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分かたれた思い
「どうしても、戦うというんだな?」
懇願に近い表情でアリステラは問う。
「戦うよ。この村の人々を守るため、そしてこれ以上アリスちゃんを苦しませないために」
「……分かった」
アリステラは表情を消すと、踵返した。
「何処に行くつもりよ?」
カルネラが声で止める。
「今日の任務は偵察だ」
アリステラは顔だけ振り返る。
「次は私たちだけじゃない。本隊が村と周辺の森を焼き払う。覚悟しろ」
アリステラからはすでに親しさが消えていた。一年前に魔王に挑んだときの瞳だった。
バチリ、とアリステラの隣で雷が弾ける。
「君では私には勝てないよ」
そう言ってアリステラは部隊を率いて去っていった。
「戦えるの、ギル? 相手はアリステラ、無理しなくても良いのよ?」
「ありがとう、カルネラ。だけど大丈夫、僕はこの村の傭兵だから」
カルネラの言葉にギルは空を仰ぐ。
「人殺しが僕の役目だから」