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竜×侍  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ2巻発売中』
第三章

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第五十九話 侵入

前回までのあらすじ!


ぼんくら野盗どもに助太刀するぞ!

 まぁ早ええ話が、おれとリリィがアラドニアの前線基地を襲撃するから、ナタクら野盗団は最中でも後でも勝手にやつらの基地から必要物資を奪えってことだ。


 夕刻時、ナタクら野盗団が潜む砂漠の洞穴から出立したおれとリリィは、深夜になってようやく北の草原地帯に造られた前線基地を発見するに至った。

 夜の闇に身を隠し、ちょいと小高い丘から一人と一体で並んで直下を見下ろす。

 切り立った崖だ。だが、その先。

 岩山に囲まれるようにして、灰色の大きな建造物と一隻の巨大な船が静かにたたずんでいる。


「軍用飛空挺は一隻ですね」

「んだな。ま、何隻あろうが飛び立つ前ならただの船だ」


 熱い砂漠を歩いてきたためか、夜の冷たさが心地いい。


「では最初に破壊いたしましょう」


 あまりに基地が見つからねえもんで、途中あきらめて東に旅立とうかと真剣に迷っちまったが、日が暮れてしまえば基地には明かりが灯る。おかげさまでようやっと乗り込めるってもんだ。

 むろん、リリィの銀竜体に乗っかって空から見下ろせば簡単に発見できたのだろうが、それでは奇襲とはいかなくなってしまう。

 まったく、こんなことならナタクに案内させりゃよかったぜ。


「次は兵たちの駐屯所でしょうか」

「いや、やつらぁ魔導通信装置とやらで遠くにいる仲間と話せるんだろ。だとすりゃ、そいつがある場所だ」


 いずれ基地が全滅したことは判明するだろうが、その魔導通信装置とやらを破壊しておきゃ、判明までにかなりの時間が稼げるはずだ。

 その間に東へ旅立てば、またしばらくは姿を眩ませることができる。ま、それも時間の問題ではあるけれど。


「それは少々場の把握が困難かと。魔導通信装置は現在では小型化の一途を辿り、爵位持ちの将校であれば個人所有もゆるされています。早い話が、持ち歩ける程度の大きさなのです」

「ふ~む……そいつぁたしかに発見できそうにねえなァ」


 おれは顎に手をあてて考える。


「ええ。ですが、小型化されたものは魔導機関(エンジン)の出力が弱いため、遙か北方に位置するアラドニア本国まで声を届かせるためには、大型魔導機関(エンジン)を中継地点とする必要があります」

