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ネコミミ王子と嘘つきメイド  作者: 花言葉
嘘つきな落ちこぼれメイド
7/23

5

 その夜、王子の部屋にいた。

「おやすみ」

「おやすみ」

メイド長が「男がそんな約束を守ると思ったら大間違いよ」と言った事を思い出して、少し警戒する。

(王子が、私なんかに手を出すわけがないわよ)

 心の中で、そう思うが眠れない。

 トントンと足音がして、キャイルが近づいてくる。

(やっぱり来た)

「眠れないのか? ララ」

 そう優しい顔で訊いて来た。

「はい」

 流されるように返事した。

「じゃあ、チェスやろう」

「はっ?」

「チェスは嫌いだったか? おもしろいんだけどな~、やり方がわからないのなら教えてやるよ」

 この人は、本気でチェスをやる気だとわかった。

(心配して損した)

「君が眠れないと、心配で、俺も眠れないんだ。だから、気負いせず寝てくれていいんだよ」

 キャイルは、遠慮して寝ていないのだと思っているようだ。

(どこまで、色恋に疎いの)

 もう笑うしかなかった。

「ありがとう、王子様、眠れそうです」

「そうか、それならよかった」

 キャイルはベッドから離れて、自分のベッドに戻った。ララは安心して眠りに着くことが出来た。

「いつまで、これを演じなければいけないんだ」

 小さな声で、そう聞こえたが、夢だろうと思い忘れた。


◆ ◆ ◆


 朝の光が差してくる。

「朝か~王子を起こそう」

 キャイルのベッドに向かうと、王子は気持ちよさそうに眠っていた。

「王子様、王子様」

「う~ん、こっちにおいで」

 そう言って、ララをベッドに引きずり込む。

「キャー、王子、王子~!」

 平手打ちの良い音がした。

「う~、起こしてくれたのか、ありがとう」

「すみません、顔叩いたりして……」

「いいんだよ」

 キャイルは、微笑んだ。少しドキッとした。

「王子様、あなたの身分では、していい悪ふざけと、してはいけない悪ふざけがあるのですよ」

「悪ふざけ? ああ、今、妹とララを間違えたことか?」

「えっ、ふざけてやったんじゃないの?」

「ああ」

「そうでしたか」

 怒るのもばかばかしくなって、メイド服に着替えるため、自分のベッドのカーテンを閉めた。

「では、仕事に行ってきます」

「ご苦労様」

 キャイルは笑ってそう言った。


◆ ◆ ◆


 キャイルの部屋には、サグナが来ていた。

「タヌキですね」

「何が?」

「ララ・メローを気に入っているのでしょう、キャイル様は寝起きが悪い方ではないですから、彼女を試したのでしょう」

「見ていたのか……と言うか、なぜわかった」

「長年、一緒にいればわかります」

 サグナはため息をついた。

「ちょっと、ララが、かわいく見えてしまって、普通に手を出したら、妙なウワサを流されかねない、それは、ララにとっても良い事じゃない、だから、ちょっと試させてもらったんだよ」

「キャイル様のそう言うところは、好きじゃないですね」

「王子と言う立場をわきまえた行動だったはず」

「もういいです。話せば話すほど、ばかばかしく見えてきます」

「そうか、それで、魔女の方はどうなった」

「そう簡単には、見つかりませんよ、キャイル様はネコ化進んでいませんか? もし進んでいたら教えて下さい」

「進んではいない」

 キャイルはそう断言した。

「そうですか、それならいいのですか」

 そこに、王妃が現れた。

「キャイル、最近部屋にこもっているようだけど、そんなに傷がひどいの?」

「え~と、そうだな~サグナ……」

「はい、ひどい状態です。激しい運動などは、まだ出来ないかと……、出来れば、安静にしていた方が良いでしょう」

 王妃は、顔を曇らせた。

「まさか、そんなにひどいなんて……痛かったでしょう?」

 王妃が近づいてくる。

「あっ、母上、傷には触れてはいけませんよ」

「はい」

 そう言って、キャイルを抱きしめた。

 王妃は満足したのか、部屋を出て行った。

「サグナ、本当に、これで乗り切れるのかな? 魔女だって見つからないしさ、永遠にこうならいっそ、言ってしまった方が楽なのではないか?」

「そうですね、いつかは、言わないといけないかもしれませんね」

「そうだよな~」

 キャイルはため息をついた。

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