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私の推しは北方の白銀王子  作者: 美雪


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23.ディアマス観光



 ノーザンでの滞在が終わり、私とジュリアはハイランドに戻って来た。


「ありがとう。アヤナ」


 ジュリアはハイランド以外の国を見ることができて刺激を受けたようだった。


「いろいろな国があるってことがわかっていたけれど、実際に行くと違うわね」

「そうでしょう? だから、私もハイランドに来たのよ!」

「今度はディアマスに行きましょうよ! 案内して!」


 えー、面倒……。


 我儘令嬢に利用されている気がする。


「イアンに頼みなさいよ」

「無理よ。イアンは帰りたくなさそうだし」


 イアンの状況はとても複雑。


 好きな女性は第二王子の婚約者。名門貴族の令嬢であるエリザベートとの縁談は受けたくないし、双子の弟のレアンはエリザベートのことが好きで交際中。


「仕方がないわね」


 友人たちのためにも私がジュリアのお守りをするしかないと思った。





 ディアマス旅行の初日は移動のみ。


 ジュリアにはホテルでゆっくり休むように伝え、私はコランダム公爵家に向かった。


「現在、知り合いの観光案内人として一時帰国中です」


 やっぱりちゃんと挨拶しないとダメだと思って、コランダム公爵夫妻に説明した。


 用意しておいたハイランド土産も渡す。


 明日の昼食に知り合いを連れてきなさいと言われたけれど、知り合ったばかりでコランダム公爵夫妻に紹介するほど親しいわけでもないと言って断った。





 翌日は早速王都観光。


 当たり前だけど、王宮から。


 観光目的では中に入ることができないと言うと、ジュリアはがっかりした。


「中も見たいわ! 大親友が王子の婚約者として住んでいるのよね? 面会を申し込みなさいよ!」


 我儘で押しの強いジュリアはいかにもハイランド貴族の令嬢らしい。


 でも、ここはディアマス。


 ハイランドらしさもハイランドにおける強さも通用しない。


「無理言わないでよ。事前に何の連絡もしていないのに会えるわけがないでしょう? いずれ夫になるアルード様に無礼だって思われたらどうするのよ! 王宮に出禁になったら困るわ!」


 正論で断った。


「代わりに別の所を見せてあげるから!」

「普通のところじゃ満足できないわ!」

「わかっているわよ」


 騎士団の方へ行った。


 キティがいたので、早速声をかける。


「キティ! 久しぶりね!」

「アヤナ様! ハイランドに行ったのでは?」

「友人がディアマスの観光をしたいっていうから案内中。騎士団も観光名所の一つだから」

「そうですね!」

「見た目がいい新入りが増えていない?」

「アヤナ様がそんなことを言うなんて!」

「友人のためよ。見た目重視の嗜好だから」

「カーライト様はダメです。ゼイスレード様にしてください」

「あの二人、いつもセットでいるじゃない」

「ものすごく仲が良くなる一方ですね」


 噂をすればやってきた。


 イケメンセットが訓練場に。


「ジュリア、ここはディアマスだってことを忘れないで。素敵な男性がいても突然口説いてはダメよ? マナー違反、はしたない、最低の女性だと思われて嫌われるだけだから!」

「またその話? 聞き飽きたわ!」

「物凄く大事なことだからよ! 問題が起きても父親の力で揉み消せないから気を付けて!」

「わかっているわよ! というか、そんな風に思っていたの?」


 思うに決まっている。これまでの言動からも、家族の様子からも。


「現地案内人としては旅行中の安全を確保したいのよ! じゃあ、呼ぶわね。ネイサン! カーライト様!」

「アヤナだ」

「珍しいな」


 浮遊魔法で浮いていたのですぐに見つけてくれた。


 私の声が大きいからでもあるけれど。


「ハイランドで知り合ったジュリアよ。観光案内中」

「こんにちは。確かに素敵な男性ね。デートに誘えないのが残念だわ」


 そう言ってさりげなくデートに誘えるかどうかの反応を見るのがずるい。


「我々は忙しい。アヤナと観光を楽しんでほしい」

「ディアマスには素晴らしい所が多くある」


 カーライト様もネイサンも名乗らない。素っ気ない。


 それははっきりとした一線を引いている証拠。


 ジュリアは気に入らないと感じたらしく、人相が悪くなった。


「アヤナ、私に引き合わせるなら社交辞令ぐらいは言える人にしてくれない? 私の身分を知っているでしょう?」

「あー、二度と会わないかもしれないけれど、一応はちゃんと紹介しておくわ。ジュリア・メルファイアよ。ハイランドの公爵令嬢で父親は大臣なの。こっちはカーライト・グリューワルド子爵。騎士団長の息子よ。それからネイサン・ゼイスレード卿。ゼイスレード侯爵の孫ね」