「軍用飛空挺内のかい?」

「それでも可能ですが、おそらくは軍用飛空挺が墜とされたときのことを見越し、基地内にも通信室のようなものが存在しているかと」

「なら、そいつを狙うかね。可能ならそこまでは隠密に事を運べりゃいいんだが」


 リリィが眉根を寄せて唇をわずかに尖らせた。


「そんな顔すんな。無理だってのぁわかってるっての」

「ですよねぇ」


 表情見りゃわかる通り、ちょいと現実的じゃあねえ。おそらくこの襲撃で、アラドニアに飛空挺墜としであるおれたちの居場所を教えることになっちまうだろう。

 おれは肩頬にだけ皮肉な笑みを浮かべる。


「……見っかったら、また逃げるさ。おまえさんの速さに期待してもいいかィ?」

「はいっ。地の果てまでも逃げ切ってやりますっ」


 大きな胸の前でぱんと手を合わせて、小首を傾げて微笑む。

 不思議だ。人を殺していても、こいつの笑顔は曇りゃしない。眩しいまんまだ。


「よっしゃ。んじゃ、そろそろ征くぜェ?」

「は~い」


 丘の上から崖へと向けて、おれは躊躇うことなく飛び出す。


「あらよっと」


 岩肌に片足を引っかけて落下の勢いを殺し、崖から飛び出ていた木枝を両足で折って、腐葉土の柔らかな大地へと静かに着地した。

 その直後、リリィがなんの工夫もなく凄まじい速度で落下してきて、両手両足で大地を抉りながら、ずどんと重い音を立てて着地する。


「……」

「……あぅぅ、いたたた……」


 こいつは身体能力すげえ高えのに、なんでこんなに不器用なのか。

 ざわ、と皮膚が命の熱を感じ取る。


 夜気に混じって何かが……。

 おれはとっさにリリィの口を片手で塞ぎ、彼女を引きずり込むようにしてあわてて木陰に身を隠す。

 近づく足音と、ぼそぼそとした話し声が聞こえてきたのはその直後だ。


「…………すごい音だったな。……地面が揺れたぞ……」

「どうせ落石だろう。いくらなんでも人間からあんな音がするわけがない。わざわざ見に来るなんて、おまえはあいかわらずまじめだなあ」

「念のためだ。巨大な落石だとしても、これ以上の危険はないか調べておきたい」


 拙いな。目の前で立ち止まりやがった。

 おれの腕の中で、くわっとリリィが目を見開く。止める間もなくおれの腕を払い除けると、リリィはアラドニア兵の前に飛び出して口を開けた。


「し、し、失礼ですよ! わたし、女性体のときはそんなに重くありません!」


 珍妙な服装をした美女の突然の登場に、呆気に取られる兵二人。

 一方のリリィは崖上を指さし、まくしたてる。


「あの高さですよ!? わかってますか!? あんな高さから落ちたら、誰だってすごい音くらいするでしょう!? わたしが重いわけじゃなくて!」


 ったく、あの女ァ……。

 おれは頭を抱え込み――堪えきれずに噴き出しちまった。


「ぶふぉっ! くく、くっくっく!」

「ん? な、何か今……」


 唖然としながらも、アラドニア兵はおれの潜む木陰へと視線を向ける。

 あ~あ~。まったくよぅ。ことごとく、絵図通りにゃ進みやしねえ。だからこそ人生ってのはおもしろい。


 抜く。同時に蹴る。闇の中から飛び出して。

 喉。一本突きで貫いて。


「か……ッ!?」


 命を絶つためというよりも、声を上げさせないためだ。そうして今度は命を絶つため、貫いた刃を横へと振り抜く。頸動脈を斬りながら。

 斬り裂いた勢いのままに身体を回転させ、目を見開いて立ち尽くしていたもう一人の頸を斬り飛ばす。


 どん、と音がして首が転がった後、二つの肉体が力を失って膝から崩れ落ちた。

 おれは菊一文字則宗に付着した血を振って払い、腰の鞘へと納刀する。


「やれやれ。この見張り二人が戻らねえことには侵入がばれちまう。おかげでちょいと時間がなくなっちまったぜ、おまえさんよ」

「ぅ……ごめんなさい……」


 リリィが真っ赤になって黙り込む。だが、次の瞬間にはその表情が輝いた。


「あ、そうだ! この方たちの服装をいただいて、正面から堂々と侵入するというのはどうでしょうか!」

「阿呆。血塗れじゃねえかよぅ。んなもん着るのぁ勘弁だし、何かあったってのもすぐにばれちまうだろうがよ」


 リリィが得意げな顔で人差し指を立てる。


「お忘れですか? 古竜種は優れた魔法使いでもあるのですよ。ブーツはもちろん、服装を魔素から編むことくらい簡単ですっ」

「おお……」

「というわけで――」


 一度言葉を切って、リリィがグビッと喉を鳴らした。


「えっと、その……ですね……」


 リリィの呼吸が徐々に荒くなってゆく。生命の発する熱量がぐんぐん上昇してゆくのを肌で感じ取れる。

 なんだなんだ……。


「ぬ、ぬ――」

「ぬ?」

「脱いでくださいっ。あぁん……言っちゃったっ」


 やべえ、目が真剣だ。



ドラ子の雑感


見、見、見、見れる……!

早よう! 早よう!

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