5.贈り物作り
次の日はルクレシアと一緒に王宮に行った。
ヴァリウス様とアルード様に会うことができたので、ノーザンの状況を説明する。
国王代理である王太子と第二王子にすぐ会えるのはルクレシアのおかげ。
ディアマスの役に立てるし、喜んでもらえる。
私がオルフェ様を狙うことについても悪くないと思ってくれているのが非常に心強い。
「アヤナも何か作ってみればいいのでは?」
ルクレシアが魔法武器を作っているので、ヴァリウス様が提案した。
「無理です。アヤナの魔法陣スキルは低いので」
アルード様がダメ出し。
いかに私のスキルが低いのかをよく知っている。
「オルフェのために向上すればいいだけです」
正論。
でも、さすがにきつい。
努力でなんとかなるようなレベルじゃないのよね。
「私の代わりにルクレシアに作ってほしいです」
「ダメだ! ルクレシアが作るのは私の魔法武器だ!」
アルード様は心底ルクレシアを愛している。
ゲームでは好感度が上がるほど愛が深まるけれど、愛が重くなりすぎて闇落ちしてしまうシナリオもある。
なので、ルクレシアがなかなかアルード様とくっつかないことが気になり、闇落ちルートになったらどうしようかと心配したこともあった。
今だって何かがきっかけで闇落ちする可能性があるかもしれない。
ゲーム内容を知っている私だからこそ、注意しておかないとね!
「ルクレシアには私の魔法武器も作らせるつもりですが?」
「兄上はいいです。心から愛する家族のために自作の魔法武器を贈りたいと思うのは当然ですので」
「そうですね。私の魔剣を越えることができるほどのものは難しいでしょうが」
「そうですね」
「ヴァリウス様の魔剣は名称持ちでしょうか?」
ゲームに登場するアイテムかもしれないので確認しておきたい。
「セルヴァリーの魔剣です」
ヴァリウスの母親である前王妃の実家セルヴァリー公爵家が所有する風の魔剣。
ゲームではヴァリウス様専用の武器として登場する。
イベントで強化することができるのよね……。
でも、強化すると好感度が爆上がりする。
そのせいでヴァリウス様とアルード様の兄弟関係が悪化するシナリオのようになったり、ヴァリウス様かアルード様のどちらかが闇落ちするようなことになったら困る。
「アルード様の剣は魔剣ですか?」
「光の剣と呼ばれているが、魔剣ではない」
レアアイテムじゃない!
ということは、アルード様の武器はまだまだ強くなる。
ゲームと同じならだけど。
「王家は強い武器を所有していそうです。やはり光系の魔法武器なのでしょうか?」
「そうだ」
「当たり前です。光の系譜ですからね」
主人公の最強の武器はディアマス王家が持っている。
でも、ヴァリウス様かアルード様を攻略しないと手に入らない。
それはちょっと残念。
「さすがに王家の品は貸し出せないからな?」
アルード様に言われてドキッとした。
「大丈夫です! 私にはコランダム公爵夫妻からもらった杖があるので!」
閃いた。
「ルクレシア、私の魔法武器を強化してくれない?」
「え?」
「ルクレシアならきっとできるわ!」
「でも、失敗したら」
「魔法文字は消せるでしょう?」
「そうだけど、壊れてしまうこともあるのよ? 大事な杖を壊してしまうわけにはいかないわ」
「ルクレシアに壊されるなら本望よ! お願い!」
ゲームでは主人公が自分で鍛えるけれど、現実の私には無理。
だから、悪役令嬢で代理主人公のポジションもこなすルクレシアに頼むってわけ。
「わかったわ。アヤナのために挑戦してみるわね」
絶対にいけるわ!
主人公の勘で確信していた。
「できたわ」
ルクレシアが私の杖に魔法文字を刻んでくれた。
「これでいいの?」
「いいの」
デート場所の一つである魔法博物館にディアマスが光の国だった頃の碑文がある。
バラバラに展示してあるけれど、実は術式について書かれている。
正しい順序で並べると、武器の打撃力を強化する術式になる。
現在の術式は昔よりも進化している。
なので、基本的に古い時代の術式は弱くて使えない。
でも現在の術式はほぼ単体用で、他の術式とつなげることができない。
古い時代の術式は弱いけれど、そのせいで別の術式とつなぐことができる。
ルクレシアの愛の魔法陣が本物になったのは、古い術式を使ったから。
おかげで他の術式とつなげやすくなり、複合魔法として成功したのだと思う。
私の杖には魔力を溜める効果の術式がある。それと古代の打撃アップをつなげれば強くなるはず。
「試したいわね」
「叩くものがないとね」
とりあえず、王宮の野外練習場の側へ行く。
魔法耐性がある魔法植物の木が防壁のような感じで周囲に植えてある。
その木であれば傷つけたり折ったりしてもいいという許可をアルード様にもらった。
「身体強化をして、魔力も溜めて」
術式がつながるのは魔法文字が光ることでわかっている。重要なのは効果の方。
「せーの!」
ドゴン! バキッ!
太い幹の木にひびが入った。
「大成功!」
「やったわ!」
ルクレシアも大喜び。
「ルクレシアの武器もこれで強化できるわよ!」
「そうだけど、イグニスのものだし……壊れないか心配だわ」
「イグニス伯爵に聞いてみたら? まあ、この強化術式はどの属性でもいけると思うわ」
推している相手に自作の魔法武器を贈るミニイベントがある。
贈れば好感度がアップする。
攻略対象者の誰に贈るか選べるので、どの属性でも平気なはず。
「強化したものをアルード様に贈りたいわ」
「やっぱりそうよね!」
ルクレシアの推し活を応援するため、ゲーム内でアルード様とヴァリウス様の武器を鍛えられることを教えた。
「攻略対象者の好感度を上げた状態でイベントを発生させないとダメなのね?」
「そうなのよ」
主人公の武器は杖なので、古代の打撃アップの術式は王都の魔法博物館に行けばわかる。
でも、ヴァリウス様には風の剣の特性ある斬撃アップの術式を手に入れないといけない。
それは夏休みの離宮に行くイベントで手に入る。
ヴァリウス様が魔物討伐をするのでお手伝いをするために南の森へ行く。すると廃墟と化した昔の遺跡があって、そこで古代の術式を発見するはずだった。
刺突撃アップは春休みのイベントで古城に行き、近くにある古い村を散策して手に入れることも話した。
「現場に行かないと魔法文字を確認できないわ。だから、夏休みや春休みに離宮や古城に行くだけじゃダメなのよ。攻略相手と一緒にお出掛けするミニイベントがないとだから」
「なるほどね。じゃあ、行きましょう!」
ルクレシアはやる気満々。
「二カ所、行けばいいのね?」
「そうだけど、飛行馬車を手配できる?」
「できるわ!」
ルクレシアはアルード様に私と女子旅行に行きたいと言った。
まずは離宮。王家が所有しているので、滞在場所の確保は問題ない。
だけど、どちらも魔物がいる場所。護衛がいないとダメだと言われてしまった。
「私も一緒に行く」
ルクレシアが大好きなアルード様が申し出た。
やっぱり!
離宮に行けるのであればいいので問題はない。
ルクレシアといちゃつきたいアルード様に睨まれないようにするほうが難しい気がした。




