第一話:このは、最初の力
20xx年9月28日、
俺は不幸とも幸福とも
判断の難しい気持ちで
帰宅したのだったー。
*
その帰宅から10時間ほど
前の出来事だった。
俺、佐藤ミツルはいつもの
ように己を空気にして
朝礼を受けていた。
無気力なようだが
担任の言っていることは
意外にも聞いているのだ。
「えー、お前らも知ってる
ように文化祭が10月の
29日•30日にある。
このクラスからも数人の
実行委員を選びたい」
選ぶー!?
どうせ押し付けあいになると
決まっているじゃないか。
俺は担任と目が合わないように
窓の外をみることにした。
校庭の木が紅葉しそうで
できていなかった。
ふいに、このあと何度も
思い返す信じられない
出来事が起きる。
同時に。2つだ。
まず、クラスで1番の美少女と
言われる秋月このは が
実行委員に手を挙げた。
同じタイミングで紅葉しかけの
木から何かが飛んできてー、
「おお、秋月!
実行委員やってくれるか!」
ー、そして俺もその何かに
耐えられず手をあげていた。
「なんだ、佐藤もやってくれるか!」
いいえ、違いま•••
声が出ない。
代わりに口をついて
出たのは こんな言葉だった。
「はい、この佐藤ミツルに
お任せください!」
これには担任、クラスメート
もちろん秋月も、そして何より
言った本人が1番驚いた。
いつものグループなど
こいつ何があったんだ?
的な目線を送ってくる。
俺は苦しい微笑で
その場を切り抜けた。
*
かくして、実行委員の座に
ついた俺だが どうも
納得がいかない。
すると放課後、秋月に屋上
呼び出された。
クラスメートには
バレないように、だ。
「やっと来てくれましたね、
佐藤クン。
立候補ありがとうございます」
「ありがとう、って
これはお前の利益になるのか?」
「そうですね、ありがとうの
表現は正しくありませんね」
次の瞬間、彼女は
驚くべき発言をする。
「私があなたを操って
立候補させたんですからね」
しばし沈黙。
言葉が出ない。
今、この彼女が言ったように
たしかに立候補したときは
操られているかのような
感覚ではあった。
だが、こんなことが
できる人間
ーしかも高校1年の女子ー
がいるのだろうか。
「疑ってるでしょう?
まあ、かまいませんわ。
いずれ分かることです」
そう言って彼女は
俺に背をむけ、
屋上から立ち去った。
残された俺も、
帰るしかなかったー。
[つづく]