第二話 生理痛はかなりつらいぜ
2日ほどサボタージュしちゃいまた。次話投稿遅くなりましたね。お待たせ致しましたです。
全て事情を話し終えた。しばらく神妙な面持ちの輝と吉田先生。
《体は女 頭脳は男 その名は 名探偵~》などという冗談をいえる空気ではない。 〈身も心も100%男として、今まで通りに、か。母さんも父さんもムチャ言ってくれるよ。くそ、もとに戻りたい〉
〈朝確認した胸の膨らみ。あれは間違いなく女性の物だったな。策弥は前からプリティフェイスだったが、今はそれに合った体に…。実に興味深い。狼の件も気になるが、もしかすると…しかし可愛いな策弥は〉
微かにニヤけた表情で策弥をジッと見つめる輝。それに気づいた策弥は輝をジト目で睨んだ。
「ヒカル君、君のその不埒な目で私を見るのは止めてもらえないかな?気色が悪い」
それに対して輝の返答は、
「不埒な目とは侵害だな。僕は純粋に君のメンタルを心配してだな…。いや…実際君を女子として見るとやはりカワ…」 ギロリ…「いやぁしかし、不憫だ。うん、実に彼が不憫だ。未和先生はこの奇病をどうお考えか?」
誤魔化しついでにそう問う輝。
「こんなの前例がないからなんとも言えないわよ。秘密にしておきたいなら病院はダメね。戸籍データがあるから」
そう言ってまた唸り考える。
「よし分かった。僕に名案がある!」
「名案?」
イマイチ信用出来ない策弥。
「理事長の権限=僕の権限でもある。いっそ彼を女子として改めて、転入手続きをとれば。制服も新調してだな、崎町策弥ちゃんで」
「お前いい加減殺すぞコラァ。ふざんけんな!こっちは訳わかんねぇ秘密抱えてバレないように必死なんだぞ!お前にバレたと思った時だって死ぬ思いだったんだぞ!マジでふざけんな!」
必死に泣き喚き、自分に掴み掛かってくる姿に輝はハッとした。
そして策弥自信も自分が泣いていることに気付いて驚いた。重い、気まずい空気が流れた。そんな時だった。保健室のドアがバタンと勢い良く開かれた。「サックンおる?大丈夫なん?青い顔で保健室入ったて聞いて!」
大阪弁の快活美少女が凄まじい勢いで乱入して来た。 策弥と輝の方を見て、
「アァー!コラ東城、アンタまたサックンのコンプレックスいじったやろォ。もうこの子はデリケートでナイーブでめっちゃ可愛えんやから、」
ピクッ
「もうイジメたらアカンよ!もう…、女ったらしに泣かされるんはいっつも可憐で幼気な美少女やねん」
グサグサグサッ
「サックンなぁ、酷い男やな。男なんて皆獰猛な狼やわ」
ドッカーン ボカーン チュドーン!!!「小豆先輩、それ以上言うと策弥が死にます」
「え?ウチ何か変なこと言った?」
この゛人畜無害゛な快活美少女は小豆未来策弥達の一つ先輩である。自称アキバ系オタクなのだが、調子の良い大阪弁と人懐っこさ、快活美少女というキャラクターで世間のアキバ系オタクのキャラ概念を破壊した人物である。
「未来先輩、ハグはもう勘弁して下さいッス。む、胸が、胸が…」
因みに小豆未来はグラドル並みのナイスボディである。
「あれ?…サックンなんか、プニプニする。可愛い抱き枕みたいやぁん」
ブスっ
「うっ…うっ…うぅ~…」
「うわっ、また泣いてしもた。サックンどないしたん、どっか痛いんか?」
自覚が無いとは恐ろしく人畜無害である。 ここまで無邪気というか、悪意の欠片もない策弥のメンタルへのフルコンボ攻撃。怒れるはずがない。硬派でありたい策弥の性格上、先輩に怒りの感情をみせてはいけないのである。口答えもタブー。策弥ただただ泣いた。
〈昔から可愛い可愛いって。男らしいこと色々やって来たのに。俺は男らしく男として生きちゃいけないのか?なんなんだこの展開は?〉
そんな風に策弥は自分の運の無さを恨んだ。
その時だった。一瞬お腹が押されたような微かな違和感を感じた。その直後、下腹部が熱くぎゅうぎゅうと痛み始めたのである。
「うっく…、う~…は、腹、痛い。ふっくぅ~~…」
〈な、なんだこれ?やべぇ、何も考えらんねぇ。うっく…〉 突然目の前で腹部を抑えて苦痛の声でうずくまる策弥の様子に、ただの腹痛などではないことはすぐにわかった。「東城君、彼をベッドへ!」
吉田先生が緊迫した様子で言った。
輝はすぐに策弥を抱き上げ、ベッドにねかせた。策弥に呼びかけるが、苦痛に呻くだけだった。
