神様って
「怒ってる、よね?」
複雑な感情を持て余していると、恐る恐るといった様子で神皇産霊さんが顔を覗き込んできた。
(当たり前だバカヤロウ! (全然大丈夫! 愛してる! (これで怒らない奴が居ると思うか!? (不安そうな表情、萌えええ!)
感情がせめぎ合うが、根性で好意の方を蹴り飛ばした。
鼻を鳴らし、ふいっと顔をそらす。
「やっぱり、智美ちゃんは、その、私のこと、嫌い……だよね?」
そう問いかける声は、少し震えていた。
(嫌いなわけが無いっ! 大好きだ!)
そう大声で叫びたい。何時もの私なら抑えきれずに叫んでしまっていたかもしれない。
けれど、今は理不尽な仕打ちに対する怒りが手伝って、ギリギリ、本当にギリギリだけど、耐えられそうだ。
気力を振り絞り、正面から睨み付ける。
(うああんやっぱり愛してる!)
顔を直視した瞬間、再びぐらっと揺れる心に鞭を打つ。怯むなバカモノ!
「大っ嫌いっ!」
言った後、即座に視線をそらした。
「~~っ」
俯き、肩を震わせる神皇産霊さん。
うぅっ。傷つけた、よね? じくじくと胸が痛……
「やっぱり、良い!」
……む? あれ? 何かむしろ嬉しそう?
「そんな厳しい目で睨まれたら、痺れちゃうよっ!」
うっとりした表情で、頬を桃色に染める神皇産霊さん。あ、鼻血出そう。じゃなくて、どうしちゃったの神皇産霊さん!?
「冷たく拒絶されても、それでもっ! だからこそ!」
がしっと力強く両手を握られた。待って、ちょっと待って、そんな、ぱぁっと大輪の花が咲いたような笑顔を向けないで!
「私、やっぱり、そんな智美ちゃんが……」
顔を近づけないで! 間近で貴方の笑顔はキツイ! う、あ、あああ誰か助けてー!
「何をやっているんだ馬鹿が」
「あう!?」
心の叫びが届いたのだろうか。
突然、神皇産霊さんの笑顔が視界から消えた。
入れ替わりに現れたのは、神皇産霊さんのドッペルゲンガー(もしくはクローン?)だ。
姿形は全く同じだが、神皇産霊さんではないとすぐに分かる。表情が全く違うんだ。こう、キリッとしている。
「加護すべき対象を困らせるとは何事だ!その前に神としての立ち振る舞いというものはな……」
ドッペルゲンガー(?)は足元に向かって説教し始めた。
正確には、ドッペルゲンガーが現在進行形で踏みつけている神皇産霊さんに向かって。
「うげ。高皇産霊!」
ドッペルゲンガーの名前が判明。
神皇産霊さんは高皇産霊さんを見上げて心底嫌そうな声を出した。
「品の無い声を出すな」
「いだだだだだだっ!」
ぐりぐりっと足に力を入れる高皇産霊さん。
「すまないな、この馬鹿のせいで」
う。すみません、あまり此方に目を向けないでもらえますか。
だって、高皇産霊さんって表情と口調意外は完璧に神皇産霊さんと同じなんだもん。
要するに、目が合っただけで愛が溢れてくる状態な訳で。神皇産霊さんと違って全く非が無い分、この人に好意を表さないようにするには相当の精神力が必要な訳で。
あぁもう、神様って皆こうなの!?
常に魅了発動中なの!?
だとしたら一秒でも早くココから去りたいんですけど! 私の心の平穏の為に!