・1・俺の幼馴染
この本を見た瞬間、俺は頭を抱えた。
…だって、そうだろう?
誰が好き好んで自分の初恋を本に、しかも何百年と昔からあるお話として語られたいと思う?
…そう、この本に書かれた「彼」の名は日鈴蓮またの名をレン•ロータス•サンシェール、…つまりは俺のことだ。
あの時代、あれから諸々の事情があって、俺は現世(人の世)から離れていた。
そうして、何百年かぶりに降りたらこれだ。俺がいない間にいったいなにが起きたんだ。そう叫びたい位には改変された俺の初恋物語が出回っていた。
***
「まあ、しょうがないんじゃない?起きちゃったことは諦めるしかないわよ」
そう高いとも低いとも言えない独特の声で話すのは俺の幼馴染兼、悪友の一人アルトリア・ローズ・フェルニス。因みに男勝りな性格をしているが、一応性別は女性である。
そして、それに続けて話すのが、
「そもそも、周りに人がいたのに気がつかない時点で終わってるだろう」
アルトリアの双子の片割れであるヴィルシオ・ユーリ・フェルニス。同じく幼馴染兼、悪友。俺らの中じゃあ悔しいことに恐らく、一番頭がいい。
…この二人、双子の癖して見た目も性格も(性別さえ)正反対で、何も知らない周りから、アルトリアは燃えるような赤髪にちなんで赤薔薇の君、ヴィルはその絹のような金髪にちなんで金百合の君とか呼ばれていたりする。
性別交換しろよお前ら。
「まあ、でも蓮の好奇心旺盛なところは美点でもあるんだから、あんまり文句は言わないでおこうよ。ね」
そうフォローをしてくれるのは明星。
本名は明もしくは星花という名で、俺ら神の中でも珍しい、生まれながらの両性者(男の姿にも女の姿にもなれる者を指す。神ならば、後天的会得も可能)で同じく、幼馴染兼、悪友そして一応、俺の従兄弟だったりする。
「甘い、甘すぎるよ明ちゃん!
兄ちゃんのことだから、今、注意しておかないと絶対また同じ過ちを繰り返すよ!」
「おい、こら竜花」
泣くぞ、俺泣くからな。
そう言うと、「え!兄ちゃん泣くの⁉︎」とかえってくる。
竜花、俺の実の妹。と言っても年齢に一年と差はない。俺が春生まれで竜花が冬生まれという、所謂年子というやつだ。
これが俺達。
ガキの頃から(むしろ物心つかない頃から)俺の隣りにこいつらがいて、たとえ離れてもまた、気がつけば隣にいる。
幼馴染故の遠慮のいらない関係というものだと俺は思っている。
世界観
地球と良く似た、けれど諸々違う世界。
魔法みたいのがあったりするけど、科学(らしき物)も同じくらい発展している。
少なくとも、文字は同じ。
舞台は日本(※もどき)アルトリアとヴィルシオは両親が外国人です。