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竜×侍  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』
第三章

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第七十六話 降臨

前回までのあらすじ!


神扱いされてドラ子がテンパったぞ!

恥じ入れ乙女!

 ラドが怪訝な表情でリリィに尋ねた。


「失礼ですが、人間を主にお選びになられたのですか?」

「けっ、おまえさんだって人間だろうが」


 おれの茶々入れにも、ラドは眉一つ動かさない。


「気を悪くしてしまったなら謝罪しよう。だが、今は……いや、この時代は有事。数少ない古竜様を人の手に委ねる余裕はないのだ」


 おれがリリィに視線を向けると、リリィが首を左右に振った。

 ラドの言葉の意味は、どうやらリリィにもわからないらしい。リリィが眠っていた二〇〇年の間に起こった何かのことらしい。


「あン? わかるように言えよ。おれぁレアルガルドに来てまだ刻もねえ。で、こいつは盟約により二〇〇年の眠りにいた竜だ」

「なるほど。それは失礼した。ならば語らねばなるまい」


 ラドが小さなため息とともに口を開く。

 やつの話を要約すればこういうことだ。


 話は亜人種を含む人類と古竜種、そして魔人族が、たった一体の黑竜“世界喰い”に戦いを挑んで痛みを分けた二〇〇年前まで遡る。

 人類も魔人族も古竜種までもが黑竜によって等しく滅びを迎えようとしていた中、連合を組んだ人類と魔人族、そして古竜種はすべての命運をかけて空へと飛び立った。


 リリィの両親が散った戦いだ。この戦で仕留めるまでには至らなかったものの、黑竜は深傷を負って姿をくらませた。ただし連合軍の生き残りも、おれたちの知るハイエルフのエトワール公を含むわずか七名の英雄と、七体の古竜のみだったという。

 ここまではリリィに聞いた話と合致している。おれたちが知らないのはこの先だ。


 七英雄のうちの一人、後にセレスティを治めることとなる騎竜王イギル・カイシスは、戦いの後も生涯をかけて黑竜の行方を追ったが、レアルガルド各地で黑竜被害があるにもかかわらず、終ぞその影を捉えることはできなかった。

 イギルは己の寿命を迎える間際となって、ようやくその理由を知る。


 黑竜は人の姿を模していたのだ。人の姿で各地を渡り歩き、時折その姿を黑竜へと変じさせ、そうして世界を喰らう。目的も理由もなくだ。


 騎竜王イギルは考えた。

 時の流れにより七英雄のおよそ半数が失われた今、もはや黑竜を捉えることなどできはしない、と。ましてや寿命が尽きかけている己では、なおさらのこと。

 そうして無二の友である己が騎竜、若き火竜族イグニスベルに王位を譲り、黑竜の討伐を託したのだった。


「ゆるく地を行く人間たちの間では、我らセレスティがアラドニアの魔術に恐れをなし、戦うことをやめたと言われているが、決してそうではない。我らが悲願は黑竜“世界喰い”の討伐ゆえのこと」

「あわよくば殺り合ってくれりゃあ済むってなもんかい」


 今はアラドニアはレアルガルド最大の国家でもある。腹ぺこの黑竜が狙うとするならばそういう国である可能性が高い。ましてや行方不明の黑竜の位置を特定するには、さらに都合がいい。

