34.聖女と詩人
村人全員の好意によって私とホルンは村に無償で滞在できることになった。
その代わり、氷竜を倒しに行く。
魔力の都合もあるので一匹でもいいし、偵察だけでもいい。
滞在中に病気や怪我人が出た時には無料で治療することにもなった。
「ちょっと試したいことがある」
ホルンは村で勇気がある狩人として評判の男性を二人連れて行くことにした。
「四人分も負担して大丈夫?」
「考えがある」
ホルンは村長からソリを借りた。
「これに全員で乗る。そうすれば飛行魔法の対象が一つだから、魔力の負担がソリ分だけ済む。節約できるよ」
あったまいいーーーーーーー!!!
「名案だわ! 魔法の絨毯と同じやり方ってわけね」
「知っているんだ?」
「ルクレシアに教えてもらったわ。実際に見たことはないけれど」
「原理は同じ。まとめて乗り物に乗って、魔法対象を一つにするだけだから」
「乗り物から落ちないように気を付けないよね?」
「そうだけど、低空飛行なら平気だと思う」
「そうね! 私の防御魔法をかけておけば安全だわ!」
四人で出発。
驚くことに氷竜の生息地まで来てしまった。
「大丈夫。この辺に氷竜はもういない。倒れているのは全部死んでいる」
結構多い。
「氷竜の鱗は売れる。一番状態が良いものだけでも回収したら、村の収入にならないかなって」
「それで俺たちを連れてきたのか!」
「ありがたい!」
「もし氷竜が来ても、アヤナが結界を張れば安全だ。俺がその氷竜を他の場所に連れて行って倒すから」
「なるほどね!」
氷竜の鱗回収作業が始まった。
「地面に当たっていないほうなら大丈夫そうだ」
「固くて切りにくいが」
「気温が低くて凍ってしまったせいかな」
ホルンがナイフに魔法をかけた。
「ナイフの刃先が熱くなる。魔法が切れるまでは溶かしながら切れるよ。火傷しないように気をつけて」
「ありがたい!」
「こっちのナイフも頼む!」
なんという便利さ!
強力な魔法が使えなくても、日常生活やちょっとしたことについては十分過ぎるほどの能力だと思う。
「アヤナ、回収を手伝ってくれないかな?」
「了解」
角や牙に雪をかけてざっと綺麗にしてから浄化魔法をかける。それを袋に入れるだけ。
「女性なのに平気そうだな」
「魔物討伐ペアっていうのは本当だったんだな」
「当たり前でしょう!」
ハイランドでも魔物討伐はしたけれど、魔法学院の時の経験のほうが大きい。
ジーヴル公爵領で魔物討伐というよりも高級食材調達をしたことで、魔物討伐に対する恐怖感が良い意味で激減した。
魔物は害悪というだけじゃない。
食材だったり、素材だったり、人々の役に立つ部分だってある。
通常動物と違って危険度が高いし、異常繁殖すると怖いのはある。
だけど、自然界の一部。適切な距離を取ることができるのであれば、共存ができそうな感じがした。
氷竜だって人が住まない極寒地に生息しているだけなら問題ないだろうしね。
「氷竜が混んでいる場所を避けて空いている場所に引っ越したいのはわかるけれど、人間のほうが先にいたところだしね。さっさと追い出したいわ」
「氷竜だって人間はもっと住みやすいところに移ればいいって思っているよ」
「そんな知能なんてないわ。人間は食べ物よ」
「それもそうか」
氷竜からの鱗回収作業をして村に帰った。
村長に狩人の男性たちが報告。二人だけでは手が足りないとなった。
「できるだけ多くの者でいきたい」
「大型のソリだと移動速度が遅くなるし、重量があり過ぎると魔力の負担が増えてしまうから」
「大丈夫だ。犬ゾリで行く」
村では移動手段として犬ゾリを活用している。
「かなりの距離があるわよ?」
「さすがに飛行よりは遅いだろうが、早朝に出発すれば夜に帰ることができると思う」
夜間になったとしても、氷竜がいる方角には魔物がいなくなっているので大丈夫だろうということになった。
「犬だと思ってバカにするなよ? かなりの速度が出る」
「魔犬だからな」
魔犬を赤ちゃんの時から育て、懐かせて訓練をほどこす。
通常の犬よりも強くて頼りになるらしい。
「魔物の犬を赤ちゃんの時から育てているなんて思わなかったわ!」
普通の大型犬だと思っていた。
「魔鹿でもいいが、懐きにくい」
「犬のほう忠実だ。狩りも手伝ってくれる」
ノーザンについて新しい知識が増えた。
ゲームではわからないこと、学べないことがたくさんある。
現実は厳しいだけじゃない。
未知が溢れている。
たくさんのことを学んでいける場所でもあった。




