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私の推しは北方の白銀王子  作者: 美雪


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26.吟遊詩人



 ディアマス観光を終え、ジュリアと一緒にハイランドに戻った。


 ジュリアと一緒に過ごす時間が増えたことで、ハイランドで裕福な貴族令嬢がどんな感じなのかがわかった気がする。


 全員がそうだとは言えないけれど、ジュリアは公爵令嬢としての責務みたいなものは一切興味がない。


 親もうるさくない。娘が末っ子のジュリアだけなので甘やかしている。


 兄たちも一緒。妹を可愛がっている。


 気に入った男性とデートしながら良い結婚相手を探せばいいと言われているだけなので、勉強をする気もない。


 魔物討伐ギルドのランクも私のようにコツコツ上げたわけではなく、最高ランクの人と一緒にやりましたという経歴でランクを上げた。


 ようするに、抜け道の方法で最高ランクにできる。


 貴族や金持ちにとって最高ランクというのは威張るための拍付けであることもわかった。


「ジュリアのおかげでハイランド貴族の実情がわかるわ……」


 強さを尊ぶ。


 でも、その強さが本物なのかどうかがわかりにくい。


 お金でなんとかできてしまうことが多いからこそ、金持ちが威張っている。


「私はディアマスのほうがいいかも」


 本当の強さを尊ぶ。


 そして、それを正しく使おうとしている。


 ハイランドはそう思う人が少ないような気がする。


 正しい道よりも抜け道のほうが簡単、利口、それでいいという風潮がある。


 力やお金によって悪が正義になってしまいそうだと感じてしまった。


「さすがに解体ばっかりじゃ……飽きるわ」


 ハイランドに戻った私は魔物討伐ギルドに行ったけれど、相変わらず一人で稼げそうなのは建物の解体依頼だった。


 ジュリアと一緒に依頼を受けることもできなくはないけれど、我儘が発動すると面倒。


 まるでゲームに登場する悪役令嬢ルクレシアの劣化版。


 ディアマスのルクレシアの中身がまともで良かったと心底思っていた。


「適当な人と組んで騙されたら怖いし」


 ハイランドは強者天国。


 騙す方よりも騙された方が悪いという主張がまかり通ってしまうことも多く、弱い者ほど泣き寝入りすることになると聞いた。


 問題を起こしたらクルセード様に借りができてしまうし、アイン様が冷たい表情で睨んで来るのも明らかなので、本当に気をつけないといけない。


「悩むわ……」

「そうだね」


 隣にいる人を見上げると、攻略対象者だった。


 世界のどこかを彷徨っている吟遊詩人ともいう。


「どんな悩み?」


 ここで出会ったのも縁だと思って聞いてみた。


「盾役を探さないといけなくて」

「なんで?」

「あの依頼を受けたいから」


 魔物討伐。


「盾役がいるの?」

「そう。でも、盾役をやりたがる人が減っているから無理かな」


 ハイランドの王都は都市整備のための建築ラッシュ。


 力のある男性の求人が多いため、魔物討伐ギルドに出入りする者で条件に合う者はそっちに流れてしまっている。


 その結果、魔法を唱えるまでの時間を稼ぐような盾役、武器を扱う戦士系の人手不足になっていることを教えてくれた。


「盾役はどんなことをするの?」

「あの魔物は鞭みたいなので攻撃してくる。鞭に捕まると死ぬから盾で防ぐ。その間に魔法を詠唱して倒す」

「なるほど。お兄さんは魔法使い?」

「一応は。でも、楽器を演奏したり歌ったり踊ったりナイフも投げられる吟遊詩人かな」


 知っている。攻略対象者なので。


「酒場で働けばいいのに」

「美人の歌手が来たせいで、他の酒場に行けって追い出された。手持ちが少ないから、ちょっとだけ別のことで稼ごうかなって」

「盾魔法でもいけそう?」

「いける。もしかして、盾魔法を使える?」

「使えるけれど、ちょっとだけ」


 アルード様のようなハイスペックな盾や技能を期待されたら困る。


「お兄さんの前に出しておいてくれればいいかな。女の子のほうが美味しいから狙われる。その間にお兄さんの魔法で倒すって感じでどう?」

「お兄さんの歌を一回聞いてみたいからオッケーにするわ」

「本当に?」


 驚かれた。そりゃそうよね。


 私から見れば攻略対象者だけど、向こうから見れば知り合ったばかりの赤の他人。


「俺はホルン」

「アヤナよ」

「報酬は二人で山分けってことでいいよね?」

「いいわ」


 ホルンと一緒に魔物討伐の依頼を受けることにした。





「あー、いたいた。あの黒いの」

「あれなの?」


 黒い塊からもやもやしたものが出ている。


「近づくと襲うために鞭みたいなものを出してくるから」

「闇魔法にあんなやつなかった?」


 ナハト様が使っている魔法。


「あるある。あんな感じ」

「げっ、盾役より風魔法で切れる人の方がいいのに!」

「それだと逃げてしまうから。やめる?」

「いざとなったら結界で……」


 防御魔法をして、魔法の盾を出して、そろりそろりと黒い塊に近づいてみる。


 すると、黒い鞭が伸びて来た。


「ギャー! やっぱアレだわー!」

「ちょっとだけの我慢だから!」


 黒い鞭が魔法の盾に当たる。


 パシパシ叩いているけれど、それだけ。


 盾を越えて私の方に伸ばせばいいのに、盾ばかり攻撃している。


 頭が悪い? 知能が低い魔物ってこと?


「そいつは一番近いものに攻撃する! 盾より前に出なければ平気だよ! 足は引き気味で! 盾より前に出すと掴まれる!」


 そういうことは先に言ってよね!


「魔法唱えてよ!」

「やっているから」


 小型のハープで曲を弾いている。それが呪文の詠唱と同じなのよね。


「ジェンド」


 ジ・エンドの意味。


 曲が終わると同時に魔法が発動。


 黒い鞭を出していたモヤモヤがなくなった。


 徐々に黒いものが薄れていって、小さな黒い石が残る。


「終わりだよ」


 ホルンが小さな黒い石を拾った。


「それ、魔物よね?」

「元魔物。でも、今は闇の魔石。魔力の歪みを直して魔石に戻したとも言うかな」

「へー」

「闇の魔石は高い。でも、歪みを直すのは難しいから、普通は強制的に魔法で壊す。そのせいで闇の魔石は砕けてしまって価値が一気に下がる」

「そうよね」

「依頼報酬とは別にこの闇の魔石を売った報酬も山分けにしよう。いいよね?」

「それで」


 魔物討伐ギルドに行って報酬と闇の魔石を売ったお金の半分をもらった。


 手間暇を考えると報酬がいい。


 楽に稼げそうな気がした。


「これでしばらくは生活できる。アヤナちゃんのおかげで助かったよ」

「適当に暮らしていそうね」

「まあ、フラフラしているかな」

「一緒にお茶をしにいくわよ。稼いだから奢ってあげるわ!」

「奢ってくれるなら行こうかな」


 ハイランドのことはまだまだ勉強中。


 だけど、ジュリアのおかげで知識が増えている。


 良い機会なので、実践できるかどうかを試すことにした。


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