「先生、策弥は急にどうしたんですか?」
今まで見たことのない策弥の苦痛の表情に、普段取り乱すことの輝が焦っていた。
「゛男子゛はちょっと出てて。小豆さん、彼の服脱がすから手伝って!」
「は、はい!」
―放課後―
夏の真っ赤な夕陽が差し込む西側校舎。グラウンドや体育館では様々な部活動の掛け声がひびいている。
崎町策弥、東城輝、小豆未来。西日が差し込む西側とは逆の、東側校舎。多目的室に3人はいた。
策弥は青ざめた様子でダルそうに机に突っ伏し、輝は顎に手を当てて何かを考え、未来もまた頭をコロコロとひねって何かを考えている様子。
「う~~~…。ハァァァァァ…」
策弥が呻く。
「君は狼に゛咬まれた゛。狼男の伝説からすると、満月の日までに何らかの予兆が現れるはず。しかし君の場合、どういう訳か、女体化という現象に伴い、女性特有の生理痛が発症してしてしまった。う~ん…、男だった君が生理とは。生理…」
「その単語、俺の前で連呼するの止めて。今後禁句ね」
冷めたツッコミをいれていた策弥に、小豆未来は予想外な大ボケをぶち込んできた。
「満月だけに、゛月経゛やね。いやぁ~保健室ン時はシャレンならん思たけど、まぁまぁシャレンなったね。でもビックリしたわぁ。ウチサックンのことずっと男装系女子や思ててん。 生理痛ってしんどいやろぉ?ウチも初めての時はもう死ぬゥ思た」
この先輩との付き合いはまだ半年も経っていない。策弥の容姿はどこか幼さが残る中性的。オタクの先輩曰く、[ショタ]とか[男の娘]といったジャンルに入れられるらしい。本人にとっては甚だしく不本意で侵害極まりないことなのだが。〈なんだこのヘビーな二次元的ホラーは?あぁ~だるい、腹痛てぇ~〉
顔もメンタルもゲッソリきていた策弥の前に、小豆先輩がヒョコっと顔を出して来た。「ごめんなサックン。本当は男やのに、女の子に間違えてしもて。本当ごめんな」
可愛い顔で瞳を少し潤ませて困った顔を向けてくる小豆先輩。策弥は一瞬ドキッとしてしまった。
「べ、別に先輩が謝ることないッス。かってにコンプレックス持ってる俺が悪いんッスから」
半分照れ隠しでそう言うと、
「これからはもう大丈夫や!サックンはもう正真正銘の女の子になったんやから。生理のこととか、下着のこととか?何か分からんことあったら、女の子の先輩であるウチに何でもいうて。力になるよ。だからサックンも頑張り。な!」
右手の拳をビシッと構えて言う。「じゃあ先輩、早速一つ教えて下さいッス」
「よっしゃ、ドンと来いや!」
「…もとの男に戻りたいッス。どうすればいいッスか?」
死んだ魚の目で聞く策弥。
「策弥は今のまま制服を着ていれば以前と何の変わりもないのだから、このままでも良いんじゃないかな?それとも女子の制服を着るかい?君なら似合うと僕は思うけど?」
ニヤニヤと喉の奥で笑う輝。
「う~ん…」
横目には小豆先輩が白い腕を組んで何かを考えて始めた。少しの間を置いて、思い付いたようにこう言った。
「とりあえずウチンとこの部に入ってみたらどうやろ?もしかしたらもとに戻れる方法探せるかも知れへんよ。まぁ保証はないねんけどね」
「……」
「小豆先輩の部活、どういうことッスか?」
「まぁまぁ、とりあえず入ってみれば分かるてぇ」
出来るだけ早くこのあり得ない状況を脱したい一心で、策弥は2つ返事で部活の誘いに乗った。が、輝は違ったようである。
小豆未来。彼女の天然ぶりと純粋さ。まるで竜巻のような行動力と周りを巻き込むカリスマ性に、非オタク民が巻き込まれると、精神が崩壊するという逸話がある。 親友を自負している輝にとって、策弥と別行動という選択肢はあり得ない。今はとりあえず、小豆未来、彼女の話に乗ることに決める輝であった。
「サックン、帰り一緒にドラッグストア行くでぇ!色々買い揃えなぁ」
「え、はぁ、別にいいッスけど」
「生理用品とか、その他レディース用品揃えなあかんやろ? 女物の下着とかも無いやろ?任しといて。ウチがコーディネートしたる」
「いぃぃぃーーーーーやいやいや、いいッス。遠慮しまッス!」
「ほな行くでぇ!」 策弥の気も知らず、人の都合など問答無用とばかりに、策弥は街に゛くり出された゛のだった。
続く…
今回は分かる人は分かる。分からない人はしょうがないでお馴染みの(生理)というやつでした。正直表現文章苦戦しました。