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奴隷の名前
「君の名前は?」
ホムンクルスの少女をカルネラに解放してもらったギルは目線を合わせて少女に問う。
「個体識別番号は428番です」
「? 君の名前だよ?」
「428番です」
何度名前を訊いても少女はそれしか答えない。
「カルネラ、この子の言っていること分かる?」
「戦闘用のホムンクルスには名前を付けないのよ。でも戦時中は大量生産するから個体識別番号を与えて個体数を管理するの」
テーブルでギルたちの様子を見ていたカルネラが答える。
「なら、名前を付けても良いのかい?」
「好きにしたら? 前の主人の登録は消してあるからその子はギルの子だよ」
「じゃあーー」
「428番だからヨツバっていう安直な名前じゃないわよね?」
「うっ」
図星を指されたギルは押し黙る。
「でもヨツバって名前良いと思うんだけどな。幸せを運ぶ四つ葉のクローバーだし」
「別に何でも良いわよ。その子が自分という存在を確認するためのものなんだから」
ギルは少女の青い瞳を見つめる。
「今日から君はヨツバだ」