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私の推しは北方の白銀王子  作者: 美雪


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24.カフェでの遭遇



「戻ったの? 連絡しなさいよ!」

「違うのよ。観光の手伝いをしていて」


 ハイランドで知り合った女性の王都観光の案内人をしていることを説明した。


「魔物討伐ギルドの依頼なの?」

「個人の依頼よ」

「アヤナ、紹介してくれないの?」


 ジュリアに睨まれた。


「ジュリア・メルファイア公爵令嬢よ 父親は大臣だって」

「ルクレシア・コランダムよ。婚約者とお忍びで外出中なの」


 ルクレシアはそう言ったあと、恥ずかしそうな表情になった。


「婚約者として紹介したのは初めてかも……」

「恥ずかしがることはない。私たちは婚約者同士だ」


 アルード様は満面の笑み。


 でしょうね! ご馳走様!


「ルクレシアの婚約者が誰なのかは知っているわよね? お忍び中だから名前は言わないで」

「お会いできて光栄です。お忍びの外出中のところ、邪魔をしてしまい申し訳ありません」

「いいのよ。座って」


 絶対にアルード様は邪魔だと思っているはず。


 でも、ルクレシアが座るよう言ったので座るしかない。


 断ったら無礼だってなっちゃうし。


「飲み物を頼んでもいい?」

「もちろんよ。でも、自分で出して。お忍び中だから奢らないわ」

「了解」


 お茶を頼み、王都観光していたことを話す。


「ついでに魔法武器の槍が欲しくて探しているのよ。珍しいものだから全然なくて……もし見つけたら値段を教えてくれない?」

「どうして槍なの? アヤナは杖でしょう?」


 自分用ではなくてオルフェ様用だからとは言いにくい。


 お忍び中だし、アルード様もいるし。


「オルフェ様に贈るつもり?」


 ジュリア! 余計なことを!


「オルフェ様は槍を使うの?」

「詳しく話せ」


 王子様命令よね?


 なので、話す。


 いつもオルフェ様は魔法で全てをこなす。武器は使わない。


 槍が必要な時は、魔力で氷の槍を作り出して使っている。


 そのほうが便利なのはわかるけれど、魔力が減ってしまう。


 魔力を節約できるように、氷竜を攻撃するのに使える槍を持っていた方がいいと思ったことを話した。


「魔力で伸縮する槍が欲しいのよね」


 ゲームでオルフェ様が使っている専用の武器を探したい。


「伸縮する槍?」

「普段は短いの。でも、魔力を込めると長くなる槍よ」

「そんなものがあるの?」

「わからないからルクレシアに探してほしくて……特注すればできるかどうかも知りたいわ」

「普通の槍ではダメなの?」

「携帯しにくいでしょう? 兵士なら常に長い槍を持っていてもおかしくないけれど、王子なのよ? 腰に下げられる長さがいいわ。でも、それだと氷竜に対して短いから、魔力で長くできる槍がないかなって」

「なるほどね」

「オルフェ様の役に立つようなものを贈りたいの! お願い!」

「探して見つけた場合、強化したほうがいいわよね?」


 できれば。


 でも、アルード様の前なので言えない。


「とりあえず、伸縮可能な魔法の槍を探しているだけだから。贈ることができたとしても使ってもらえないかもしれないし、使い捨てになる可能性だってあるわ」


 槍を刺した氷竜が飛んでいっちゃうと回収できないかもしれないので。


「アヤナからの贈り物を使い捨てにするなんて私が許さないわ! 絶対にいいものにして、ずっと使いたいって思わせないと!」


 不味い。逆にルクレシアがやる気を出してしまった。


「ルクレシアの気持ちは嬉しいけれど、単純に便利そうな武器を探してほしいだけなのよ。高いものだったら贈れないわ。ハイランドでお金を稼がないとだし」

「どのぐらいあるの?」


 ざっとだけど金額を教えた。


「すごいじゃない!」

「解体作業で稼いだのよ」


 ジュリアを治療して大金をもらったことは本人のために言わない。


 コツコツ。黙々。一人で頑張ったおかげで貯金ができたのは事実だしね。


「欲しい槍の値段がわかれば、いくらお金を貯めればいいかの目標になるから」

「調べてみるわ。でも、完全な特注品だとわからないかも。職人次第というか」

「そうよね。だから、探してもなかなか見つからないならクレシアに相談しようと思っていたのよ」

「わかったわ。ちなみに刺突強化でいいわよね?」


 強化のほうじゃなくて探すほうの話なのに!


 アルード様の嫉妬心を上げたくないけれど、すでに言ってしまったので仕方がない。


「まあ、一般的にはそうだと……あ!」


 もう一つ思い出した。


「イアンが剣の強化を頼みたがっていたわ。でも、伝えるだけ。本人に会わないと無理だし」

「斬撃アップ?」

「そう。イアンの剣は風の魔法剣用だったわ。なんとなくできそうな感じではあったけれど、ハイランドの魔法武器だからわからないわ」

「そう」

「ルクレシアに頼り過ぎだ」


 アルード様は不機嫌。


 そうよねえ。


「魔法武器を探すのに特殊なコネがいるというのはわかるが、魔法武器職人であれば他にも多くいる」

「わかります。でも、ルクレシア製が最高なので……」

「最高? さすがにそれは褒め過ぎよ。職人としては駆け出しだわ」

「確かに職人としては駆け出しね。でも、ルクレシアが刻んでくれたら友人が応援してくれているって思えるわ。そういう意味で最高なのよ。アルード様だって愛しい妻が魔法文字を刻んでくれたら嬉しいですよね?」

「そうだな」


 アルード様は嬉しがっている。妻ってところが。


「魔法剣にできたほうがいいの? 氷よね?」

「氷。でも、魔法槍だから魔法剣とは違うわよ」

「もしかして、術式や紋章が違うかも? 勉強しないとね!」


 ルクレシアは顔を輝かせた。


 相変わらず勉強家。暇つぶしになって丁度良いかもしれない。


「そろそろ退散するわ。じゃあね!」


 お茶を飲んで話したので十分と判断。


 ジュリアを連れて退散した。


 良かった……ジュリアが問題を起こさなくて。


 店を出て安堵の息をついた。


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