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ネコミミ王子と嘘つきメイド  作者: 花言葉
嘘つきな落ちこぼれメイド
6/23

4

 その頃ララは、メイド達の統率のとれた動きに驚いていた。

(人事異動したばかりなのに、みんな揃っている)

 ナイフとフォークを並べる手の動き、料理を受け取る時の列、まるで、訓練されている人達の様だ。

 ララは、落ちこぼれだったので、滅多に、料理を取りに来たことが無かったので、とても驚いた。

「ララ、何しているの? あの動きに合わせられないと、料理はとれないわよ」

「ええ~」

 ララには、みんなの様にうまく動くことが出来ない。

「ララ、王子付きのメイドだからって、甘くしてもらえるわけじゃないのよ」

 先輩のメイドがそう声をかけてくる。

(でも、やらなくちゃ)

 意を決して、列に並んだ。何とか、ナイフとフォークを取ることは出来たのだが、次は、最難関の料理だ。

(怖い……)

 しかし、恐怖と戦いながら、皿を受け取ろうとしたのだが、ガッシャーンと音がして、皿が床に落ちた。

「あっ……」

「何やっているの、次の人が困るでしょう」

「は、はい」

「とりあえずあなたは、料理をもらって行きなさい、怒られるのは、後よ、メイド長にしっかり叱ってもらいます」

「はーい」

 嫌々返事して、王子の元へ料理を運んでいった。

「お待たせしました~」

「おお、やつれたな」

「王子様、私、ちゃんとやって行く自信が無くなりました。メイド長に早速怒られることになってしまいました」

「君の覚悟は、そんな物だったの? 髪の毛を少し短くしたのを見た時は、覚悟したのだと思ったのだけど?」

「あっ、これは、オシャレです」

「そう、かわいいね」

「か、かわいい!」

 ララは、急に恥ずかしくなった。

「照れているのか?」

「それは、男の人に褒められたことが無いですから、照れるに決まっています。でも、さすが王子ですね、女の人に「かわいい」って言うのも、全く、ためらわないで言えるんですから」

「かわいい物に、かわいいっていう時、君はためらうのかい?」

「えっ?」

「よく女性は、かわいいと言う言葉を使うだろ」

「それとこれとでは、違います」

 照れた気持ちのまま、ララは拗ねる。

「あれ? 何か気に障ったようだね、ごめん、こちらも女の子の扱いには慣れていないものだから」

 キャイルが微笑む。

「ずるいです」

 ララは小声でそう言った。

「何か言ったかい?」

「何も、やっぱり、ネコミミが気にくわないな~と思っていたのです」

「俺も好きでネコミミになっているわけではないから、許してくれないか?」

「そうですね、考えてみます」

 キャイルとララが談笑していると、サグナが咳払いする。

「キャイル様、仕事をしましょう」

「そうだな」

「いっけなーい、メイド長が怒っているんだった。う~、嫌だけど、しっかり、怒られてきますね」

 ララはそう言って部屋を出て行った。ララの向かった先は、メイド長室。

(キャイル様に惚れそうになるなんて、そんなことないはずよ……)

 メイド長室に着くと、メイド長は、部屋で静かに座っていた。

「待っていましたよ」

「は、はい」

 メイド長は、とても、どっしりと構えている上に、気迫のあるメガネをかけていて、少し怖く見える。

「あなたは、王子付きメイドと言う栄誉を受けながら、皿一つ受け取れないのですか? 同じ部屋だと聞きました。これから、びしびし指導させていただきますよ」

「はい」

 頭をひたすら下げて、小さくなっていく。

「それにしても、王子は、何でこんな子を指名したのかしら?」

「さあ?」

「あなたは、ある意味でシンデレラガールなのですから、他のメイドにも目を付けられているのですよ。それなのに、失敗をするなんて、陰で笑われていたって、なにも文句は言えないのですよ」

「はい」

 こういう時は、文句をつけず、聞き流しておけばいつかは終わる、少しだけそう言う事を考えていた。

「それにですね、あなたは、ウソばかりついているらしいじゃないですか? そんな信頼のおけない人物が、王子付きになった途端に認められるとでも思っているんですか?」

「そんなこと思ってもいません、ウソだって……」

「ウソだって?」

「たまにつく位、いいじゃないですか?」

「あなたは、たまにじゃないでしょ」

「……」

 その後もメイド長の小言は続き、ぐったりして部屋に向かった。

 メイド長は仕事中、一人で部屋にいた。

(リサと同室の時は、楽しかったな~)

 そう思い出していた。

 新しい部屋は、とてもさみしい。なんだか悲しくなって来る。

(ううっ、泣きそう)

 引き受けなければよかったかな?

 そう考えていたら、王子の顔を思い出してしまい。

(優しそうな人だった。ネコじゃなければ、好きに成っていたかも……いやいや、せっかく、期待してくれている人がいるんだからがんばらなくちゃ!)

