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ネコミミ王子と嘘つきメイド  作者: 花言葉
嘘つきな落ちこぼれメイド
8/23

6

 ララは、朝食を取りに行っていた。

(今日は、失敗しないぞ!)

 気合を入れて列に並ぶ、ところが、足を踏まれてしまう。

「きゃっ!」

「また、あのメイドよ、ララ・メローだわ」

 誰かが笑いながら、そう言っていなくなった。足を踏んだのは、わざとだろうと思い振り向いてにらみ付けると。

「ごめんなさい~」

 と謝って来た。たぶん、ララと同じ位ドジな女の子なのだろうと思って、許してあげることにした。

 今日は、少々のハプニングはあったが、うまく料理を受け取ることが出来て、キャイルの所まで、うまく持って行くことが出来た。

「王子様、朝食お待ちしました」

「ごくろう、おっ、魚だ! うまそう、いただくよ」

「はい」

 キャイルとララはしばらく談笑し合い、その後、ララは、洗濯をしに行った。

「お前もやればできるのね」

 今日ぶつかって来た女の子を二人のメイドが脅している。

「次は、何してもらおうかな」

「ララ・メロー、鼻につくものね」

 二人のメイドが高笑いする中、どんどん小さくなっていく、ぶつかってきた女の子。

(かわいそう)

「ちょっと、そこのメイド、私には、何したっていいけれど、他人を巻きこんでまで、いじめなんかして恥ずかしくないの?」

「はっ? あなたこそ、王子に取り入って恥ずかしくないの?」

「だから、取り入ってなんかいないわ」

「ウソしか言わないのね、うわさ通り」

 二人のメイドは意地悪く笑う。

「そこ、何しているの? 早く洗濯しなさい」

 上の階級のメイドに怒られる。

「ララ・メローがさぼっていたので、叱っていたのです」

「ララ・メロー本当なの?」

「いいえ」

「あなたは、ウソばかりつくから正直、信頼はできないけど、話を聞いていたら、ただのいじめにしか聞こえなかったからね~」

 上の階級のメイドが、そう言って、二人のメイドを怒りだした。

 ララは、二人から離れて、自分の持ち場で洗濯を終えて、キャイルの元へ向かった。

「王子様、来ましたよ」

「おう、ララじゃん」

 キャイルは仕事をしていた。

「サグナから聞いたのだが、メイド達の中で、いじめが起こっているらしいな、大丈夫か?」

「ああ……えっと……」

「どうせ、巻き込まれているのだろう」

「! なぜ、わかるのです」

「君位しか、いじめの標的になりそうなメイドがいないからかな?」

「……」

 ララは少し考えた。

(王子にはウソつけないわね)

 何もかも見透かされてそうで、何も隠し事が出来ない。

「ララ、もし、辛いのなら、メイド達と会わないようにもできるけど……それは、メイドを辞めることになるからな」

「メイドを辞めても、私は、行くところが無いのですよ、絶対にやめませんよ」

「そう言うと思った。離れの王宮で、侍女をやるのはどう?」

「王子様、侍女は身分の高い方の仕事です」

「そうだね、だめだよね~」

「……」

 ララは、下を向いて考えた。

(私は、後宮に入れる身分じゃ無い物)

 例えキャイルが、自分を好きに成ってくれたとしても、二人で幸せになることは出来ない事を知っているから、余計さみしくなる。

「どうした、ララ」

「いえ、何でもないです」

 笑顔を作った。

「もしもですよ、もしも、私の父が暗殺者だったらどうしますか?」

「どうもしないよ、君のことじゃない物」

「!」

「それで、今のもウソ? そんなわけない物ね」

「はい」

 ララは笑顔で返事した。

「あの、メイド長にいじめの件で呼ばれると思うので、先に行っておきますね」

「いってらっしゃい」

 ララは、部屋を出て行った。

「メイド長」

「ララさんですね、あなたをいじめた犯人は、捜すのが困難な様よ、書類をばら撒いた方は、まだ、見つからないもの、でも、今日のいじめの犯人は、しっかりしぼっておいたから」

「ありがとうございます」

「ララさん、私も出来る限りの事はします。でも、たぶん、いじめは絶えないでしょう、だから、がんばってくださいね」

「はい」

 あの厳しいメイド長が応援している事を知って、うれしくなって、元気よく返事してしまった。

「ララさんは、根性だけはあるようですね、王子もそこを買ったのでしょうね」

 メイド長は、笑いながら続けて。

「でも、なぜあなたが急に王子付きのメイドになったのか、真の理由は全く分からないけどね」

(まさか、ネコミミ隠しとも言えない)