 悪びれた様子もなく、ラドがこたえた。


「そういうことだ」


 どうやら無駄足だったようだ。

 セレスティとアラドニアを戦わせるには、時期が悪い。


「……しゃあねえ。リリィ、アラドニアのほうはおれたちだけでどうにかするか」

「そうですね」


 リリィがため息交じりに呟くと、ラドが突如として背中の特大剣を抜き、おれの首を目掛けて真横に薙いだ。

 轟と空間が裂かれる音がした。


「――ッ!?」


 驚いたのはおれじゃあない。不意打ちをしかけたほうのラドだ。


 おれは上体を反らしてそいつを躱した後、数歩下がって菊一文字則宗の柄へと右手を置く。鈍いリリィが息を呑んだのは、その後のことだ。

 おれは首を左右に倒して骨を鳴らしながら、あくび混じりに問いかける。


「……なぁ~んの真似かねェ?」

「ふ、こうなることを予想していたか。まさか躱されるとは思わなかったぞ」


 とん、とん、と二度跳ねて、おれは息を吐く。


「話してる間っから、殺意が駄々漏れだ阿呆ンだら」


 戦士ってのはどうにも雑だ。戦ならともかく、暗殺にゃ向いてねえ。

 とはいえ。


 おれは周囲を見回す。ワイバーンを降りた竜騎兵たちは、長槍の穂先をこちらに向けている。

 ちょいと骨だぞ、この数は。

 斬撃疾ばしでなぎ払えるのは半円のみ。こうしてぐるり四方から囲まれてちゃ、半数しか巻き込めねえ。

 ついでに言やあ、撃てば疲れて動けなくなる。残り半数に袋だたきにされて(しま)いだ。


「悪く思うな、オキタ。アリアーナやリリフレイアといった神々自身が黑竜討伐に動かぬ今、我らがやるしかないのだ。古竜様のお力はすべて、我らセレスティがいただく」


 おれは歪な笑みでラドへと言ってのける。


「従わねえぜ、こいつはじゃじゃ馬でねえ」

『誰がじゃじゃ馬ですかっ。オキタなんてホネホネロックな痩せ馬の癖にっ』


 おい、念話使ってまでそんなこと言ってる場合かィ……。


「従っていただく。その血を我らが神竜王イグニスベル様に捧げてでもな」

「お断りします! 銀竜族が従うのは、最初に血を捧げた方のみですっ! そんなに軽いお尻はしていません!」


 リリィの敵意剥き出しの叫びに、ラドが強い殺気を放って返す。


「知っている。だが、主が死ねば()(あら)ず。服従を破棄したければ、誰かがオキタを殺せばいい。貴女様にそれができぬとあらば我らがいたしましょう」


 え~……そうなの~……? それ聞いてねえんだけど~……。

 おれは非難がましい視線をリリィに向けた。リリィはすっとぼけた表情で、空なんかを見上げてやがる。

 口笛吹いてんじゃないよ、もう……。


「ま、いいや。逃げるぜ、リリィ」


 幸い周囲には竜騎兵しかいない。竜騎兵はワイバーン乗り。ワイバーンごときが、古竜種銀竜族の飛行速度に追いつけるはずもない。

 ならばここは逃げの一手に限る。


「は~い。それでは竜化しま――」


 リリィの言葉が途切れた。

 先ほどとは違う方角の空を見上げ、眉をひそめて。


「リリィ?」


 戸惑うおれを余所に、ラドが特大剣を背中の鞘へと滑らせる。納刀だ。

 それを見て悟った。

 拙い、謀られた! 会話は時間稼ぎか!


「リリィ! うぉっ!?」


 叫んだ瞬間にはもう遅い。凄まじい熱風の襲来におれが目を覆った直後――。


「な――ッ!?」


 リリィの見上げていた方向の空には、一体の赤い古竜が浮かんでいた。


「か、火竜族……っ、そんな……!」


 すべての鱗の隙間からマグマのごとき赤い輝きを放ち、凄まじい熱量を伴う暴風を大きな翼でおれたちへと叩きつけながら。


 でけえ! 体躯は銀竜シルバースノウリリィの倍はある! それにこの圧し潰されそうなほどの威圧……!


 己でも気づかぬうちに、おれは菊一文字則宗を抜刀していた。同時にラドや竜騎兵らが再び片膝をつき、頭を垂れる。


 こ、こいつが……セレスティの神竜王イグニスベルか……!

 狙いはやっぱ、おれの命だよなァ……。



ドラ子の雑感


打つ手なし!

オワタ\(^o^)/

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