「平民だから紹介しないのかと思ったわ」

「この二人は女性にモテモテで困っているのよ。だから、女性に対しては警戒しちゃうのよね。社交辞令で誤解されたくもないから」

「諸事情があるとはいえ、名乗らずに失礼した。メルファイア公爵令嬢に挨拶を」

「同じく。あらためてメルファイア公爵令嬢に挨拶する」


 仕切り直し。


「ジュリアには好きな人がハイランドにいるのよ。絶賛片想い中だけど」

「そんなこと言わないでよ!」

「そのほうがカーライト様もネイサンも安心するから。そうよね?」

「安心した」

「同じく」

「ジュリアはイアンの知り合いよ。それで私も知り合ったのよ」

「二人もイアンの知り合いなの?」

「魔法学院のクラスメイト。カーライト様は幼少の頃からイアンと知り合いよ」

「そうなのね」

「ちょっとだけ訓練の様子を見ていくわ。お昼は有名なお店で食べたいから早く行くつもりなのよ。来たのに声をかけないのもどうかって思っただけだから」

「そうか」

「今日はあまり訓練しない。疲れている」


 二人は昨日の任務の関係で疲れていることがわかった。


「了解。他の騎士の様子をちょっとだけ見るだけにするわ」


 二人と別れ、ジュリアに騎士団や騎士見習いについて簡単に解説した。


「ハイランドとは違う感じね? 雰囲気が違うわ」

「そうなの?」

「そうよ。野性味がなくて上品な感じ。容姿のレベルが高くて気に入ったわ!」


 ジュリアらしい感想。


 ともあれ気分が良さそうならいい。


 そのあとは王都内にある有名な観光場所に案内した。


「ずっと騎士団で容姿をチェックしていたほうが楽しかったかも」


 観光よりイケメンなのね。


「一日中訓練しているわけじゃないから。訓練する人も交代するしね。常に素敵な男性で溢れているとは限らないわよ?」

「それはわかるわ。でも、ディアマスの王都は工事中のところが多そうだから。仕方がないことだけど、美観を楽しみにくいでしょう? 残念だと思って」

「都市計画で整備中なのよね。特殊な広場を作っているのよ」


 害獣と害虫駆除をするための広場を作っていることを説明した。


「ディアマスの王都を害獣と害虫から守るなんて……羨ましいわ!」

「そうでしょう?」


 雑多なハイランドにとって、整然とした美観や清潔感は素晴らしいと思われている。


「さすが光の国だわ! 安全面と衛生面でも光輝くことを目指しているのね!」


 そうかもね?


「ハイランドも同じようなことを始めたわよ。広場を作るために強制移動させているでしょう?」

「そうなの?」

「その影響で私が解体作業の依頼をしているのよ!」

「ああ、そんな感じのことを言っていたわね」


 ジュリアはお堅い話や真面目な話には関心がない。


 自分の好きなこと、楽しいこと、面白いことだけに興味を示す。


 でも、それがハイランドのお金持ちの特徴であり常識。普通。


 午後は穴場のカフェに連れて行った。


「すごく素敵な人がいるわ!」


ジュリアが目を輝かせた。


「だけど、女性と一緒ね。どう見ても恋人同士だわ。ハイランドなら絶対に声をかけるけれど、アヤナに禁止されているし……一回だけならいい?」

「絶対にダメ! ここはディアマスよ!」


 恋人がいても遠慮なく声をかけて口説くのがハイランド式。


 それをディアマスで実行されたらトラブルになるのは目に見えている。 


「あまりにも素敵で目を離しにくいわ……高貴なカリスマを感じるわね!」

「どこ?」

「あそこ」


 ギョッとした。


「美男美女でお似合いよね。そういうのを見るのも好きよ。二人がどんな会話をしているか知りたくなるし、喧嘩するのを期待したりとかね?」


 ジュリアがにやりとする。


 喧嘩したらディアマスの危機よ!


「あの二人は夫婦同然だから放置で!」

「夫婦同然? 知っている人なの?」

「まあね」


 別のカフェにすればよかったと思っていると、アルード様がこっちを見た。


 ヤバい!


「ジュリア、やっぱり他のカフェにするわよ! じろじろ見ているとあとで私が怒られちゃうわ!」

「アヤナ!」


 ルクレシアに気づかれた。


 ジュリアが問題を起こしたらどうしよう……。


 なるようになると思うしかなかった。


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