イメージとしては町内会で迷子の犬を探すみたいな
王女からの名を受けて、収穫の人数調整をおこなっていた近衛隊長であるオルティス。昨日作成された報告書をもとにどうやら魔法具内で意味不明の大声が聞こえたとのこと。その内容は
【半裸のおっさん聞こえるかー?】
という男の声だった。仲間内でこの内容について話し合ったが、出てくるのは想像の域を出ない突拍子もないものばかりだった。なのでまずは現場へ向かうとした。
現場で注意をしつつ捜索をすると手がかりが見つかる。どうやら、神からの使いは草を抜きや木の皮を剥いで進んでいた。特出べき事項は約5mの四方に草の根さえも生えていない土の剥き出し地帯が存在していた事である。調査結果、この場所を拠点として活動していようだ。今は、ものけの空となっている。
「オルティス隊長。ここらには見あたりません」
「そうか。この魔法具にいる不審人物がそのまま神からの使いだとなるから、見たことない足跡や人影から徹底的に探すぞ」
「承知いたしました」
その後、三日三晩キャンプをしながら探索を行っていた三日目。進展があった。神の使いが目の前に現れたのだ。
「・・・すみませんここはどこですか?」
この国では珍しい黒髪に黒目、服は異世界で【スーツ】と呼ばれているものを着ていることが後日分かった。
「ここは王国の魔法具内です。あなたはクラウディウス様でしょうか?」
「いや、そんな名前ではないし、様付けをされるほど偉くはないので止めてほしい。ここは魔法具内?外ではないのか?」
「そうです。ここは農業に特化した空間魔法具【ディメンション・スクエア】の内部です。それではあなたの名前は?」
「私の名前は【蔵人 明仁】といいます。フリーのレポライターをやっていた。ここが魔法具内か。そうだったのか・・・」
「すみませんがレポライターとはなんですか?」
「早く言えば、新聞や読み物を発行している所から記事を書くよう頼まれる個人の記者だ」
アキヒトは地球にいた頃は食べ歩きガイドブックの作成や記事を書いて収入を建てていた。
「記者ですか。」
「それではアキヒトさんは我々の女王の元へ案内したいと思いますがよろしいですか?」
「そうですね。あと、この森にある食べ物を勝手に食べてしまったんですか、どれくらいの罪になりますか?」
「それは大丈夫です。あなたは神のお告げがあった神の使いになっていますから無罪ですよ。これからは草や根っこだけではなく、お肉や魚も食べることが出来ますよ。」
「それならばよかったです。でも、草や根っこもおいしかったですよ」
「・・・クラウドさんのいた所に生えていた草は雑草しかなかったはずですが」
「だとしたらモッタイない。商業に乗せて売った方がいいと思いますよ」
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女王様には申し訳ないが、緊急の件で深夜にも関わらず謁見をお願いした。
「俺たちの世界でも王様はいたけど、そういう国じゃなかったし、謁見するなんて普通に生きていれば一度もないから態度とか形式とか全然わからないんだけどいいの?」
堅苦しいのもあれなんでと、女王様への謁見準備の間に大分話し方について慣れてきたようだ。
「神の使いなんですから、誰も文句は言いませんよ。女王でも神と対等に話すことができずに信託のみ聞くことが出来ませんから。」
「あの神ねぇ・・・俺の遭った神は遠回しに言っても変態だったけど同一人物なの?」
「・・・神は姿が見えないとされています。もし見えたとしても我々人間とは感性が違うので姿が変でも仕方がないんじゃないでしょうか。」
「それもそうだな。」
それからしばらくして、女王様が姿を現した。いつもの豪勢な服ではなく簡易の生活着で来られた。
「大変遅くなって申し訳なかった。そちらにおられるのがクラウディウス様ですか?」
「・・・まあ、そうです。」
「歯切れが悪いな。どうなのだ、オルティス?」
「名前は否定していますが、魔法具内にて発見しました。神様にも会っているとのことです。」
「それならいいか。それではクラウディウス様、申し訳ないがこの国のために力を貸してほしい。」
「はあ、わかりました。」
とてつもなくやる気のない声で答えている。不敬罪になりそうである。
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「それで一体何をすればいいんでしょうか?」
「その前にこの巻物を渡そう。この巻物は多世界からの召喚者に与えられる特別な力が書かれている。その力は個人でそれぞれ違うらしい。」
「そうなんですか。」
そう言いつつペリッと巻物を剥がして中を確認する。
「・・・【食べる】能力?」