38.それぞれの役目
「やっぱり強いわ」
飛行したソリで進むと、氷竜がたくさん倒れていた。
誰が倒したのは言うまでもない。
攻略対象者がいかに普通の人ではないかがわかった。
「あそこにいるな」
アルード様が氷竜に囲まれていた。
でも、次々と氷竜が倒されていく。
「助けなくて良さそうだ」
「向こうの氷竜は手付かずです。ネイサン、倒しにいきましょう。できるだけ素早く倒すために口は塞ぎません。ブレスに注意です」
「わかった」
オルフェ様とネイサンも行ってしまう。
「ベルサス、槍を使って見たいのだが?」
「わかりました。今度は私が囮をします」
ベルサス様とカーライト様のペアも行ってしまった。
レアンの魔力を考えて、地上に降りて休憩することになった。
「私がソリを操縦できればね」
ルクレシアがため息をついた。
「役に立てなくて悲しいわ」
「それは私も同じよ」
「アヤナは役立っているわ! 防御魔法や身体強化の魔法をかけられるわ。回復魔法だって。でも、私にはできないし」
ルクレシアはしょんぼりした。
確かに今のルクレシアは役に立っていないように見える。
でも、そうじゃない。
「この中で一番役に立っているのはルクレシアよ。私を助けに来てくれたでしょう? ルクレシアが行こうと思わなければ、アルード様だって他の人だって来てくれなかったわ。ありがとう!」
ギュッとしてあげると、ルクレシアも私をギュッとしてくれた。
「当たり前でしょう? アヤナは妹同然なんだから!」
「そうよね、お姉ちゃん!」
「一応言っておくけれど、貴族的にはお姉様よ?」
「そうだったわ!」
二人で笑い合う。
「レアンが何気に大変かも。結構移動しているわ。帰りの分も必要よ?」
「そうだね。でも、ソリ分だから意外と平気かな。戦闘で魔力を消費するとつらいから、できるだけ飛行操縦以外は何もしたくないけれど」
「俺が代わってもいい」
ホルンが行った。
「ほとんどソリに乗っているだけで役立っていない。魔力がある」
「役立っているわよ。偵察に行ってくれたし」
「そうだね。正直、すごいよ。どんな危険があるかわからないのに一人で行けるなんて。さすが世界を旅する吟遊詩人だね」
「ただの吟遊詩人じゃないのよ。世界で唯一無二の吟遊詩人って言ってあげて。そのほうが喜ぶから」
「わかった」
「かっこいい感じね。でも、長い感じもするわ。魔物討伐ギルドでは短い名称のほうが覚えてもらいやすいらしいわよ?」
「どんな名称?」
「凶水のアインとか。有名人らしいわ」
笑った。
「めちゃくちゃ合っているわ!」
「そうよね。言いやすくて強そうだわ」
暇なので、アイン様と貯水池の魔物討伐に行った話をした。
「水使いって実は怖いのね……」
「アイン様は毒水使いと言ったほうが正しいわ。ハイランドは怖い人ばっかりだから気を付けないと」
「ナハト様は怖くないわ。優しそうな感じがするわよ?」
「遠慮しているからに決まっているでしょう? ここだけの話だけど、あまり仲良くならないで。アルード様が嫉妬するほうが怖いから!」
「そうかもね」
噂をすれば、アルード様が帰ってきた。
「また進んでから倒す」
「お疲れ様」
ルクレシアがアルード様をギュッと抱きしめる。
嬉しそうなアルード様を見れば最高の効果だとわかりやすい。
「アヤナ、回復魔法をかけてくれない? アルード様の魔力を節約したいから」
「了解」
「ありがとう」
「チームを組んでいるなら忘れないようにしないとね」
それを教えてくれたのはアルード様。
「レアンさえよければ進もう。時間が無駄になる」
「わかりました」
ソリが進み始める。
飛行魔法なので早い。またしても氷竜がたくさんいた。
「記録を伸ばしてくる」
「今、何頭なの?」
「三十七だ」
「もう半分近いなのね」
「後半になるほどつらくなるとは思う」
「気をつけてね。応援しているわ!」
「行って来る」
アルード様が氷竜に向かっていった。
ルクレシアの応援に応えるために頑張っちゃうのが確定済み。
「安全に進めるようにしてくれるのは嬉しいけれど、帰りに疲れてしまいそうよね」
「そうね。でも、同じルートを通って帰るわけだから、安全度は高いわよ」
「そうだけど……やっぱり私も言ったほうがいいかしら?」
ルクレシアがため息をついた。
「心配なのはわかるけれど、大丈夫よ。アルード様は結界もあるし、自分で回復できるわ」
「心配なのはヴァリウス様よ。記録を抜いたらまたノーザンに来るかもしれないでしょう?」
「ノーザンのためになるからぜひ来てほしいわ!」
私もオルフェ様も大歓迎。
「その場合、アルード様が国王代理で政務をすることになるわ。忙しくなりそうだと思って。私も暇になってしまうわ」
「王都を綺麗にしていたわよね? 害獣や害虫駆除で」
「順調過ぎて。期間を置かないと集まりにくいし、別の人が練習も兼ねて担当することになったの。新しい何かを考えないといけないわ。人々のためになることでね」
「そうそう、しっかりとディアマスを良い方に傾けてよね!」
ルクレシアであれば、傾国の美女でも断然応援できると思った。




