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ネコミミ王子と嘘つきメイド  作者: 花言葉
嘘つきな落ちこぼれメイド
9/23

7

「ララ・メロー遅刻の理由を述べろ」

「寝坊しました」

「……あなた、王子の部屋に寝泊まりしているんだって、寝坊する位の事をしているのかしら?」

「寝坊するようなこと?」

「言わなくても分かるでしょ」

 メイドの偉い方が頬を染めているので、ララもさすがに気づいた。

「王子様とは、何もありませんよ」

「本当?」

「夜中にチェスに誘われたことはありますけど、王子様は優しい方ですから、何もないですよ」

 メイドの偉い方も、ララの言い方を見たら、何もない事は、一目瞭然だと思ったのか、あきらめて。

「もういいわ、仕事に戻りなさい」

「はい」

「ララ・メローよ」

 ウワサをする人物も数人いるが、気にしないことにした。

 洗濯物を洗っていたら、体が冷える。

「寒い」

 まだ、雪は降っていないが、寒い季節なのである。

 洗濯物を洗い終えて、暖炉を探した。メイド寮の暖炉は、人が集まっていて当たることが出来ない。

(どうしよう)

 そこで、一つ、キャイルの部屋に暖炉があることを思い出した。

(王子の所へ行こう)


◆ ◆ ◆


「王子様、暖炉に当たらせて下さい」

「うん? どうした?」

「外は、寒いですよ」

 そう言って、暖炉に当たると。

「どれ?」

 キャイルが手を握って来た。

「こんなに冷えちゃって、女の子が体冷やしちゃだめだよ」

 キャイルはそう言って、暖炉の前に座った。

「メイドは、みんな冷えていますよ、仕方ない事だと思うわね」

 ララも開き直ってそう言う。

 手を握っていたキャイルは、顔をララの手に近づける。そして、唇が、ララの手に触れた。

「な、何するんですか」

「ご、ごめん」

 お互い赤くなっていたと思った。少し黙って。

「君が、急に心配になってしまってね」

 キャイルは優しくそう言う。

「私の事は、私で出来ます。余計な心配しないでください」

「ふ~ん、冷えているのは手だけじゃないだろ」

 そう言って、抱き寄せられる。

「あ、あの~」

「こんなに冷えちゃって、増々心配じゃないか」

「……」

「ララは、ガマンし過ぎだよ、こんなに冷えるまで仕事するなんて、王子付きのメイドにそんな思いさせたいと思う?」

「……」

 黙って聞いていた。

「あまり心配をかけないでくれよ」

「でも、ですね、洗濯は、やはり自分でしないと、ダメですよ」

「そうか、ほどほどにね」

 キャイルは抱き寄せたまま耳元でそう言う。

(こんなの、ドキドキしない方が変よ)

 ララはパニックになっていた。

「もう、温まりましたから、離してください」

「そう、温まったか」

 名残惜しそうに手を離す、キャイルに、また、ドキドキする。

(ネコミミ、ネコミミ)

 唯一嫌いなネコミミをみつめる。

(よし、元通り)

「また、おいで」

「は、はい」

 そう返事して、部屋を出て行った。

(別な意味で熱が上がったわ)

 はーはーと貯めていた息を吐く。

(王子も王子よ、ただのメイドに、こんなことしていいわけないのに、あれじゃあまるで、カップルだわ)

 一人で、そう考えて頬が熱くなる。


◆ ◆ ◆


 そして、午後三時、そろそろ、うさぎ小屋へ向かおうと思い、昼の料理で出た残りの野菜をもらっていく。

「これ、もらっていい?」

「いいですよ、何に使うの?」

「花壇の肥料にします」

「はーい」

 いつも、こうやって、野菜をいただいているのだ。

「今日は、ラビットちゃんの好きなレタスがあるわ~」

 鼻歌を歌いながら、裏庭へ向かうと。

「おう、来たか」

 キャイルが来た。

「王子様、出歩いて、大丈夫なんですか?」

「ちゃんと、帽子かぶって来たよ」

「そうですか、ラビットちゃん、ラビットちゃん、おいしいレタスが入りまちたよ~出ておいで~」

 そう言って、ララがラビットに近づくと。

「ふふふ」

 キャイルは笑う。

「また、バカにしている」

「君が、かわいいのがいけないんだよ、ついつい、笑いたくなってしまうだろ」

「?」

(何で、かわいいと笑うの? やっぱりバカにしているのよ!)

