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ララ・メローその人物の称号は、虚言癖のあるメイドだ。金髪に茶色い目、長い髪の毛を一つに束ねている。一見普通そうな彼女だが、実態は落ちこぼれである。
「ララ、掃除も出来ないで、メイド何て良くやってられるわね」
「だって、私、貴族だったから、出来ないんだもん」
「また、ウソついている、メロー何て貴族ないでしょ」
「没落貴族なの」
「没落でも、聞いたことないわよ」
掃除をしながら、同僚と言い合っている。
「また、ララのウソ」
「聞き飽きた~」
「この前なんて、暗殺者の娘とか言っていたけど、あんたみたいにトロい子が暗殺者の娘なんて、とても思えないわ」
「こういうのって、くせになるんでしょう? あっ、ララはもうくせになっているか~」
三人の仲間にいじられていると、サグナが来た。
「サグナ様」
「ララ・メローに用事がある」
「えっ、ララに?」
そのまま、サグナがララの腕を引いて行く、ララは無抵抗に連れて行かれる。
「サグナ様、サグナ様」
「何だ?」
「私に何の御用ですか?」
「君には、王子付きのメイドになってもらう」
「……なんで、私なんですか? 私みたいな落ちこぼれより、良いメイドがいっぱいいるじゃないですか」
「落ちこぼれじゃないとだめなんだ」
「?」
その後は、黙ってついて行った。
(何で、私なの~)
そして、王子の前まで連れて行かれた。王子は帽子をかぶっていて、部屋着なのか、ラフな黒いチュニックを着ていた。
◆ ◆ ◆
「よく来てくれた」
キャイルは、明るくララを迎えてくれた。
「ララ・メローです。よろしくお願いします」
「よろしく」
「ところで、一つ相談なんだけど、聞いてくれる?」
「は、はい」
「この頭なんだけど……」
そう言って、キャイルは帽子を外した。
「ネコミミが生えている……もしかして、王子様って、そう言う趣味があったりするんですか?」
少し引いてララはそう言う。
「いいや、そんな趣味はない、見る? 動くから」
そう言って、キャイルは耳を動かした。
「キャー、生きているみたい」
まだ、信じられないララは、最後に失礼を承知で触ることにした。
「うそ、抜けない、と言う事は、王子様はネコ族の方だったのですね、でも、前に見た時は耳何てなかったですよね」
「魔女と戦って、こんな風にされてしまったんだ」
「! 魔女なんて、本当にいたんだ。すごい!」
「感心している場合じゃないんだ、俺は、これがばれたら、城から追い出されるかもしれないんだ」
「大変ですね」
ララの言い方は、他人行儀である。
「そこで、本当のことを言っても、誰も信じない人が必要だったんだ。そんなとき、丁度君を見つけたんだよ」
「それって、嫌味ですか? 私だって、仕えるのなら、ネコよりうさぎの方が、かわいいからいいわ」
「君は、うさぎが好きなのか?」
「はい」
ララは迷わずそう返事した。
「それでも、一生下っ端メイドをやっても稼げない金を出すと言ったら、引き受けてくれるか?」
「その額にもよりますね」
「一億でどうだ」
「一億! 確かに稼げない額ね、引き受けた!」
ララの瞳はらんらんと輝いた。
「君の家は?」
「私の家は、没落貴族で、前はお金持ちだったのよ、でも、お金が無くなった途端に孤児院に捨てられてしまったわ」
「それは、かわいそうに」
「それって、ウソですよね」
サグナが口を挟んだ。
「私の知っている限り、没落貴族、現貴族の中に、メロー家など存在しないと認識しております」
「いいですよ、どうせウソですよ」
ララは拗ねてそう言った。
「このように、ウソばかりついているので、誰も、ララ様の話を信じないのですよ」
「……」
ララは何も言えなかった。
「そうなると、一番安心して、メイドを頼める。これからよろしくな」
「よろしくお願いします、お金」
そう言って、握手した。
「まったく、礼儀がなって無いメイドですね、やっぱり、降ろした方が良いのではないでしょうか?」
サグナがそう言う。
「まあ、いいじゃないか」
「それで、私は、今からどうしたら良いの?」
ララが、そうキャイルに訊くと。
「お母様に「傷が痛むので食事を部屋で取りたいと言っていた」と言伝を頼まれてくれないか?」
「は、はい」
ララは駆け出して行った。
「キャイル様、本当にあのようなメイドでよろしいのですか?」
「よろしいじゃないか、明るくていい子じゃないか」
「そうですか?」
サグナの顔が引きつっている。
「大丈夫だ。心配するな」