第二話
「くそ、あいつは本当に油断なんねぇな」
あれから約一時間森の中での怒鳴りあいの結果、クリフは新しく更新された指令書を見ながら呟く。
「しかし、あの野郎。ついでみたいに仕事増やしやがって」
クリフは紙に書かれた2つの言葉を見て少し前のことを思い出していた。
『お願いしますねー、クリフさん。ちょうどおんなじ村ですし。豊穣士なんてのはクリフさんにとってはお茶の子さいさいでしょうし、もう一個の方はギルドから直接の依頼ですから点数もたくさんもらえますよ』
クリフは大きな溜め息をつく。
だが、最終的にここまで不快感を露わにしながらも仕事をするのには理由がある。
クリフはギルドと呼ばれる機関に属しているのだが、そこでは何人もの人を登録しておき依頼があった時、その依頼に適した人物に仕事を割り振るという制度をとっている。また点数というのがそれぞれの仕事に割り振られておりその点数を集めることでより良い仕事を割り振られるのだ。そのせいであまり逆らってばかりいると仕事が全く割り振られなくなりこの仕事が唯一の収入源であるクリフにとっては非常に困ったことになるのだ。
そして溜め息をもう一つつくとこんな田舎にしては妙に立派な門を見上げた。こんな田舎に関わらず門にはWELCOMEと書かれた垂れ幕がかかっていた。
「誰がこんなとこ来るんだよ」
クリフは今日何度目かも分からない溜め息をついたのだった。