4.地道な方法
翌日。
どう過ごそうか考えていると、王宮に住んでいるルクレシアがコランダムの屋敷に戻って来た。
「アヤナ!」
「ルクレシア!」
私とルクレシアは最高のペア。
それは昔も今も変わらない。
主人公と悪役令嬢のペアが最高でないわけがないしね!
「アヤナが戻っていると聞いて、絶対に会おうと思ったのよ!」
「ありがとう」
「何かあったら遠慮なく言ってね?」
「いっぱいあるわ!」
早速部屋でお茶をしながらノーザンでのことを話した。
「結界で氷竜を突き刺すなんて……アヤナはさすがね! びっくりだわ!」
「ふっ、そうでしょう? だけど、効率が悪いって言われてしまったわ」
「そうよね。足止めするだけでも大変だもの」
オルフェ様は一人でできるけれど、普通は一カ所につき十人ほどでする。
なので、一体につき口、足、翼の三カ所なので三十人程度氷の使い手が必要。
その上、とどめ役や別の足の担当もいるとなるともっと必要になる。
「ノーザンは必死にルクレシアが考えた方法を練習しているわ。ちゃんとやれば有効だってことはわかっているから、以前よりも状況的には明るくなっているのよね」
「そうでしょうね。決死の覚悟で槍を突き刺しに行かなくていいわけだし」
「生息地も少しは潰せているしね」
魔法学院の三年生の時に一組の中間テストで小規模の生息地を潰した。
その時、アルード様とクルセード様で競った結果、クルセード様が勝った。
アルード様にそのことを聞いたヴァリウス様は、ノーザンからの氷竜討伐の協力要請を利用してノーザンに行った。
そして、小規模の生息地で氷竜を倒しまくり、クルセード様の倒した数を抜いた。
愛する弟に勝ったクルセード様に自分が勝つことで敵討ちをした感じ。
そのことを知ったクルセード様は、ヴァリウス様の記録を抜くためにノーザンに行った。
中規模生息地で効率的に倒そうと思い、上級の範囲魔法を連発。
でも、氷竜は飛ぶ。思ったほど倒せない。
このままではヴァリウス様に負けてしまうと焦り、魔法剣でなんとかヴァリウス様よりも一匹だけ多く倒した。
記録としては抜かした。
でも、最初に範囲魔法で魔力を無駄にしたことやたった一匹しか更新できないことをヴァリウス様に笑われ、次は最初から魔法剣でやる、記録を伸ばすと豪語したということは知っている。
「魔法剣って実はすごいみたいね?」
ディアマスにおける魔物討伐の主流は魔法だけで倒す方法。
そのほうが魔物に近寄らなくていいし、複数をまとめて倒せる。
でも、魔法ばかりに頼るせいで魔力の消費がすごい。
魔物の種類、特性、数によっては魔力消費が少ない魔法剣のほうがお得な場合もある。
「アルード様が一撃で飛竜の首を切っていたけれど、ヴァリウス様も一撃だって聞いたわ!」
「あー、私もオルフェ様から聞いたわ」
氷竜と戦った経験があるからこそ、いかに強い魔物なのかを知っているつもりだった。
なのに、アルード様やヴァリウス様は魔法剣を使い一撃で倒してしまう。
ゲームにおける攻略対象者の戦闘能力が常人よりも上なのはわかるけれど、さすがに一撃はおかしい。
現実のアルード様やヴァリウス様のほうがゲームよりも強いなんて思ってもみなかった。
「信じられないと思うけれど、一人で五十体以上倒すにはそれぐらいじゃないと無理だしね」
ヴァリウス様の記録は五十二頭。
クルセード様の記録は五十三頭。
アルード様の記録は二十一頭だけど、クルセード様との取り合いだったし、小規模生息地を潰してしまったからこそ数が伸びなかった。
一人だけでしていれば、もっと多くの氷竜を倒せていたはず。
「確かに強いわ。だけど、魔法剣だけのおかげではないわ。条件が揃わないとね」
「どういう条件?」
「他の魔法が必須よ」
浮遊魔法、移動魔法、飛行魔法は必須。
ヴァリウス様とアルード様は身体強化の魔法も使える。
そういったものがないと、素早く勢いをつけて魔法剣を振るうことができない。威力を増すことができなくなる。
