行き先は
深くなっていく森では幌馬車は使い物にならず、繋いでいた二頭の馬だけ切り離してギルたちは駆けていた。
「あ、ギルさんだ!」
木々の陰から姿を現したのは避難していた異端の村の人々。
「無事だったんだな!」
「村はどうなった?」
「人間族は攻めてきてるのか?」
村人たちはギルに駆け寄り情報を求める。
「すみません。村は燃やされてしまいました。ですが、人間族は一度退いたので時間はあります」
異端の村が無くなってしまったことに肩を落とす村人たちだが、ギルたちが人間族を倒してくれたことに安堵する。
「これからどこに逃げるのよ?」
もう一頭の馬の手綱を握るカルネラが訊く。
「この森は森精族の土地だ。だから森精族を頼りたいところだが……」
「森精族は純血を尊ぶ。俺たちじゃ追い返されちまう」
「でも人間族が攻めてきていては森を出ることも出来ない」
村人たちは頭を抱える。
「一か八か行ってみよう」
そう言ったのはギルだった。
「人間族は森精族と戦うつもりだ。もしかしたらもう戦っているかもしれない。そんな中なら森精族も僕らをむげにはしないはず。僕たちだって人間族と戦ってるんだからね」
「敵の敵は味方、ということね。良いんじゃないかしら」
カルネラが同意する。
「それに森精族にはお人好しが居るから。あなたが説得すれば味方になってくれるかも」
カルネラはギルの背中に縛られている大きな包みに微笑む。
「行ってみよう」
ギルの言葉に村人たちは頷き、森の奥へと歩を進めた。