 少しすねた様子で、キャイルを見つめると、優しい顔で微笑んでいた。

「どうしたの? ラビットが戸惑っているよ」

 レタスの位置が高すぎて、ラビットの口に運べないのか、ラビットは拗ねてしまっている。

「ごめんね~ラビットちゃん、お預けじゃなくて、間違えたのよ、機嫌直してちょうだいよ~」

 ねこなで声でララがそう言う。

 キャイルには、つぼなのか、笑いをこらえている。

「む~」

 ララは、少し不満だった。うさぎを前にして、こんなにデレない人がいるのだろうか? ララの常識では、うさぎは最高にかわいい物だが、キャイルは違うようなので、なんだか嫌なのである。

「王子様は、うさぎをどう思いますか?」

「かわいいんじゃない」

「私みたいに、何よりもうさぎが大事だって言うのは、変なのでしょうか?」

「うん、変だよ」

 キャイルは迷わずそう言った。

「普通、人間は、別な人間を大事にしている者が多い、君みたいにうさぎが一番大事だと答えるのは、少数意見だろうね」

「そうですか」

(やっぱり、私が変なんだ。恥ずかしい)

「でも、そう言うのも、面白いだろ」

 キャイルは満面の笑顔でそう言う。

「やっぱり、バカにしてらっしゃいますね!」

「……いいや、してないよ、ふふふ」

「やっぱり、王子様は、私をバカにして、変な子だと思って、笑ってらっしゃったのですね!」

「いやー君が、面白いから、笑顔になってしまった」

 ララは、複雑な気持ちで拗ねた顔をした。

「まあまあ、君のそんな姿を見れるのが、俺だけって言うのが、うれしいのもあったんだよ」

「前から思っていたんですけど、王子様って天然でそう言う事言ったり、したりしているんですか?」

「何の事?」

「その女性を口説くようなしゃべり方や行動です」

「口説く? ごめんね、良くわからないや、俺は、生きたいように生きて、言いたいことを言うように育てられてきたから」

「……やっぱり天然!」

「えっ?」

「王子様、気を付けてくださいね、絶対、何人かの姫は、その天然に引っ掛かっていますよ」

「え~? そうかな?」

(そうよ、あんなこといわれたり、されたら、好きに成らない方が、少数派のはずなのよ!)

 ララは心の中でそう思う。

「ララは知らないんだな、俺が、人を傷つけることもあるって事」

「えっ?」

(『生きたいように生きて、言いたいことを言うように育てられてきた』と言うことは、嫌いな相手には、すごいひどい言葉を浴びせてるのかも)

 ララはキャイルをみて、少し引いた。

(でも、そう言うと、したいことして……暖炉の前で抱きしめたりするのとか、したかったのかな? でも、それって……)

「王子様って、実は女たらしですか?」

「どうだろう? 時々、言い寄られたりするけど、王子だから」

「その人とも、抱き合ったりするんですか?」

「人による」

「……」

(きっと、他の人にもやっているんだな、やっぱり女ったらしなところが天然であるのね)

「何?」

「王子様、あまり、気のあるふりはしない方が良いですよ」

「?」

 キャイルは?マークを飛ばしている。

(わかっていない、本当に天然なんだわ)

「ララ、バニラがにんじん欲しいって」

「あっ、バニラちゃん、ごめんね、よしよし」

 バニラに、にんじんを食べさせていると。

「そろそろ、戻るね、楽しかったよ」

「あっ、王子様! 私も後で行きますね」

「うん」

 キャイルがいなくなった所で、ララは。

「ラビットちゃん、王子様は、私の事なんだと思っているのでしょうか?」

 レタスをかじらせる。

「きっと、遊びであんなことして、私を試しているのよ、あの男は、たぬきなのよ、きっと」

 大声でそう言った後。

「で、でもね、本当に天然でやっていたら、王子様がかわいそうよね~? う~ん、わかんない」

 バニラににんじんを食べさせる。

「バニラちゃん、もやもやするのは、気のせいよね」

 バニラは、にんじんをおいしそうに食べている。

「その鼻の動きがたまらないわ、なんで、うさぎって、こんなにヒクヒクしているのだろうか? かわいいわ」

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