30.麗しい姿
ホルンはノーザンに来たことがあるとわかった。
でも、適当にフラフラしていただけだというので、一応は観光をすることにした。
「ここが王城よ!」
やっぱり一番の目玉ははずせないというか、私が行きたい。
オルフェ様が住んでいるところだから。
「前にも来たよ」
「中に入った?」
「まさか」
「ふふ、入れる方法を教えてあげるわ!」
騎士団の訓練施設に行く。
「アヤナ!」
「ノーザンに来ていたの?」
「いらっしゃい!」
「嬉しいわ!」
推し仲間たちが歓迎してくれた。
「そっちの人は?」
「美形ね?」
「まさか恋人?」
「オルフェ様を諦めたの?」
「違うわよ!」
誤解されてしまった。
だけど、攻略対象者なので仕方がない。
見た目はいいし、女性に人気がありそうな男性なのは明らかだから。
「魔物討伐のペアを組んでいるホルンよ」
「魔物討伐!」
「アヤナらしいわ!」
「アヤナが後衛で、この人が前衛ってことね!」
すぐに理解してくれた。
「まさか氷竜を倒しに来たの?」
「二人で?」
「違うわ。魔物園に行くつもり。ホルンに見せようと思って」
「あー、危険な魔物を見に来たのね」
「魔物討伐のペアだから勉強ってこと?」
「知識を増やすのは大事よね!」
推し仲間の理解が嬉しい。
やっぱり推し仲間もノーザンも大好き!
「今日はやけに多いわね。もしかして、オルフェ様が来そうなの?」
「絶対に来るわ!」
「それで集まっているのよ!」
「ラッキーだわ!」
待つことしばし。
騎士団の人と一緒にオルフェ様が来た。
相変わらずの麗しい姿……感動しかないわ!
「キャー!」
「オルフェ様―!」
「おはようございます!」
「頑張ってください!」
「応援しています!」
推し仲間たちが大声で叫びながら手を振った。
魔物討伐をするのは大変なので、国民が応援しているということをオルフェ様や騎士団の人に伝えるのは大事なこと。
だからこそ、騎士団は訓練施設に応援目的の一般市民を入れてくれる。
私も同じように応援したいけれど、今日はホルンがいるのもあってぐっと我慢。
オルフェ様の姿を見ることができただけで幸運だって思わないとね……。
「すごい人気だね」
「当たり前でしょう? ノーザンの王子なのよ?」
「王太子ではなくて第二王子なのに?」
「だから人気なの。王太子は書類仕事だけど、第二王子は魔物討伐や氷竜対策をしているわ。魔物から国民を守ってくれているオルフェ様を応援するに決まっているわよ!」
「なるほど」
オルフェ様は地上から生やす氷の作り方、調整の仕方を教えていた。
ずっとこのまま見ていたいけれど、ホルンはつまらなそうな感じ。
今回は古代の紋章を探しに来たので、元気そうなオルフェ様の姿を見ることができただけで十分だと思うことにした。
「今日は用事があるからまたね」
「そうなのね」
「またね」
「またね!」
推し仲間に挨拶してホルンと訓練場を出た。
「オルフェ様がいるのにいいのかな?」
「姿を見ることができただけで幸せよ。だけど、ここではその他大勢の一人として眺めていることしかできないわ。もっと幸せになるために必要なことをしたいのよ」
「なるほど」
新しくできた魔物園に行って、ノーザンで最も危険な魔物についての知識をホルンがわかっているかを確認。
全部見たというか、わざわざ野生の魔物を見に行ったらしい。
「ホルンって、実は強いの?」
「全然。逃げるのが専門」
「へえ。もしかして、祖国から逃げて来たの?」
ホルンは何も言わない。
なので、これ以上は聞かない。
「お昼を食べに行きましょう! ノーザンでは温かいものを食べないとね。スープ料理が有名よ」
「アヤナのおすすめを食べたいな」
「任せて!」
王都で大人気の店に行って一番人気のスープセットを注文。
そのあとはノーザン国立図書館に行った。
「ここで紋章のことがわかるかも!」
紋章についての記述がありそうな本のコーナーに行く。
いろいろな紋章があったけれど、ホルンに違うと言われた。
「古代のだから極めて希少な本でないと載っていないと思う。古代の遺跡や碑文のほうがありそうな気がする」
「それもそうね」
一番古い本がありそうな場所は王城だけど、さすがに無理。
なので、ノーザンに残る古い遺跡を調べるための本を探すことにした。
「遺跡はあんまりないみたいね」
「氷の国だからかもしれない。人が住みにくい場所だから」
王都から行きやすい場所は年代的に新しいので微妙。
最も古いのは氷竜の生息地になってしまったところだった。
「場所が最悪」
でも、ゲームシナリオ的にはこういうところにありそうな予感。
「さすがに二人だけで氷竜の生息地に行くのは無理だわ」
「俺が囮をして氷竜を引きつけようか? その間にアヤナが遺跡に行けばいいよ」
ホルン、やっぱすごいわ!
泣けるほど尽くしてくれるキャラだと言われているだけある。
でも、さらりとそんなことを言われたら良心が痛い。
「無謀なのはダメ! 氷竜を倒せそうな人を集めるか諦めるかよ。命は大事に。わかった?」
「わかった」
注意したのにホルンは嬉しそうだった。
謎だわ……何かとね。
ゲームの知識はあっても、現実のホルンならではの言動がある。
探りたいけれど、仲良くして好感度が上がり過ぎるのも困る。
悩ましかった。




