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「きょは、そとあないすゆ!」
ということで。
(西洋風な建造物! 石畳! 騎士! 馬車! ふおおお)
目の前に広がる「これぞRPG!」「まさにファンタジー!」な街並みに、私のテンションは急上昇だ。
抱っこは恥ずかしいが、私たち以外のプリチー族も皆同じ様に運ばれてるので、気にしない事にした。プリチー族の移動は基本、抱っこ便(銅貨一枚で街の中ならどこでも運んでくれる)を利用するというのが常識らしい。移動したい時に抱っこ便が見当たらなくても、銅貨を見せて手を振れば誰かが臨時の抱っこ便になってくれるんだそうだ。
あとは、動物に運んでもらえるプリチー族もいるとか……リーファスも、基本的には神官に運んでもらうが、動物に頼む事もあるらしい。動物の上に乗ったリーファス……
(見たい! もふもふ系であればなお良し! あ、でも愛らしさに耐えきれないかもしれないからやっぱ駄目!)
想像しただけでにやけそうになる口元をきゅっと引きしめ、一生懸命案内してくれているリーファスの声に集中した。
「ひりょば。ふんすいのせれ、いたじゅらっこ!」
リーファスがびしっと指差した方向を見ると、人だかりで見えないが
……何だろう、砂糖に群がる蟻を彷彿とさせるあの様相は。ちょっと恐い……
おそらくあの中心に噴水があり、精霊がいるのだろう。
「この広場は、中央の大きな噴水が有名です。噴水にいらっしゃる精霊様がおちゃめな方でして、気まぐれに噂を流しては人々の反応を楽しむという趣味をお持ちなのです。
ただ、しばしばその噂に精霊様自身が振り回されておいでで……いつぞや『コインを投げ込むと願いが叶う』という噂が流れた時は、人々がコインを投げ込み過ぎて水が溢れ、精霊様が半泣きになっている姿をお見かけした事もありましたね……
今回は『噴水の前で愛を誓った恋人は永遠に結ばれる』という噂です。ちなみに精霊様は、殺到してきた恋人達の熱意と勢いに怖気づいて、噴水の底に引きこもっておられるとか」
(色々ツッコミどころあり過ぎてどうしよう。とりあえずその精霊様、ちょっと好きだわー)
「ぎりゅど。ぼけんしゃ!」
「ギルドでは冒険者に仕事を……」
(ギルドきたーーーー! あ。今入っていった人、冒険者かな!? でっかい斧持ってた!)
ここに来てテンションはマックスです。だってギルドだよ? 冒険者だよ? 異世界万歳!
「よければギルドの中も見てみますか?」
「……やめとく」
どうやら私が興味津々なのを察したらしく、爽やかな笑顔で提案してくれました。
おかしいな、表面には出してなかったはずなのに……内心ドキドキしつつ、しれっとした顔を作って首を横に振った。
本音を言ったら是非とも中に入りたいが、今はやめておこう。テンションが振り切れて何かしでかしたらマズイからな。
「いちば!」
「この市場は主に食品を扱っております。新鮮な食材が手に入るおかげか、この辺りの食堂は美味しいと評判で……」
「……しょくど……」
リーファスがぽつりと呟いた瞬間、ぶんっと視界がぶれた。突発的に全身にかかったGに目を白黒させている内に、いつの間にやら食堂の目の前へ。
リーファスを抱えている神官が、にっこりとイイ笑顔で振り向いた。
「そろそろお昼ですし、お腹がすいてきてしまいました。よろしければこちらの食堂で昼食にしませんか?」
「ん!」
神官の方々は察しと行動力と気遣いが半端無いと知りました。