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私の推しは北方の白銀王子  作者: 美雪


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27.吉か凶か



「ここ?」

「ここよ」


 貴族に人気のティールーム。


 アフタヌーンティーが有名らしく、ジュリアにお勧めされた。


「高級そう。身分的にも服装的にも不味い気がする」

「大丈夫」


 ティールームに入ると、早速店員が嫌そうな顔をした。


「店長か一番偉い人を呼んで」


 チップとして高額紙幣を出すと、店員はにこやかな笑顔を浮かべて奥へ行った。


 ハイランドの心得その一。お金で人の心を動かす。


「お客様、当店では身分の条件とドレスコードがあります。大変申し訳ないのですが、ご利用いただくことはできません」


 偉そうな人が来て言われた。


「これで身分がわかるわよ」


 ディアマスのパスポートに添付されたハイランド王国の特権証書を見せた。


「クルセード様から何かあったらこれを見せろって言われているよね。バカじゃなければわかるだろうって」


 ディアマスの男爵令嬢の身分だと低いので、ハイランドの特権証書で強化してくれた。


 特権証書はハイランド王族に寵愛されていたり重用されていたりする証で、貴族なら爵位に『大』がつく。


 今の私はスピネール男爵令嬢ではなくてスピネール大男爵令嬢。


 クルセード様の側近のアイン様も特権証書おかげで伯爵から大伯爵になっている。


 ようするに、ハイランドでは貴族より上の大貴族という扱いになる。


「ようこそおいでくださいました! 特別なお部屋にご案内いたします!」

「わかっていないわね。この服装はお忍びってこと。一般人のふりをしているから普通の席がいいのよ」


 実は特別な部屋の代金を請求されたくないだけ。


「かしこまりました!」


 ハイランドの心得その二。特権で人を動かす。


 ジュリアのように余裕でできた。


「アヤナちゃんって、すごい人物?」

「私の知り合いがすごい人物」


 普通の席に座って、アフタヌーンティーセットを二つ頼んだ。


「注文が来るまで暇だからなんか歌って」

「ここで?」

「当たり前でしょう! さっさと演奏!」

「怖いなあ。まあ、アヤナちゃんがいるなら平気そう」


 ホルンがハープで演奏を始める。


 そして、美声で感動的な歌を披露してくれた。


「うまいじゃない! すごいわ! 最高! クルセード様に褒めてもらえるかも!」


 わざとらしくそう言って拍手すると、店の者もすぐに拍手。


 客も拍手。


 ハイランドの心得その三。王族の寵愛というか威を借って人を動かす。


 虎の威を借る狐の気分。


「そ、そうかな……嬉しい」


 ホルンは照れまくり。


 これでホルンの好感度が上がったはず。


「スピネール大男爵令嬢様、お待たせいたしました」


 注文したセットが届いたので食べる。


「公爵令嬢のお勧めだけあって美味しいわ」

「そうだね」


 一般人に見えるけれど、ホルンはちゃんとマナーを守っていた。


 なぜなら、ホルンは高貴な出自だから。


 祖国を離れ、吟遊詩人として世界中を旅している。


「アヤナちゃんは面白いね。一緒にいると楽しそう」

「ホルンと一緒にいるとあの魔物を倒して稼げそう」

「そうかもね?」


 笑い合う。


「またあの魔物の討伐依頼があったら声かけてくれると嬉しいわ」

「わかった。でも、知らせる方法がわからない」

「毎日のようにギルドに来ているから。今日みたいな時間ね」

「どこに住んでいるのかな?」

「王宮」


厳密には王宮の敷地内にある別館だけどね! 


「王宮? すごいな!」

「部外者はお断りって感じのところだから来ないで」


 面倒な者が来ないようにするためにそうしている。


「そうだろうね」

「ホルンはどこに住んでいるのよ?」

「適当」

「だと思ったわ!」


 でも、よくない。それは。


「うるさいって思われるのは承知で言うわ。そんな恰好で酒場で歌うなんてもったいないわ!」


 攻略対象者らしい能力があるわけだしね。


「ちゃんとした格好をしてこういう高級なところで歌いなさいよ。そのほうが才能を認めてもらえるから」


 才能があれば見た目なんか関係ないという人もいる。


 でも、多くの人は見た目で判断する。


 見た目だけで才能を活かす機会を失ってしまわないほうがいい。


「アヤナちゃんは優しいね」

「本当のことよ。才能の無駄遣いはダメ。ハイランドでは享楽的に生きている人も多いけれど、ホルンには合わないわ。無理して合わせる必要なんてない。自分らしくしなさいよ! そのほうが世界で唯一無二の吟遊詩人になれるわ!」


 ホルンの表情が変わった。


「世界で唯一無二の吟遊詩人……」

「かっこいいでしょう?」


 たぶん、これでフラグが立った。


「ああ、でも私を口説く歌はなしで。オルフェ様が好きなの。結婚したいと思って頑張っているのよ!」

「そうなんだ」


 オルフェ様について詳しく聞いてこようとはしない。


 好感度が低くて私にまだまだ興味がない証かも?


「じゃあ、アヤナちゃんとオルフェ様に捧げる曲でも考えようかな?」


 これは……いい感じになりそう!


「素敵! でも、ここはハイランド。クルセード様に捧げる曲を考えるのが正解ね」

「確かに」


 笑顔で楽しむお茶の時間。


 そして、ホルンと別れる。


 この出会いが吉になるか凶になるか。


 どちらであっても楽しみな気分だった。



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