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「ミー、こち! しょかいすゆ!」
『智美』は言いにくかったのか(言えてなかったけど)愛称で呼ばれる事になったようだ。
こいこいと手招かれリーファスの横に立った私は、今居るのが朝礼台の上のような、他より高い場所なのだと気付いた。
そして、そこから下に目を向け
「!?」
ビクッ!
思わず肩が跳ねた。
リーファスと同じ二頭身の可愛らしい天使達が、つま先立ちしながらじぃっとこちらを見上げている……のは、まだ良い。愛らしさにちょっと怯んだけど、まぁ、セーフとしよう。
問題は、天使たちの後ろにずらーっと並んでいる人々だ。
(えええ!? 何で平伏されてるのー!?)
皆一様に跪き、頭を垂れているんだが、何事だろうか。
目を丸くしている私を安心させるように、リーファスは力強く頷いた(勢いあまってちょっとよろめいた)。
「みな、ミーかんげいちてゆ!」
(斬新な歓迎のしかたですね! えええと? どうすれば良いのこれ)
「あの、皆さん……」
ザッ!
(ひっ!? いいい一斉にこっち見たー!)
その素早い反応と異様な迫力に、再びビクッとなった。何これ何この状況!?
「……お世話になります、ね」
「「はい! タニシマトモミ様に快くお過ごし頂けるよう、我等全力をもって……!」」
「そんな大げさにかまえなくて良いですから! 普通にして下さい普通に!」
反応が何だか色々過剰で不安になる。助けを求めてリーファースを見るが
「きょは、もーねゆ。あちた、あないすゆね」
はふっと大きなあくびをしつつ、眠そうに目をこすっている。
この異様な光景を、全く疑問に思っていないようだ。だとすると、ココではこれが普通なのかもしれない。
……異世界の文化に馴染むには、時間がかかりそうだ。
(ちょっと高皇産霊さーん! これ多少の不自由どころじゃないー!)
リーファスの言葉を受けて、跪く人々の中から素早く二人が進み出てきた。
「「失礼致します」」
そう言って、それぞれリーファスと私をひょいっと抱え上げ……
(ん?)
違和感に首をかしげながら、上を見た。
アーチ型の天井と、私を腕に抱えているお兄さんの顔が見える。
(んん?)
優しげに細められた目元から視線をそらし、今度は下を見る。
綺麗に磨かれた大理石と思われる床に、お兄さんに抱えられた自分の姿が映りこんでいた。
・・・・・・。
(私、縮んだなぁ)
仮の体は、二頭身でした。