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ネコミミ王子と嘘つきメイド  作者: 花言葉
ララの秘密
20/23

6

 次の日、うさぎ小屋へ向かうと、案の定、王子がいた。

「ラ~ラ!」

「何ですか?」

「ララに会いに来たんだよ、君、昨晩俺が、どれだけ君の事を考えていたか、わかってないだろ」

「わかんないです、私は、ぐっすり寝てましたから」

 後ろを向いた途端。

「ララ、ギュッとしていい」

「……はい」

 後ろから、優しく抱きしめられる。

「ララの香水って甘い匂いがする」

「ベリーとフラワーの香りを使っているんです。その日の気分で」

「そうなの、ずっとこうしていたいな」

「……」

 キャイルに抱きしめられているのを二羽のうさぎに見られている。

(少し、恥ずかしいかも)

「王子、いくらなんでも、ずっとはダメですよ」

「そんな~つれないな~」

 手を離してくれた。

「ラビットちゃん、バニラちゃん、今日は、パセリとにんじんでちゅよ~、おいしいでちゅよ~」

 二羽にエサをあげているララ。

「俺もうさぎだったらよかったのかな?」

「王子はうさぎみたいなものですよ」

 ララが笑ってそう言う。

「? それって、どういう意味なの?」

「内緒です。女の子には秘密も必要なの」


◆ ◆ ◆


 鼻歌を歌いながら、掃除に向かった。

「ララ、良いことあったの?」

 リサに訊かれたので。

「ちょっとね」

 と答えると。

「王子絡みでしょう、幸せそうなの顔に出ているぞ、誰かに気付かれるかもしれないわよ、ばれたら、大変でしょう」

「あっ、そうね、顔がゆるんでいたわ」

 顔を叩く。

「よし、気合入った」

「がんばってね~ララ」

 掃除は、いつも通り終わった。次に洗濯物を干すことにしたが、水に濡れていた、洗濯物は冷たい。

「寒い~」

(王子に心配かけられないのに~)

 そう思って、洗濯ものを干して、メイド寮の暖炉に当たった。

「よっし! 温まった。これで、王子に心配かけないぞ!」

 張り切ってキャイルの元へ行くと。

「王子、何か仕事は?」

「外から帰ってきたと言う事は、今日は、洗濯した?」

「ええ、まあ」

「手を出して」

「はい」

「あっ、温かい!」

 王子はショックを受けたようにそう言った。

「王子、まさか、心配だとか言っておいて、私とイチャイチャしたかっただけなのですね? どうなんですか」

「い、いや~」

 キャイルは慌てている。

「いいじゃないか、君のやわらかい手に触れて、近距離まで近づけるんだ。こんないい事は無いじゃないか」

「王子って、本当は、天然じゃないんでしょ!」

「えっ、言わなかったっけ、したいことして言いたいこと言うって、誰も、天然でやっているなんて一言も言って無いよ」

「たぬきだったのね! すっかりだまされたわ」

「うん、君は、すごくかわいかった」

「ちょっと、怒っていいですか?」

「えっ?」

 その後、二分ほど王子を叱りつけた。

「だから、君が勝手に勘違いしたんでしょ」

「騙されている、私を笑っていたんでしょう」

「違うんだ、君が王子だと思っている間に、君のハートを奪っておかなければと思っていたんだ」

「ううっ……私、その作戦にしっかり引っ掛かっているじゃないですか」

「そうだね」

「全部、王子の思惑通り何てしゃくだわ」

「そうでもないよ、まだ、君の事公の場では言っていない、みんなに君に男がいることを教えないと、気が済まない」

「私が、誰かに言い寄られるって事?」

「うん、君ってかわいいから、心配になるよ」

「余計な心配です」

(結局、王子には、逆らえなかった。最後はいつも、大好きになって終わっちゃうんだから)

 ララは心の中でそう思っていた。

「あら、ララさん」

 王妃が入って来た。

「私に何か仕事をください、王子」

「じゃあ、母上の相手でもしてくれない?」

「え~私が……」

「ララさん、一度ゆっくり話してみたいと思っていたの」

「は、はあ……」

「そんなに気を使わないで、私もあなたの事を気に入っているのよ」

「……」

 王妃は悩んだ後。

「あなたは、どこの出身、お父様とお母様は元気?」

「あっ、私は、孤児院の出なので、父も母も知らないんです。あと、どこで生まれたかも知らないんです」

「そうなの、聞いちゃいけなかったかしら?」

「いいですよ、私には、王族になる権利が無いのは、わかっていますから」

「あら、何も孤児だからってそこまで謙遜しなくてもいいのよ、私の国は、第三代国王の花嫁は、孤児院の出身だって、歴史があるもの」

「そうですね」

「あら、あなた、何か隠していない?」

 王妃の目つきが変わった。

「いいえ」

「私、わかるのよ、あなたがウソをついている事位」

「えっと、えっと」

「話しづらい事なの? 実はキャイルが気にくわないとか?」

「い、いいえ」

 王妃は、半分鋭くて、半分抜けているようだ。

「いいのよ、キャイル強引だから」

「えっ? 強引?」

「キャイルは、何か決めることがあると、大体、相手を無理やり言いくるめちゃうの、王の素質はあるけど、女の子にもあれじゃあ、嫌われちゃうと思って、心配していたの」

「えっ、あの優しいキャイル王子が」

「あらっ、好きな子には優しいの、あの子、わからない子ね」

 王妃は楽しそうに笑う。

「母上、もういいでしょう」

「そうね、また来るわ」

 王妃は手を振っていなくなった。

「王子、あなたって、本当は、どういう人なの?」

「う~ん、欲しい物や、やりたい事は、どんなことをしてでも手に入れたり、する、タイプかな?」

「じゃあ、私に優しくしていたのは、手に入れるため?」

「う~ん、半分そうだけど、半分違うな、君のそばにいると、妙に心が優しくなるんだ。不思議だね」

 キャイルは笑っていた。いつもの優しい笑顔で。

「本当にキャイル様ってたぬき」

「は? 何で?」

「私、明日、一回、お屋敷を見に行こうと思うのですが、休暇をもらえますか?」

「うん、いいよ」

 キャイルは、そう言った後。

「さみしくなるな」

「一日だけですよ」

「う~ん、やっぱり、不許可?」

「だめです。良いって言ったんですから」

「仕方ないな~」

 キャイルは、書類にハンコを押した。

「では、いってまいります」

 ララはうれしそうにそう言って、メイド寮に戻って行った。

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