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私の推しは北方の白銀王子  作者: 美雪


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2.円錐結界



「珍しい」


 いつもは質素な夕食なのに、デザートがついていた。


「何かあったの?」

「王城の催しに出すデザートの試食ですって」


 王城で住み込みをしている召使いが教えてくれた。


「プチサイズだけど」

「プチプチサイズよ!」


 アイスクリームが盛られた場所にコーンが乗っている。


 逆さ状態で。


「なんだか手に持っていたアイスクリームを落として、べちゃっとなっちゃった感じじゃない?」

「そうねえ」

「でも、違うのよ」

「氷竜を倒す魔法をイメージしたみたい」

「ああ、コーンがね!」

「地面から生えている氷の棘のつもりなのね!」

「そう。アイスクリームを尖った感じで盛らないで、コーンにしたわけよ」

「溶けて崩れちゃわないようにってことよね」

「解説されればわかるけれど、そうじゃないとわからないわ!」

「そうよね!」


 小さなコーンを手に取って持ち上げた。


 中は空洞。


「アイスクリームが詰まっていないじゃない!」


 召使いたちが笑った。


「ないわよ!」

「経費節約」

「本番はわからないけれどね」

「見せかけだけだって」

「むしろ、中に詰めるなら土台のアイスクリームはいらないかも?」

「そうねえ」

「アイスクリームを詰めたコーンだけで十分じゃない?」


 皆の意見を聞いていると、何かがひっかかった。


「アヤナ、どうしたの?」

「ちょっと気になって」


 コーン。空洞。


「アイスが入っていないのがそんなに残念なの?」

「わかるけど仕方がないわよ」

「詰めなくていいんだから」

「そうそう。形だけでいいのよ」

「外側だけで十分よ」


 そうよ! 外側、形だけで十分だわ!


 明日、試さなければならないことができた。





 アルバイトを休み、王城にある魔法訓練場で練習をすることにした。


 それはコーンのような円錐結界。


 ルクレシアは氷魔法や土魔法で氷竜を下から突き刺す方法を考えた。


 でも、同じような形の結界でもいいのではないかと思いついた。


 私が作る結界の強度はかなりある。円錐結界は難しいけれどできるし、素早く張る練習もしたことがある。


 なので、サイズ調整をして急激に大きくする練習をすればいい。


「とりあえずは自分が入るサイズにして、一気に大きくする!」


 ちょっとだけ大きくなった。


 サイズ的には全然足りない。


 変化の勢いで固い対象物に突き刺すのも難しい。


「結界は完成した状態でないと強度がないのよね……」


 小さい結界を一旦完成させて強度を確保したほうがいい。


 それから一気に大きくして突き刺す感じにしたい。


 頭ではわかる。


 でも、実際にそれをやろうとすると想像以上に難しい。


「成功すれば大発見なのに!」


 光魔法の使い手でこれを試そうと思う人はまずもっていないだろうけれど、氷魔法の使い手が足止めさえしてくれれば私でも氷竜を倒せるようになる。


 知力と勇気がある女性としてオルフェ様が評価してくれるかもしれない。


「オルフェ様のために!」


 一心不乱に練習していると、結界を叩かれた。


 誰だろうと思って振り向くと、オルフェ様がいた。


「オルフェ様!!!」


 最速で結界を消した。


「アヤナ、何をしているのですか?」


 オルフェ様が優しく微笑む。


 その美しさと魅力にくらくらして倒れてしまいそうになってしまった。


 そんな私をオルフェ様が抱き留めてくれた。


 もう奇跡! 最高! 大幸運!


「大丈夫ですか? 無理は禁物です」

「だ、だい……大丈夫です!」


 絶対に私の顔は真っ赤になっている。


 でも、どうしようもない。


 だって大好きなオルフェ様が私を抱き留めてくれるなんて!


