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あいちてるー!(心の叫び)  作者:
やっとはじまる本編
14/26

 夢を見た。


 夢の中に居ながら、これは夢だなとすぐに分かる……そんな夢。



 ――――ふと気付くと、学校の教室にいた。


 机の傷、はしっこの欠けた消しゴム、ノートのすみの落書き……見慣れたそれらから顔を上げ、目に入るのもまた見慣れた授業風景……で は な い 。

 机に向かうクラスメイトも、教団に立つ教師も、私も含めて皆……


 プリチー族なのだ!


 プリチーな教師が教壇の上で指し棒を振ってはコテンと転び、プリチーな生徒が教科書を見ながら「?」っと小首をかしげ……集中できるかこんな授業!

 可愛いしか頭に入って来ないわ!


『ミー、ここおちえて』


 くいっと袖を引かれて振り向けば、制服姿のリーファスが教科書を広げていた。

 だが、答えようと口を開いた瞬間、すぅっと景色がぼやけ……


『ああもうプリチー族な智美ちゃんなんて最強だよ! 可愛い可愛い可愛い大好きっ! このまま攫っちゃいたい! あいちてるううーー!』


 私は何故か、神皇産霊カミムスビさんに抱きしめられていた。


(Σ%$д#@;!?)


 混乱してまともな思考が出来ない。何か言っているが、その言葉も頭に入って来ない。

 唯一の救いは、ぎゅっと抱きしめられているから顔が見えないし、此方の顔も見られていない事だろうか。


『んーっ! ずっとこうしてたいー!』


 ――何をやっているんだこの馬鹿が――


 バチッ!


『ぎゃうっ!?』


 何だかとても痛そうな音がしたかと思うと、神皇産霊さんが足元に蹲っていた。


(……姿は見えないけど、高皇産霊タカミムスビさんだな。こんな風に神皇産霊さんを扱えるのは。……というかこれは夢、なのかな? 普通の夢じゃない、よね。この魂の奥底から惹かれてやまない感覚からして目の前に居るのは神皇産霊さん本人で、私の夢に乱入してきたって事、だよね多分。それで、えーと……とりあえず愛してる!)


 解放されたおかげで、少し思考能力が戻ってきた。戻らない方が良かったかもしれない。


『死ぬかと思った……本気で死ぬかと思ったよ! 手加減無しとか鬼なの!? だいたい覗き見なんて趣味悪いー!』


 ――見張っておかねば暴走する間抜けが居るからだろうが。さっさと用件を済ませろ――


『分かったよもう』


 頬を膨らませた神皇産霊さんが、ひらりと手を振る。何気無い仕草一つでこうもハートを揺らしますか罪な人め!

 内心で息を荒くしていると、ぱぁっと視界が光で白く染まった。

 光はすぐに収まり、視界が元に戻っ……て……


『これはこれで可愛いーっ!』


 先ほどの光よりも眩しい神皇産霊さんの笑顔が目前に迫ってきていた。


(可愛いのは貴方だー!)


 そう脳内で絶叫しつつ、恐らく再び抱きしめようと伸ばされたのであろう腕を避けて大きく後退る。


(……あれ?)


『避けられちゃったっ』


 何故か嬉しげな神皇産霊さんを極力視界に入れないようにしつつ、自分の体を見下ろした。


(ちょっと、大きくなってる?)


『新しい体だよ! まだ成長途中だけどね。今は……四歳くらい、かな。定期的に馴染ませる必要があるんだー。えっと、今日で45日目でしょ? これからも大体45日ごとに……』


『え……そんなに経った?』


『ん? あ。そういえば時間の進み方が違うんだった! 私たちの世界の方が速いんだー』


『……そう』


『うん! えーと、こっちの世界での一日が過ぎたらまた仮の体に戻るから』


『わかった』


『それと、あのね、お願いがあるんだけど……』


 躊躇うように言葉を止め、ちらっと此方を見てハニカムとかやめて欲しい。キュン死する。


『礼拝の時、智美ちゃんもプリチー族の神官と一緒に祈って欲し……』


『絶対嫌』


『はうっ言い切る前に即答! でもその心底嫌そうな目が良――――



 ぱちり。


 そこで目が覚めた。



 ……何だろう。ゆっくり寝たはずのに、この疲労感……

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