8.魔剣改造
「それで、どうすれば魔法剣に耐えられるようにできるの?」
「私に聞かれてもわかるわけないわ」
「え……」
ルクレシアは驚く。
「ゲームの知識でわからないの?」
「わかっていたら、最初から教えているわよ!」
「そんな……」
簡単にはいかないのはわかっている。
だけど、私には考えがあった。
「アルード様に聞くわよ!」
「困った時のアルード様頼みね!」
アルード様に聞くと、自分が持っている剣を見せてくれた。
「これが魔法剣に耐えられるようにするための術式だ。光のものだが、調べれば他の属性のものもある」
「さすがアルード様です!」
ルクレシア、もっと褒めて! 他の属性の術式をどうやって調べるのか聞くのよ!
「アルード様、他の属性の術式についてはどこで調べればいいのでしょうか?」
「基本的なものであれば王宮図書館の蔵書で調べられる。だが、騎士団のほうにいけば各属性の騎士剣がある。それぞれの騎士剣を見れば、より良い術式がわかるだろう」
「ありがとうございます! やっぱりアルード様に聞いて良かったです!」
「頼りがいがあるわ。ルクレシア、本当に素敵な婚約者がいて良かったわね!」
「そうなの。アルード様は最高に素敵な婚約者よ!」
ルクレシアだけでなくアルード様も嬉しそう。
アルード様の推し活は普通に褒めるだけで十分な気がするわ……。
ともあれ、騎士団に行って各属性の騎士剣を見せてもらうことにした。
「これで術式はわかったわ。あとは術式をつなげるだけね」
でも、つなげるのが一番難しい。
「頑張って! ルクレシアならできるわ! 悪役令嬢でしょう?」
「そうね! 私ならできるわ! 悪役令嬢だもの!」
こんなに乗せやすい悪役令嬢でいいのかどうかはさておき。
ルクレシアが魔法剣耐性、古代の斬撃アップ、現在の斬撃アップの順番でつながるように苦心、やり遂げてくれた。
「光ったわ!」
「つながったわね!」
魔法剣にできる斬撃アップアップの剣が完成!
前の剣よりもかなり強いため、カーライト様もネイサンも大喜びだった。
「これに古代の術式を刻めば強くなりますか?」
私とルクレシアがカーライト様とネイサンに剣を贈ったことを知ったヴァリウス様が、セルヴァリーの魔剣を差し出した。
ええーーー!!! ありえない!!!
下手に書き換えれば魔剣の効果が失われてしまう。
だから、魔剣を改造しようと思う人はいない。
普通は。
やっぱりヴァリウス様は常識にとらわれない。最強を目指す人だということを実感した。
「少しお預かりしても? 魔剣を見て検討したいのです」
「そうしなさい」
ゲームではセルヴァリーの魔剣を強化することができる。
でも、現実に強化するとなるとゲームのように単純ではなく、工夫しなければならないことがわかっている。
魔剣がダメになる可能性もあるので、私もルクレシアも真剣に悩んだ。
「まあ……ゲームではセルヴァリーの魔剣を鍛えることができるから、できるとは思うけれどね」
「アヤナを信じるわ!」
ルクレシアが決断。
覚悟を決めて刻もうとするけれど、できないというか拒否された。
魔剣に。
「この状態だとできないわ!」
「どうしてよ? これまでは普通に書き換えることができたのに」
「もしかすると……所有者設定をしているからかも?」
「あー、そうかも!」
魔法武器はとても貴重かつ高価なものであるため、所有者が自分しか使えないように所有者設定の魔法をかけたり術式を刻んだりすることがある。
ヴァリウス様に所有者設定をはずしたいと言ったら怒られた。
一度所有者設定をはずすと、長年に渡って蓄積された魔力もなじみ感も消えてしまうらしい。
「でも、魔法文字を書き換えしようとすると、拒否されてしまうのです」
ルクレシアの考えによると、魔剣に蓄積された所有者の魔力によって弾かれてしまい、魔法文字を全く刻めない。
「当然です。私以外の者がこの剣を扱うことはできません」
「では、書き換えはヴァリウス様にしていただくしかなさそうです」
「私が魔剣の魔力を抑えているので、その間に書き換えなさい」
「そんなことができるのですか?」
「できます」
所有者設定の状態にある剣は所有者や能力の高い魔法武器職人が強制的に武器の魔力を抑えて書き換えることがわかった。
「失敗したらごめんなさい」
「ルクレシアであれば仕方がありません」
いやいやいや……失敗したら魔剣が壊れちゃうかもしれないのに!
ルクレシアの好感度がいかに高いかがわかる。
さすが主人公代理! 良い方の傾国の美女!
一発勝負ということで緊張したルクレシアだったけれど、やはり悪役令嬢は只者ではなかった。
美しい魔法文字を完璧に刻んで新しい術式をつなげることができた。
その結果、セルヴァリーの魔剣に現在の斬撃アップの効果が加わった。
「試し切りがしたいです。氷竜でいいでしょう」
ヴァリウス様は嬉々としてノーザンに行ってしまった。
そして、記録を伸ばして帰って来た。
たった一人で八十八頭を討伐。一日だけで。
本当に氷竜相手なのかと思いたくなる数字だった。
ゲームならバグってる。
でも、現実はもっとバグってるってことよね?
「ルクレシア、私の剣も改良できないだろうか?」
アルード様がルクレシアに頼むは当然だった。
「アヤナ、斬撃アップでいいと思う?」
光の魔法剣の特性は固くなることなので、風の魔法剣のように斬撃には向いていない。
叩き潰しながら切るので、打撃アップのほうが効果的。
ゲームではね。
「アルード様の魔法剣に適しているのは打撃アップのほうだと思うわ」
アルード様の剣には現在の斬撃アップがすでについている。
なので、ルクレシアはアルード様の剣に古代の打撃アップを刻み、それから現在の斬撃アップを刻み直した。
アルード様もノーザンに行って氷竜で試し切りするというので、ルクレシアと私もついていった。
自己記録を伸ばしたけれど、行った場所の氷竜がいなくなってしまったので、ヴァリウス様の記録には届かなかった。
「ルクレシアのおかげで強くなれた」
アルード様はルクレシアが自分のために改良してくれただけで大満足。
そして。
「アヤナ、よくやりました。大規模生息地をヴァリウスとアルードで潰してくれました」
攻略しにくい大規模生息地を潰すことができたのでオルフェ様は大喜び。
頭を撫でてくれるなんて……!
オルフェ様の好感度は間違いなく上がった。
ノーザンで頑張るだけが方法じゃない。
別の方法でもいいことがわかった。




