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私の推しは北方の白銀王子  作者: 美雪


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25/45

25.専用の槍



「びっくりしたわ。王宮ならともかくカフェで遭遇するなんて」

「そうよね。あんなところで会うなんて思わなかったわ」

「婚約者とお忍びデートってことでしょう?」

「じゃない?」

「ディアマスは平和ねえ」

「そうかもね」


 実際は何とも言えない。


 国王と王子間の和解はまだらしいから。


 でも、ヴァリウス様とアルード様のおかげでディアマスに良い変化が起きている。


 婚約者になったルクレシアの評判も良い。


 率先して王都内の魔物を倒しているので、とてもありがたく頼もしい存在だと思われているし、町中でも火魔法が活躍することが証明されたといって火使いたちも喜んでいるらしい。


 さすが悪役令嬢よね。主人公よりも評判が良いなんて!


 まさにルクレシアは良い方に国を傾ける美女だと実感した。


 私も良い方に傾けたいわ……。


 オルフェ様の気持ちも。ノーザンの行く末も。






 翌日も観光。


 やっぱりディアマスは素敵な国。


 ハイランドよりも絶対に住みやすいと実感した。


 夕方、ホテルにルクレシアが来た。


 大きな箱を浮遊魔法で浮かばせながら。


「まさか……もう見つかったの?」

「そうよ! さすが私でしょう?」


 さすが過ぎるわ!


「一人? 護衛なし?」

「当然よ」

「アルード様は何も言わないの?」


 真っ先に心配しそうなのに。


「護衛を務める騎士は大柄でしょう? 常に一緒にいると目立つからお忍びには向いていないのよ」

「あー、そうかもね?」


 わかっちゃった……。


 自分以外の男性がルクレシアと常に一緒しているなんてダメだって思うアルード様の気持ちもね!


「さっさと見せて帰るわ。遅くなるとアルード様が心配するから」

「そうよね」


 私が泊まっている部屋に通して、そこで持って来たものを見ることにした。


「箱が長いわね?」

「そうなのよ。でも、アルード様がこういうのだろうって。見せてみるよう言われたの」


 ルクレシアが持って来た長細い箱を開けた瞬間、私は目を見開いた。


「これがいいわ! 絶対!」

「そうなの?」


 内緒話をするために結界を張った。


「ゲームで見たものだわ! オルフェ様の専用の槍よ!」

「そうなのね」

「でも、長さが違う気がするのよね」

「変わるわよ。魔法で短くするの。ここよ」


 槍の柄の途中に魔法陣があった。


「魔力の調整で槍が伸縮するようになっているわ」

「もっと短くできるの?」

「それはできないわ。今が一番短い状態よ。それを伸ばして二倍の長さにできるだけ」

「ゲームではもっと短いはずなのに。ところで、これってアルード様が見せてみろと言ったのよね? アルード様が所有している槍なの?」

「そうとも言えるし、違うとも言えるわね。私とアルード様の婚約祝いとしてオルフェ様がくれたものなのよ。だから、半分は私の所有物かもね?」


 オルフェ様専用の槍を婚約祝いとして贈っちゃうなんて! 絶対におかしいわ!


 ゲームの知識があるからこそ、現実との違いに驚いてしまった。


「ノーザンで作られた最高級の槍みたいね。しかも、魔力で伸縮するなんて珍しいでしょう?」

「そうね」

「でも、使わないのよ。ヴァリウス様もアルード様も剣だから」


 確かに。


「これは長さが調整できる槍というだけで、他には何の機能もないの。むしろ、長さを調整する魔法陣があるせいで、他の魔法陣や術式を刻むことができないらしいわ」

「あー、何かを追加するには相当調整しないとダメって感じなのね」

「だから、私が他の術式や魔法陣とつながるかどうかを試す練習用にしていいって。うまくいったらそれをアヤナに貸して、アヤナがオルフェ様に貸すのはどうかっていう案が出ているのよ」

「なるほどね」

「槍の貸し借りでオルフェ様との縁ができるでしょう? ディアマスとノーザンの縁にもなるわ」


 あっ!!!


「ぜひ、それで!」

「ヒントを頂戴。ゲームに登場する槍の性能とか見た目とか。何でもいいから」

「今わかるだけの情報だけど」


 私の説明をルクレシアが手帳に書き留める。


「……難しそうだわ」

「そこをなんとか! 悪役令嬢だからできるわよ!」

「そうね! ゲームに登場していた武器なら同じようにできと思うわ。改良する方向性をわかっているのは助かるしね」

「そうそう! じゃあ、よろしく!」

「アヤナの知っている通りの槍を作ったら、私は立派な魔槍職人と言えるかもしれないわね?」

「そうかもね?」


 二人で笑い合う。


 やっぱり主人公と悪役令嬢のペアは最高よ!


 ゲームとは違う状況になっても、協力すればいい。


 必ず乗り越えられるし、ハッピーエンドに辿り着けるはずだと思った。


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