第八話 「藍の狩人」
二話続けて短かくなってしまいましたが、予定的にはちょうどいい感じです^^
いつも読んでくださっている皆様、元気ですか? どうも、獅子竹 鋸ですw
第八話「藍の狩人」でありますが、これ、著作権引っかかってませんよね?
厳密に言えばかかってるけど、かかってませんよね?大事なことなので二回聞きました。
ま、いっかw
それでは、ご賞味あれ^^
川に沿って小型肉食鳥竜を探すことおよそ30分、密林特有の蒸し暑さにもいい加減辟易とし始めたところであった。
ジャンヌ「――――えーと、ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ、むぅ、なな、やぁ…………、13匹か。群れの頭数としちゃ多い方だけど、多いだけだね」
川の中流付近、カーブしたところのかなり開けた河原で、ようやく私たちは彼らと遭遇した。
13匹の小型肉食鳥竜はギャア ギャアと鳴きつつ私たちを包囲するように展開し、こちらを窺うようなそぶりを見せている。私たちの実力を計りかねているのか、それとも単に獲物を吟味しているのかは分からないが、手を出してこない。
なるほど、前の世界で雑滅した小型肉食恐竜に似ている。違うところは青い鱗、黄色い嘴、赤いとさかぐらいだろうか。あえて言うなら色彩があでやかすぎるといったところだろう。まあ、恐竜すら見たことのない私にとっては多少好奇心がわく程度のものだった。この世界に来て一番最初に見たものがレイアだったのだから仕方がないと言えば仕方がない。大抵のことにはもう驚かない気がする。
ヒルダ「初めてのクエストですから、油断しないようにしましょう」
と注意を喚起しつつ矢をつがえるヒルダに続き、私たちも遅まきながら武器を構える。
私たちの動きがきっかけになってか、あるいは痺れを切らしたかでまず4匹のランポスが突進してくる。するとーーーー、
ガャィインッ。
その内の1匹は走り出した瞬間に頭部に矢が刺さり絶命していた。
リィゲル「上手いな。額の真中じゃないか」
動く標的に対しものの見事に眉間を射抜くその技量に、自然と言葉が口からこぼれる。
ヒルダ「フフっ、それ程でもありません。ありがとうございます」
謙遜しながらも、ほめられた事に対し嬉しそうに微笑むヒルダ。
しかし、たかだか1匹殺られただけでは奴らは止まらなかった。
ギャ、ギャァアッ。
私の4メートル前方から、1匹が飛びかかってくる。その優れた脚力にものを言わせた跳躍は、確かに一瞬で間合いを詰めることができる。が、ただそれだけのことだ。
リィゲル「フンッッッ!!」
身体を左に少しずらし、右下から左上へとハルバートを振り切る。
生々しい手ごたえと共に、胴体から切り離されたランポスの頭部がごとりと落ちる。
戦斧とは思えないその切れ味。日本刀と比べてみても遜色ない完成度に私は密かに感服する。
そして後ろを振り返り、残りの2匹の末路を見た。
1匹はジャンヌによって心臓と首を刺し貫かれ、もう1匹はレイアによって頭部を握り潰されていた。
ジャンヌの剣技にも舌を巻くものがあるが、何より竜族の化身であるレイアの身体能力には脱帽するより他がない。今更ながら、私はこのような強者と刃を交えたのだと少しばかり身震いする。
恐怖からではなく、戦人であるが故の武者震いである。
レイア「ハッ、竜族とは言え所詮は末席。数いようがいまいが我らの敵足りえんな。脆すぎる」
ジャンヌ「だね。アタイもこの程度じゃ物足りないよ」
敵の脆弱さを憐れみ、嘲笑をたたえる2人。その挑発的な雰囲気を察したのか、残りの9匹は一斉に鳴き声を張りはげ、攻勢に打って出た。
しかし、再びヒルダのコンポジット・ボウ《強化弓》が甲高い音で唸った。
放たれた矢は3本、けれども聞こえた発射音は1回こっきり。
そして3本の矢は、まるで吸い込まれていくかのごとく、3匹それぞれの眉間を捉えていた。
あと6匹――――。
当初の戦力の半分以下である。さしものランポスたちも、幾分か冷静さを取り戻し、自分たちがいかに不利な状況下にあるかを悟る。退くべきか退かざるべきか。逡巡の間、彼らは動きを止めてしまった。
まさにその立ち止ったその場所が、彼らにとっての死に場所となったのは言うまでもない。
私とレイアとジャンヌは、弾かれたように敵に肉薄した。私たちの急接近にとっさの迎撃を試みようとするランポスたち。しかし、間に合わない。いや、間に合わせはしない。
ジャンヌ「ドリャァァアッ!!!!」
リィゲル「フゥッッ!!!」
レイア「ッッッ!」
ジャンヌの剣閃が、私の斬撃が、レイアの拳が躍る。
生き物から肉塊へと変貌を遂げるランポスたち。
藍の狩人はより強い狩人に狩られたのだった。
目標数以上の討伐を終えた私たちは、ジャンヌに倣い、殺したランポスたちから損傷の少ない、またはない部位を探して剥ぎ取っていた。
命を奪うからには利用できるだけ利用する。
これは、モンスターを殺す際の心構えらしい。生き物を殺す。ならばむやみやたらにただ殺すのではなく、自分が生きるために代わりに死んでくれたモンスターに感謝の意を以て、その素材を使えということなのだそうだ。
この考えに、私は深い理解を示す。
それは食事をする際の習慣に起因する。
“いただきます”“ごちそうさまでした”
己の糧になってくれた命たちに。その料理を私の代わりにふるまってくれた人に。私の代わりにその命を殺して食材にしてくれた人に…………。
犠牲の上に生きる我々が本来持つべき心構え。私はそう思っている。思っているからこそ、先程のハンターたちのスタンスに共感したのである。
ジャンヌ「――――いいかい、こいつらは比較的腐るのが早いんだ。その上ここは密林。1つでも多く素材を取るんだよ」
閑話休題。
とにかく今は素材の採取に専念する。
リィゲル「ふぅ、やはり初めてやることはなかなかうまくいかないものだな」
だくだくと流れる顔の汗を、私は手の甲で拭う。
ここが河原でよかったと、まざまざと痛感させられる。
私は何とか剥ぎ取ったランポスの皮を、麻で出来た袋に押し込み――――。
イイイィィィンッ。
――――森の中より飛来してきた矢を、手刀ではたき落した。