28.詩人の仕事
翌朝。
魔物討伐ギルドに行くとホルンがいた。
「変えたのね」
綺麗な服装になっていた。
高貴な出自だけにとっても似合っている。
「おかしいかな? 昨日みたいな高級店でも入れそうな服装にしてみた」
「大丈夫。本物の吟遊詩人らしいわ」
「そうかな? 俺のイメージでは昨日の恰好だけどね?」
「それは場末の酒場にいる売れない吟遊詩人。世界で唯一無二の吟遊詩人ではないわ。もっと希少で奇跡を起こしそうなイメージでないと!」
「なるほど」
「さすがに奇跡は無理そうだけど、小奇麗になっているのは認めてあげる」
「アヤナちゃんに認められるのは嬉しい」
「アヤナって呼んでいいわよ」
「俺はホルンのままだけど」
「ホルンってハープではなく角笛のことよね? 笛は吹かないの?」
「できなくはないけれど、歌えなくなるから」
「確かにね! ところで、あの魔物討伐はないの?」
「ある。だから、アヤナが来るのを待っていた」
「行くわよ!」
二人で魔物討伐。
そして、闇属性の魔石もゲット。報酬山分け。
「楽過ぎる……」
「一生この仕事をしていたら、かなり稼げるかもしれないね」
「でも、あの魔物がいればの話よね?」
「そうだね。最近はちょこちょこ依頼があるかな。ハイランド全体の魔物が増えているせいかもしれない」
「そうみたいね」
「あの魔物は人々の欲望が多いと増えるって伝承がある。だからかもしれないね」
なんとなくそうかもって思ってしまった。
ホルンは暗示っぽいことを言うキャラなのよね。
「実はホルンに聞きたいことがあって」
「どんなことかな?」
「ティールームに行くわよ」
昨日と同じティールームに行くと歓迎してくれた。
ホルンが見違えるような見た目になっていたので、昨日はやはりお忍びだったのだと印象付けるのに丁度良いと思った。
「俺に聞きたいことって?」
注文が届くとホルンから言われた。
すぐに結界を張る。
「遮音していたのに」
「自分で管理したほうが安心だから。実はオルフェ様に特別な魔法の槍を贈ろうと思っているの。友人に制作を頼んだけれどうまくいかない気がして。助言してよ」
「俺が?」
「恋愛とかの悩み相談も吟遊詩人の仕事でしょう?」
「そうなんだ?」
「当たり前でしょう! そんなことも知らないで吟遊詩人とか笑っちゃうんだけど?」
「演奏して歌って踊ってナイフ投げを披露すればいいと思っていた」
「それは場末の酒場にいる売れない吟遊詩人だから!」
「場末の酒場以外はダメみたいだ」
「そういうこと。ナイフを投げるなんて危ないわ。普通の場所でやったら、警備隊に捕縛されるわよ?」
「それもそうだね。考えていなかった」
「これからはちゃんと考えて」
「そうする」
お茶を飲んで、スイーツを食べる。
ホルンは真面目に考え込んでいた。
「何を考えているのよ?」
「どんな槍にしたい?」
私の相談について考えていたらしい。
「伸縮機能がある槍にしようと思っているわ。でも、伸縮機能の魔法陣があると、他の魔法陣や術式を組み合わせられないのよ」
「なるほど」
「組み合わせやすいものを知らない? 古代の術式とか」
「古代の紋章は?」
「どんな効果?」
「いろいろ。属性の紋章を刻むとその属性の武器になるとか」
「魔法槍用の武器になるってことよね?」
「そうだね。同じ属性の魔法武器になる」
それだわ! オルフェ様の専用武器は氷の属性のはずだから!
ルクレシアが見せてくれた槍には伸縮機能の魔法陣しかなかった。
つまり、あの槍は氷属性になっていないということに気づいた。
「氷の古代紋章が知りたいわ! どこに行けばわかる?」
「俺の祖国に行けばわかるよ」
ホルンのルートだけになっちゃうからダメ!
ゲームの場合だけど、現実も同じだと怖いので絶対に避ける。
「他の場所でなんかない?」
「ノーザンに行けばあるかもしれないね。あそこは氷の国だから、古代の遺跡とかに紋章が描かれている可能性がある」
「じゃあ、ノーザンに行くわ!」
「俺も行こうかな」
ホルンが言った。
「アヤナといると楽しいから」
「オルフェ様と結ばれるように手伝ってくれるなら一緒でもいいわよ。吟遊詩人は恋のキューピッド役もしないとでしょう?」
「そうなんだ?」
「当たり前でしょう! 本当にわかっていないわね!」
ホルンはちょっと抜けているところがあるので、うまく付き合うと心強い味方になってくれる。
レアアイテムやレアカードをくれたり、攻略相手と仲良くなる方法を教えてくれたり。
攻略キャラで最も貢いでくれる素敵な吟遊詩人だと言われているのよね!
「今わかったから、アヤナとオルフェ様の恋のキューピッドになれるように頑張ろうかな」
やったーーーーーーーー!!!
ホルンに会えたのは大吉だった。