 そう思って、軽く笑った。


◆ ◆ ◆


 その夜、ララはキャイルの部屋で寝ていた。

「王子様、おやすみなさい」

「おやすみ」

 ララはすぐ眠ってしまった。キャイルもすぐに眠りについた。

 そして、朝になった。

「今日は、起こさないわ」

 そう言って、メイド服を着る。

「ララ、おはよう」

 キャイルは、ゆっくり起きて来た。

「ララ、今日も早いね、そういえば、ララって、時々いなくなるって聞くけど、どこ行っているの?」

「……ヒミツです」

「そのヒミツ、俺だけに教えてくれない?」

「嫌です」

 ララは、キャイルも突っぱねた。

「今から、ちょっと用事があるので、行かせてもらいます」

「? いってらっしゃい」

 ララは鼻歌を歌いながら、裏庭に向かった。

「やあ、ララ」

 裏庭には、キャイルがいた。

「急にいなくなると聞いて、ここだと思ってね、急にいなくなっても、すぐに戻ってこれて、誰も行かない場所は、裏庭だけだと思ったんだ」

「王子様には、バレバレでしたか……」

「何をしているかも当てててほしい?」

「いえ、見せますよ」

 そう言って、裏庭の奥に入って行く。

「こんな奥にいるのか?」

 ララの手元をちらっと見て、キャイルがそう言う。

「見てください、かわいいでしょう」

 そこにいたのは、うさぎだった。

「君が、パセリとにんじんを持っている時点で気付いていたよ、うさぎを飼っている事をね」

「そうですか」

「名前は、何ていうの?」

「ラビットとバニラ」

「そのままだね」

 キャイルがラビットの方を持ち上げると、ラビットは全く抵抗せず、大人しく触られている。

「こっちの子の名前は、何ていうの?」

「ラビットよ、かわいいでしょ」

「うん、かわいい」

 キャイルは微笑んだ。その笑顔に少しドキッとした。

(気のせいよ、気のせい)

 ララは心に言い聞かせた。

「これで、二人だけの秘密が出来ちゃったね」

「えっ? あっ、そうですね」

「また、ここに来てもいいかな? 君のうさぎに会いたいと思ってね、何て言ったってかわいいから」

「はい、いいですよ、うさぎはさみしいと死ぬらしいですから、にぎやかな方が良いと思います」

「そうだね」

 キャイルは優しい顔をしている。

「あの~ありがとう」

「何が?」

「内緒にしてくれるのでしょう、メイド寮はペット禁止って言われているのですから」

「う~ん、俺が思うに、俺は君を利用しているんだ。だから、君の秘密を守るのは、当たり前なんだ」

「そ、そうよね」

 キャイルが自分を利用している事をララは思い出した。

(ちょっと、心を許しすぎたかな?)

 キャイルを見ると、うさぎにエサをやっている。

「おいしそうに食べるな」

「さあ、バニラちゃん、ラビットちゃん、ご飯でしゅよ」

「ふふふ」

 キャイルが笑い出しそうになってふるえている。

「!」

「君、うさぎには、そんなしゃべりかたをするんだね、かわいくていいじゃないか、ははは」

「完全にバカにしていますよね~」

「そんなことないよ」

 キャイルは、笑いが止まらないようだ。

「もう! やっぱり、バカにしているわ!」

「ごめん、ごめん、あまりにもかわいいから、いつもの君じゃないみたいで、笑いが止まらなくなってしまった」

「か、かわいい」

 少し恥ずかしくなってきた。

「顔、真っ赤だよ」

「……」

 何も言えなかった。

「とりあえず、ここに来たら、君に会えるってことでいいかな?」

「は、はい、でも、部屋に呼びつけて下されば、いつだって王子様のところに行きますけど?」

「そう言うのじゃなくて、会えるか、会えないかのドキドキを味わいたいのだよ、わかるかい?」

「? よくわかりかねます」

「男のロマンだよ」

「……どうなんでしょうか? 私は女ですからわかりませんが……」

 ララは少し引いてそう言った。

「女には、わかってもらえなくても良いよ」

「そうですか」

 ララが時計を見ると、もう一〇時を指していた。

「いっけなーい、仕事があったのよね、今からでは、メイドの先輩達に怒られてしまうわね」

「ちょっと、その時計、どこかで見たことあるな?」

 茶色のベルトに、文字盤の文字が歪んでいる模様の時計をキャイルに見せる。

「父の形見ですけど」

「そうか」

 キャイルは声を落としてそう言った。

(何かあったのかしら?)

 ララは不思議に思う事しか出来なかった。

「仕事、遅れるよ」

「は、はい!」

 ララは、走ってメイドの仕事場へ向かった。

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