村会議
アリステラが去った夜のこと。村の男たちは村で一番大きい村長の家に集まっていた。
「敵の規模は分からないが、部隊に一年前に魔王を倒した勇者が居る」
その事実に村人たちは唸る。
「村人は百人ほど。そのうちで戦えるのは半分も居ない」
「逃げるしかないのか?」
「逃げてどうする。俺たちを迎え入れてくれる場所などないぞ!」
「だが、戦って勝てると思うのか?」
「この森の村もやっとの思いで辿り着いたんだ。捨てたくない」
「でも戦だって無謀だ」
男たちの心は何事もなく家族と過ごしたい。しかし、そのための方法が纏まらなかった。
「ギルさんはどうしたら良いと思う?」
一人の言葉に男たち全員がギルを向く。
「僕は皆さんの行動を決められない。いや、決めちゃいけないんだ。僕はあくまでも村の傭兵。この村のために戦うのが僕のやること」
「ギルさんは村で一番強い。ギルさんが勝てるって言うんだったら戦うし、無理なら俺たちも逃げる」
「戦に勝てるかどうかじゃないんです。僕は戦わなくちゃいけない。幼馴染みのアリステラを止めて、そしてこんな姿の僕を受け入れてくれた皆さんを守るために。僕のこの呪いの身体を役立てるときは今なんですから」
ギルは頭蓋骨の頭で微笑む。
「だから皆さんは安全な場所に居てください。敵を倒したら必ず迎えに行きますから」
ギルの言葉に男たちは俯く。
本心ではギルと共に戦いたい。だけど争って命を落とすのがとても怖かった。
異端の村の人々は迫害されてきた民。だからこそ家族や親しい者を失う痛みを常人より知っている。
だからこそ、ギルは彼らに戦ってほしくない。
「僕が勇者を止めてみせます」