺した。
「ターゲットの破壊を確認。戦闘終了です」
ギルに振り返って淡々と報告するヨツバ。
「まな板ごと真っ二つにしなくても」
ギルは頭を抱えるしかなかった。