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あいちてるー!(心の叫び)  作者:
無駄に長いプロローグ
7/26

待機っ!

「さて、君を昇天させてしまったのは、このバ……神皇産霊だ。警戒が足りず、このア……神皇産霊を野放しにしてしまった私の責任でもあると思っている。今回の事は、本当に申し訳なかった。私とこのマヌ……神皇産霊が、責任持って君を生き返らせると約束しよう」


「節々に私への悪意が見え隠れしてるよね!?」


「さて、生き返らせるに当たってだが」


 高皇産霊さんは、不満げな神皇産霊さんをまるっと無視して説明を続けた。


「このバ神皇産霊が強制的に連れてきたせいで、君の肉体は消滅してしまっている」


「……ごめんなさい」


 え。って事は今の私って魂だけの状態? そうなんだ……全然気付かなかった。

 よく「死んだ事に気付かず、さ迷い続ける幽霊」とかの話があるけど、成る程、言われないと分からないもんなんだね。


「そこで、新しく君の体を創り直す事になるのだが……修復ではなく、一から再生となると少々時間が掛かるのだ。申し訳ないんだが、しばらく待ってもらう事になる」


「と言う訳で、半年くらいは高天原に……」


「嫌」


 一秒でも早く去りたいと(心の中でだけど)言ってるだろうが!

 半年? そんな長期間耐えられるわけが無かろうて!


「えぇ? 高天原は駄目だとすると……あ、もしかして智美ちゃんの家は仏教派? なら極楽浄土の方が良いか!」


 ぱんっと両手を打ちつけて、理解を示す神皇産霊さん。

 あー、まぁ、分類するとしたら仏教ですけどね。そういう事でなく。


「神様がうようよいるような場所は、無理」


 私の心が壊れます。断固拒否です。


「えーっと、じゃぁ天界自体が駄目って事?」


「そんなに嫌なのか?」


 こてんと首を傾げる神皇産霊さんと高皇産霊さん。同じ顔で同時に小動物仕草っ! ツボ!

 おっと萌えている場合じゃ無い。しっかりしろ自分。


「嫌だ」


 余計な事を口走らないように、短く簡潔に拒否。深く頷く事で、二人から視線を引き剥がした。あんまり見てると愛を叫びたくなるんだもの。


「ふむ、そうキッパリと言い切られると、清々しいものだな」


 何だか関心した様子の高皇産霊さん。「なかなかやるな。気に入ったぞ」的な目で見ないでくれますか? 悶えそうなんで。


「でしょ!」


「お前を肯定した訳ではない」


 嬉しそうにはしゃぐ神皇産霊さんを冷たく一瞥した後、顎に手を添えて考え込む高皇産霊さん。


「そうだな、そこまで嫌なら、半年間、別の場所で待っていられるようにしよう」


「!」


 本当ですかそれ!? 思わず期待に満ちた目で高皇産霊さんをガン見してしまった。

(あ……愛してます!)

 動きそうになる唇をぎりっと噛締めて耐える。

 うかつだった。凝視なんてしたら致命的だって。馬鹿か自分!


「多少の不自由を覚悟するならだが」


 この精神的苦行から解放される為なら、多少の不自由くらい問題ありません!

 私は勢い良く頷いた。


「そうか。では少し待て」


 高皇産霊さんはそう言って目を瞑り、すぐに目を開けた。


「うむ……預かり可能の返事が来たぞ。そのかわりに仮の体は自分たちが決めたいと言っているが、構わんか? 問題なければ此方に」


 え。展開早いな。


 えーと、仮の体ってどういう……

 というか、もしかしなくても今手で示している『虚空に開いた謎の穴それ』に飛び込めって事ですかね?


「ちょっと高皇産霊、説明不足すぎる!」


「む? そうか?」


 神皇産霊さんは高皇産霊さんを押しのけ、ささっとメガネを装着した。

 何処からか取り出した指し棒をスッと伸ばし、伸ばしただけで特に使う事もなく説明を始める。神皇産霊さんは形から入るタイプらしい。


「まず、天界に居るのが嫌なら、智美ちゃんにはこれから別の世界で待っていてもらう事になります。なぜなら……えーと、ちょっと難しくて長い話になるけど、聞きたい?」


「いい」


 聞いても理解できないだろうし、今はメガネ萌えで忙しいんで。メガネ良いよメガネ。 

 良すぎて漏れちゃいけない何かが漏れそうだけどね!


「さて、その世界で暮らすにあたって……魂だけの状態というのはとても不安定なので、仮の体を貰って過ごす事になります。ですが、その種族や外見等は全て向こうの世界の神たちにおまかせです。智美ちゃんは意見できません。それでも大丈夫?」


 おけおけ。異世界トリップですね分かります。良いよドンと来い。実はちょっと憧れてたんだよね異世界トリップ。

 仮の体も、特に拘りはないし。むしろ決めてもらえるなら楽だ。

 私は大きく頷いた。



 これで、『愛が止まらぬ故に精神磨耗が激しい』状態から開放される。もう安心だ……この時の私はそう信じていた。


 信じるものはすくわれるのである……主に、足を。

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