「具合が悪いながら練習はここまでにしなさい」

「ほ、本当に大丈夫です! びっくりすぎてバランスを失っただけです!」


 オルフェ様と会話をするために深呼吸を繰り返し、結界で氷竜を突き刺せないかどうかを研究中だと話した。


「結界で突き刺すとは……よく思いつきましたね?」

「アルード様から結界も工夫すれば攻撃に使えると聞いたので」

「わからなくもありません。ですが、氷竜の近くに行くのは危険です」

「そうですね。でも、私はある程度離れたところからも結界を張ることができます!」


 ほとんどの人は自分を守るために結界を張る。自分がいない場所には結界を張れない。


 でも、私は自分がいない場所にも結界を張れる。


 魔法学院の対人戦で離れた場所から拠点に結界を素早く張る方法を練習した。


 より遠い場所から狙った位置に素早く結界を張る練習もしてきただけに、氷竜の側に円錐形の結界を張ること自体は普通にできると思った。


「問題はサイズ調整の速度と結界の強度で氷竜を突き刺せるかどうかです。頭の中ではできそうな気がするのですが、実際に試してみないとわからないというか」


 練習はできる。


 でも、この方法が氷竜に通用するかどうかは試してみないことにはわからない。


「そうですか。では、連れて行きます」

「え?」

「午後から氷竜討伐に行くので、アヤナも一緒に来なさい」

「はい!!!」


 大チャンスが訪れた。





「やってみなさい」


 オルフェ様が氷竜を足止めしてくれた。


 ひさびさに見る氷竜は強そうというか、サイズが大きい!


「早く。私の魔力が減り続けています」

「はい!」


 氷竜が暴れているので足止めの氷を修復するためにオルフェ様の魔力が減ってしまう。


 わかっているけれど、氷竜の心臓がある位置の真下のスペースが少なくてとても小さな結界しか作れない。


 仕方がないので、もっと前の部分に作ることにした。


 それを突き上げるように大きくしてみる。


「ズレちゃいました……」


 首に刺してしまった。


 でも、まあまあ刺さっているという意味では成功。


 氷竜は痛がっていた。


「あのまま放置すれば倒せそうな気もしますが、時間がかかるのは明白です」

「そうですね」

「私の氷が全てなくなっても平気ですか?」

「わかりません」

「試してみましょう」


 オルフェ様が足と翼の氷修復をやめた。


 さすがにブレスは怖いので口を閉じるよう凍らせている。


 氷竜は暴れるだけで飛ばない。


「中途半端な感じなので、飛んだら首から結界の先が抜けてしまいそうです」


 そう言った途端、氷竜が翼を動かし始めた。


「あーーー! 飛んでしまいそうです!」


 氷竜が飛んだ。


 でも、体が少し浮くだけで、首から結界の先を抜くことができずに落ちてしまった。


 暴れるだけの時間が過ぎていく。


 最終的にはそのまま力尽きて動かなくなった。


「不可能ではありませんが、効率が悪いです」


 足止めの氷をやめても、結界を張り続けている間は魔力を消費してしまう。


 短時間で氷竜を倒せないと、私の魔力負担が増えていくばかりだった。


「そうですね。申し訳ありません」

「もっと下のほう、心臓の下になる辺りから出せないのですか?」


 早く絶命させたいのはわかる。そのほうが魔力負担も少ない。


 頭ではわかるけれど技能次第だし、状況次第でもある。


「地上にいる時は体が地面に近いので、スペースがほとんどありません。大きな結界を作れません」

「非常に小さい結界を作り、それから大きくするのは? 突き刺してから一気に大きくする方法もあります」

「わかります。でも、結界を一気に大きくするほど大変です。障害物に突き刺さったまま大きくするのは極めて難しいです。普通は壊れてしまうのですが、それを魔力消費と引き換えにしてなんとか壊れないようにしないといけなくて……」

「やはり氷魔法や土魔法のほうがいいですね」

「そうですね」


 認めざるを得ない。


 ルクレシアの方法に負けた。


 主人公が悪役令嬢に負けたと思うと悔しい!


「ですが、あの結界は別のことに活用できそうです。氷竜に襲われても、あのような結界を張れば上から襲おうとしないかもしれません。王城の尖塔と同じ。突き刺さってしまうので上から攻撃するのをためらいます」

「そうですね!」


 自分から結界に突き刺さりに来る氷竜はいないはず。たぶん。


「咄嗟に身を守るための円錐結界を張るのは有効かもしれません」

「そうかもしれません!」

「これからも工夫して技能を磨きなさい。アヤナならできます」

「はい!」


 そのあとは防御魔法や回復魔法をかける役目を担当した。


 オルフェ様は一人で氷竜を倒せるので行ってしまったけれど、一緒の討伐に参加できたのはとても嬉しい。


 これからも自分のできそうなことで頑張っていけばいいだけよ!


 気合を入れ直した。



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