「氷竜は夏季と冬季で強さが違うわ。冬季のほうが倒しにくいから、単純に討伐数の記録を伸ばしたいなら夏季のほうが有利よ」
「なるほどね」
ルクレシアはその通りだと頷いた。
「でも、魔法剣の強さは季節に関係ないわよね?」
「光や風はそうじゃない?」
「一応調べたのよ。光の魔法剣は武器を硬くすることで潰して切る感じ。鱗の上からでも思いっきり叩きつけることでひびを入れてしまえるから、そのまま切ってしまえるみたいね?」
「そうね」
「風の魔法剣は斬撃力が増すけれど、硬いものを切るのは苦手。氷竜だったら柔らかい首の下側から切るか、鱗がついている場所の隙間みたいなところを狙うらしいわね?」
「そうそう」
「クルセード様の魔法剣は熱でダメージを通して傷んだ場所を切る感じ。氷竜は熱に弱いからよく効くけれど、火竜みたいな高熱耐性がある魔物には効きにくいようね?」
「ルクレシア、やけに詳しいじゃない?」
私はゲームの知識もあるので知っていることが多い。
でも、ルクレシアは私とは違う。
「勉強したの?」
「アルード様が魔法剣を使うから調べたの! 推しのことは調べないとね!」
ルクレシアも押し活に励んでいる模様。
「ルクレシアは最近どうしていたの?」
「魔剣作りよ」
「えっ?」
目が点になりそうだった。
「魔剣を作れるの?」
「作れないから作れるように勉強しているのよ!」
ルクレシアは魔法陣が得意。それはつまり、魔法文字の術式を描く能力があるということ。
なので、魔法武器を制作する能力として活かせないかと考え、自作の魔法武器を作っていることがわかった。
「偶然魔剣ができたら素敵だと思って! イグニスのおじい様もそのためにいろいろな魔法武器を見せてくれたり、有名な魔法武器の所有者を紹介したりしてくれるのよ!」
「へー」
確かにそういうコネがありそうだと思った。
「いつか炎の魔剣みたいなすごい剣を作ってアルード様に贈りたいの! さすがにすぐには無理だから、婚約の品にはできないけれど」
「まずは魔法武器を作れるようにならないと」
「作れるわよ。普通の魔法武器ならね」
「普通じゃねえ」
「普通でも大変なのよ? 魔法武器職人の資格がいるわけだし。悪役令嬢だからできるのよ!」
一生卒業しないわね。悪役令嬢理論から。
私も主人公理論から卒業する気はないけれど。
「少しずつだけ上達はしているわ。自分の属性じゃない魔法武器も作れるようになったのよ!」
「すごそうな感じね」
「すごいに決まっているでしょう! 魔法武器の制作は難易度が高いけれど、全属性に対応する魔法文字だから自分の属性の影響を受けにくいのよ!」
「練習が大変そう。武器にひたすら魔法文字を刻むのよね?」
「そうよ」
「次々と普通の魔法剣ができてしまうわね?」
「それはないわ。一本書き込んで、うまくできていなければ消して、またそれに描くの」
「あー、書き直しをしているのね」
「当然よ! でないと剣代だけで大変だわ!」
「そうね。ところでルクレシア、火魔法の護符が欲しいわ。数枚でいいから描いてくれない?」
「いいわよ。どの魔法?」
「上級で。四枚使えば、氷竜一体は倒せるわよね?」
「無理だと思うわ。私の魔法のほうが絶対に強いわよ! 氷竜にもよるけれど、八枚はないとかも?」
「じゃあ、八枚で」
「自分でノルマを増やしてしまったわ!」
そう言いつつ、ルクレシアは魔法紙を用意してスラスラと描いてくれた。
私もこんな風にスラスラと綺麗に描けたらいいのに……。
主人公なのに美文字と魔法陣スキルがないなんて!
「上級の護符でもあっという間ね。もうちょっと描いてくれない?」
「それはダメ。どんどん枚数を増やされるとキリがないわ。雑になって威力が落ちたら困るでしょう?」
「そうね。これでいいわ。ありがとう!」
素敵なお土産をゲット。
もちろん、オルフェ様への贈り物にするつもり。
ゲームと同じく地道に好感度アップをしていくことも大事だった。




