第1話 あいつとの関係がつらいぜ
まだイマイチキャラ設定がフワフワしてる感じですね。ひたすらに勢いだけで書いております。
俺、崎町策弥〔さきまち さくや〕16歳 吾妻高校1年
何がどうしてこうなったのか、狼?に咬まれたその翌朝、体が女になってやがった。顔はほとんど変わった風ではない。が、無駄に重みのある胸。股が心許ない感じ。ついこの前までは男の自信に満ち溢れたバリバリ硬派な俺だったのに…。 と、そこへ
「やぁ、おはよう策弥君。家族でバーベキューしたそうじゃないか。なかなかいい休日を過ごせたんじゃないか?」
「おっ、よ、ようヒカル。お、おはよう」
「ん?今更他人行儀な態度だな。いつもなら僕を邪険に扱う君が、どうしたんだい、朝食が何か合わなかったのかい?」 この仰々しいというか貴族みたいな口調で俺に馴れ馴れしくしてくる男の名前は東条輝〔とうじょう ひかる〕残念ながら俺のクラスメイトである。
本人曰わく、ナンチャラ財閥のナンチャラの御曹子?本人曰わく、外見内面共に磨かれている者は人を惹きつける。のだそうだ。ヘー
つまり坊ちゃまでナルシストな訳だ。人を惹きつける前に俺が引きつけを起こしそうだ。自称俺の親友だそうだ。アッソ
家から学校までは徒歩で約20分程度。
″いつもの通り″のつもりで彼と会話しているのだが、スポーツブラとやらで胸の膨らみは隠せてはいるが、やはりどうしても隠し事があると守りにはいってしまい、会話が上手くつながらない。輝の表情もさすがに訝しげに曇ってきていた。
こうなって来ると輝の直感力と行動力にはさすがの俺も抵抗するのは骨が折れるのだ。「ちょっと失礼して」(ピタッ)
…ん?
気付くとヤツの両手が俺の胸に押し当てられていた。警戒していたのに抵抗のての字もなかった。
「なっっ…っちょっ、おまっ、何して…!?」
策弥は力任せに輝を押しのけ、とっさに肩を抱いた。策弥は、何故バレたのかよりも、輝の突然のとんでもない確認方法に混乱と動揺が吹き上がってきた。
「はぁ~…くっ…ぅ~…!!??」
みるみる首から顔全体が熱くなって行くのが自分でも分かった。輝は顎に手を当てて何かを考えながら呟いた。
「やっぱりか。いや君に似合わない訳じゃないが、いやむしろピッタリだ。いやしかし、君が自ら女装など、う~ん…」 何やら策弥にとって好ましくない勘違いが呟かれている気がする。とそこへ、
「ちょっと君、その娘に何をしている?」
駐在のお巡りさんである。
「何とは?」
輝が聞き返す。
「そこの彼女が怯えているじゃないか」 カチンッ
「俺は女じゃねぇ!!」
恥ずかしいやらムカつくやらで、策弥はその場から逃げ出してしまった。 この状況に輝は肩をすくめた。
「″彼″女の子に勘違いされるのコンプレックスなんですよ。お巡りさんを責める気はないですが、まぁ、ドンマイです。お勤めご苦労様です」
爽やかな笑顔の下で笑いを必死に堪えて、お巡りに手を振る輝。高校生にドンマイと言われて呆然とする若いお巡りさんだった。
恥ずかしさとか例えようがない不安とか、動揺とか、もう訳がわからないまま全力で走った。 今さらながら自分の置かれている状況に混乱と不安と焦りを覚えた。
突然体が女の子になるって何!?胸の膨らみは誤魔化せてたはずなのに、なんでバレたんだ!?つーかそもそも父さんも母さんも順応性高過ぎだろ。
なんだかんだと気付けば学校の正門をくぐっていた。
「策弥ぁー、ちょっと待ちたまえー!」 輝が笑顔で追いかけてきたので、策弥はまたダッシュで逃げる。周りの輝ファン達がきゃーきゃー騒いでいるがどうでもいい。しかし玄関で靴を履き替えようとしたところで追い付かれてしまった。「僕の話を聞け。さっきはすまなかった。謝る。だからすこしだけ話をだな…」 「知らん!」
「あっ!」
策弥は輝の方を見向きもせず教室までダッシュした。
輝とは同じクラスだが、席が遠く、策弥の方が教室の前側だからとりあえず一旦は顔を見なくて済む。そう思っていた策弥だが、死角があった。
「あれ、策弥お前今日なんかいい匂いしねぇ?」
「 えっ、あ、いや…」
「崎町が香水なんて珍しいよな。ついに色気づいたか?」
「う~ん、なんかいつもより可愛く見えねぇ?」
ピクッ
「バカお前それ禁句だろ」
クラスメイトの横目に、目を瞑って怒りを抑える策弥。
この童顔に加えて意味不明な突然の女体化。策弥のコンプレックスは更に濃くなっていた。〈これからどうやってこの体バレずに過ごせばいいんだよ。輝にはもうほぼバレたんだろうし。あいつだけは避けるべきだったなぁ。女好きのあいつのことだ、俺がナンパされかねない。気持ち悪いけど変態のあいつならやりかねないな。気をつけよっと〉
その後の休憩時間、視線こそ感じるが、輝の方から話し掛けてくることはなかった。
不本意ながらスポーツブラのおかげで外見上膨らみは見えない。しかし男子同士のじゃれあいはかなり危険度が高かったため、ボディタッチはさり気なく避けて過ごしていた。時には、
「策弥ぁ、今から連れしょん行かねぇ?」
「い、いや、今そっちに用はないな」 行ける訳がない。度重なる慣れないパターンの嘘に、だいぶ精神的疲労を感じ始めていた。
〈ヤバい。なんか余裕なくなってきた。もうヤバい〉
―3時限目終わり―「シャァァ!次は体育だ。今日は勝つぞコラァ!」
「ヨッシャ。早く更衣室行こうぜ!」
男子共の気合いの入った声が教室に響いた。それを聞いて、半分寝ていた意識が急覚醒した。
「え、マジ、次体育だっけ!?」「あれ、もしかして策弥、ジャージ忘れちゃったパターンとか?」
「う、うん…」
「今の内山下先生に言ってジャージ貸してもらえよ」
「あぁいや、俺今日はちょっと…」
〈え~っと…、あぁもう言い訳も嘘も思いつかねぇよ。う~んと、どうしよう〉
〈策弥、あの様子じゃそろそろ限界だな。助けられるのは今この僕しかいないな〉
あれからずっと策弥のことを見守っていた輝が、立ち上がって策弥の席まで行った。
「大丈夫かい策弥君、なんか具合悪そうだけど?僕、彼を保健室につれてってみるから、先生によろしく頼むよ」
「いや、俺別に保健室って程じゃ…」 「策弥の秘密、僕なら助けてあげられる。僕を信じて」
いつもの彼とは違う真面目な、どこか頼りたくなる雰囲気の小声が、策弥の耳に届いた。策弥は輝の目を見て意を決した。
輝が付き添いで保健室に来た策弥。そこで驚いたことが一つ。保健室の吉田未和先生(31)はなんと、輝の実家、ナンチャラ財閥の関係者だった。
輝に優しく諭されて、策弥は自分の身に起きた秘密を二人に明かすことにした。
続く…
次回 キャラ設定濃いめの人物登場します。クランクイン的感じですね。