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城へ着くと、お迎えがいた。
「王子~」
「ただいま、帰りました。父上、母上」
「帽子を取ったら?」
「それが、魔女との戦いで傷を負ってしまい、包帯を巻いているので、見苦しいかと思いまして……」
「それなら、仕方ないわね」
王妃も納得してくれた。
「サグナ、何とか大丈夫だった」
「キャイル様、しばらくは、傷隠しで何とか乗り切ってください」
「はい」
その日の夕方、王妃が訪ねてきた。ほわほわした、優しい雰囲気をかもし出して近づいてくる。
「傷、大丈夫? 手当てしてあげるから、帽子を取って、包帯を見せて」
「ええ~」
「何? どうしたの?」
「あの、そうだ! サグナにやってもらっているから、サグナは医者の免許も持っているだろ、それに、素人が触って、ばい菌が入ったら大変だからね」
「そう、サグナがやってくれているのね……」
王妃も納得したのか、手を置いた。
「魔女の討伐何て、さぞ怖かったことでしょう、でも、無事帰って来てくれて、私は、とてもうれしいわ」
王妃は、笑っていた。でも少し泣きそうだった。よっぽど、戦いに行かせたることが、心配だったのだろうと思った。
(ごめんなさい、母上……ネコミミが生えてしまったんです)
心の中では、謝ったが、口にはできなかった。
「キャイル、今日は、キャイルの好きな食べ物を食べましょう」
「はい、いいですね」
「魚と肉では、どちらがいい?」
「魚!」
「? 魚?」
(しまった。もしかして、ネコ化している?)
「珍しいわね、いつも戦いの後は、肉なのに」
「たまには、魚もいいかな? と思って」
「そう、それでは、たまには、魚にしましょう」
母上はそう言って、部屋を出て行った。
「サグナー、俺、ネコ化してない、無性に魚食べたくなるなんて」
「わかりませんが、もしかして、早く呪いを解かないと、最終的には、ネコになる可能性もあると言う事でしょうか?」
「ええ~」
心底驚いたが、魔女にしてみれば、そんなこと簡単な事なのかもしれないと思った。
(ネコになんて、なりたくない、魔女を早く探さなければ)
「ところで、キャイル様には、身の回りの世話を焼いてくれる、メイドがいた方が良いですよね?」
「そうだな」
「どんなに口の堅いメイドだとしても、一〇〇%ばらさないとは言えないですし、丁度いいのがいないものか?」
「そうだな~」
しばらく考えて、信頼のおけるメイドの名前を五名ほど出したのだが、サグナは首を縦に振ってはくれなかった。
(みんな、口が堅いのに……)
かえって何を言っても大丈夫なメイドなんてどうだろう? まさか、そんなのがいるわけがないか。
「ものは、相談なんだけど、いっそ、話しても大丈夫な人っていませんかね?」
「?」
サグナは一回、不思議そうな顔をした。
「ほら、例えば、こいつは信頼できないから、何を言っても信じてやれないって位信頼のないメイドとか」
「逆転の発想ですね、口が堅いではなく、信頼のおけない人物か」
サグナは、感心した様にそう言う。
「いますよ、一人、ララ・メロー、究極の落ちこぼれメイド、ウソばかりついています。この人物が、ばらしても、誰も信じないでしょう」
「そうか、じゃあ、その子に身の回りの世話をさせよう」
「ただ、本当に落ちこぼれですよ」
サグナが釘を刺すようにそう言ってきた。
「でも、今は、その子しか頼れる子がいないじゃないか」
「そうですね、では、呼んできます」
サグナは部屋を出て行った。
(ララ・メローか、一体どんな女の子なんだろう)
探究心からワクワクしていた。