 枕を抱いてそう思う。


◆ ◆ ◆


「ララ、ララさん、ララさん」

(はっ、いつの間にか眠っていた)

 メイド長が怒って立っている。

「初日から昼寝何ていい度胸ですね、そんなに仕事をためたいのなら、私が倍にして差し上げますよ」

「い、いえ、ただ……」

「それは、もういいから、王子がお呼びよ」

「はい」

 急いで、メイド服を整えて、走り出した。

「お呼びって、何のことでしょうか?」

「丁度よかった。サグナが出かけているので、書類を運ぶのを手伝ってくれないか? たまってしまっていて……」

「お安いご用です」

 行っている側から、次々とハンコを押す、キャイルに感心していた。

(やっぱり、ちゃんと働いているんだ)

 時々、紙を横の箱にいれる。

「あっ、これは、不採用の紙」

(一枚一枚、しっかり目を通しているんだ。あのスピードで、なんだかすごいわ!)

「慣れると、そんなに大変じゃないよ。この書類を父上に届けてくれ」

「はい」

 王の元へ書類を持って長い廊下を走る。

(急がなくちゃ)

「ちょっと、そこのララ・メローさん」

 茶髪をポニーテールにしている、メイドの女の人が、とても怖い声でそう言った。

「何の様でしょうか?」

「「何の様でしょうか?」ですって、あなたに用事の無いメイド何て、いるのかしらね?」

「どう言う事ですか?」

「どんな手を使って王子に取り入ったの?」

「何もしていません」

「それもウソなんでしょう?」

 ララはメイドの女に髪の毛をつかまれた。

「いった~、何するの」

「あんたなんて、王子付きのメイドにふさわしくないのよ、わかるでしょう、この前、皿を割った姿を見た時、この子、出来ない子なんだって、すぐにわかったわよ」

 ララも、実際自分は落ちこぼれなので、何も言えないと思い、困っていた。

「王子に仕事をもらったんだ、書類運びなんてさせられて、まともな仕事をもらえないのでしょう?」

 ララはついに切れた。

「書類運びだって立派な仕事だし、王子様は、私を大切にしてくれています」

「あらやだ、王子は誰にでも優しいのよ」

 そう、メイドの女が言って、突き飛ばされた。書類が宙を舞う。

「キャー拾わなくちゃ」

「ああ、いい気味、せいぜいがんばって拾ってね」

 メイドの女がいなくなった。

(こんな目にあうなんて……)

 せっせっと書類を拾う。


◆ ◆ ◆


 そして、一時間後。

「まだ、集め終らない」

 そこに、サグナが通った。

「何をしているのですか? それは、私のする仕事です。あなたはしなくてもいいのですよ」

「こけて、ばらまいちゃって」

「そうか」

 サグナは、一言そう言って、拾うのを手伝ってくれた。

(ううっ、味方がいるのってうれしいよ)

 無事、王に書類を届けた。すぐにキャイルの所へ向かった。

「王子様、無事届けてきました」

「ご苦労、髪が乱れているね」

「走ったからだと思います」

「それにしては、引っ張ったような乱れ方だね、どこかで髪の毛を引っかけたんじゃないかい?」

「それが……そうなんです」

(王子に心配かけてはだめよ)

「君は、そそっかしいな、それで、誰にやられた」

「えっ?」

「俺にだって、君が、髪を引っかけたのではなく、引っ張られた事位わかるに決まっているだろう?」

「知らないメイドだったんです」

「上の方の奴か」

「なぜ、わかるのです?」

「君は、下っ端のメイドとは、長年一緒にいるから、見間違えるはずはない、新人は、入っていない、そうなると、上の方の奴だろ」

「なるほど」

「寮も危ないかもしれないな」

 キャイルが指を頭の横に置いてそう言う。

「よし、決めた、ララ、君は犯人が見つかるまで、俺の部屋に泊まりなさい」

「ええ~」

「安心しろ、ベッドは二つある、着替えも出来るようにカーテン付きだ」

「……それなら、安心ですね」

「メイド長にこのことを伝えに行ってくれないか、俺は、ネコミミだから、行くに行けないからな」

「はい」

 ララは、返事して、メイド長のいる部屋へ向かった。

「メイド長!」

「何です? ララさん」

「ちょっと、聞いて欲しい事があるんです」

 かしこまった様子でそう言った。

「何かしら?」

「今日、メイドの誰かに、髪を引っ張られて、書類をばら撒かれたんです」

「何? そんなことをするメイドがいたの? そう言うメイドは、即刻辞めさせなければいけないわね」

「それで、王子様が、寮も危ないから、俺の部屋に泊まれと言うのです」

「はっ?」

 メイド長はポカンとしている。

「あなたは、愛妾にでもなりたいの?」

「い、いいえ、ベッドも別ですし、絶対に手を出さないと、王子様は約束してくださりましたし……」

「男がそんな約束を守ると思ったら大間違いよ、王子は、間違いなくあなたを愛妾にしたいのよ」

「まさか、そんなわけないですよ、用件は伝えました。今日から王子の部屋に泊まらせていただきます」

「ララさん」

 メイド長はため息をついた。

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