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私の推しは北方の白銀王子  作者: 美雪


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19.氷竜を倒しに



 翌朝。


 オルフェ様たちと飛行馬車に乗り、氷竜の生息地に向かう。


 私は慣れているけれど、ジュリアがちょっと心配だった。


「大丈夫?」

「大丈夫よ。飛竜討伐や火竜討伐にも参加したことがあるわ」


 さすが最高ランク。


「頼もしい女性のようです。魔法の属性は?」

「火と風です。若手では実力があるほうだと自負しております」

「そうですか。状況次第ですが、魔法を撃って楽しむのもいいかもしれません。足止めするので、的当てをするのはどうですか?」

「ぜひ、やってみたいです。私の魔法がどの程度効くのか知りたいので」

「上級魔法は使えますか?」

「もちろんです。竜の討伐依頼を受けるのであれば当然です」


 実は結構すごい女性と知り合ったのかもしれない。


「そうですか」


 オルフェ様がそう言って私を見る。


「アヤナのおかげで素晴らしい女性と出会えたようです」


 嫌な予感……。


 ジュリアの能力はなんとなくルクレシアっぽい。


 オルフェ様がジュリアを気に入るのではないかと心配になった。





 現地に着くと、私は防御魔法役を申し出た。


 すぐに氷竜が見つかる。


 氷魔法で釣り、氷魔法で足止め。氷魔法で倒す方法の練習だった。


「ここの生息地は小規模なので、多くの氷竜が一度に来る可能性は低いでしょう。私たちは個別で的当てを楽しみましょうか。アヤナ、釣って来てください」

「……三匹ぐらい来ちゃっても平気ですか?」


 初めて囮役をした時はそうだった。


 一頭でいいのに三頭も来てしまい、ルクレシアたちが頑張って倒してくれた。


「構いません」

「じゃあ、行ってきます!」


 ジュリアに浮遊魔法と移動魔法をかけてもらい、氷竜を釣った。


 二頭来ちゃった……。


 でも、すぐにオルフェ様が両方とも足止めした。


「どうぞ」


 ジュリアが上級魔法を発動した。


 広範囲で。


 同時に両方の氷竜にダメージを与えるという意味ではいい。


 でも、一回で倒せるような魔物じゃない。


 足止め用の氷が溶けてしまったせいで、全部やり直しになってしまう。


 オルフェ様がすぐに片方の口を氷漬けにしたけれど、もう片方の口が光った。


「ダメ!」


 最速で結界を張り、ブレスをしそうな氷竜を閉じ込めた。


 もう一頭はオルフェ様が完全に足止めをしてくれている。


 対応が早い! やっぱりすごい!


「言い忘れていました。必ず一頭ずつ狙って倒します。もう一頭に魔法が当たらないように注意しなくてはいけません」

「そうなのね」

「ジュリア、氷竜はダメージを受けたらブレスをするわ!」

「アヤナ、結界が破られたわよ」

「ぎゃああ!」


 すぐにまた結界を張った。


 氷竜に何度も体当たりされると、壊れてしまう強度だとわかった。


「アヤナ、結界を張られると口を塞げません」

「そうですけれど、ブレスが」


 体当たりでは壊しにくいと思ったのか、ブレスで攻撃してきた。


 結界が壊れる。


 壊れた瞬間に合わせてオルフェ様が氷魔法をかけようとするけれど、すぐにブレスの動作。


 足止めをしていないので、また結界に閉じ込めた。


「結界を張るのはいいのですが、口を凍らせることも足止めすることもできません」

「すみません。でも、氷竜が飛んでしまうと足止めも結界も難しいと思って」


 地上にいるうちであればオルフェ様でも私でもなんとかしやすい。


 だけど、飛んでしまうと極めて厄介。


「そうですね。よくない状況です。アヤナ、身体強化をください」

「はい!」


 オルフェ様は護符を取り出すと使った。


「あの二体は私のほうで片付けます。一体目を倒したらすぐに結界を消してください」


 オルフェ様が走り出す。


 その手に持つのは氷で作った槍。


 氷竜の心臓を貫くには長さが必要なので、ノーザンでは昔から槍が使われている。


 オルフェ様は足止めした氷竜の足元に行くと、氷で作った槍を深々と突き刺す。


 絶叫と共に氷竜が倒れた。


「消します!」


 私が結界を消すと、オルフェ様が全く足止めしていない氷竜に近づいていく。


 氷竜の口元だけでなく、大きな翼が付け根からみるみる凍っていくのが見えた。


 ブレスを封じながら飛べなくしている!


 オルフェ様が新しく作った氷の槍で氷竜を突き刺した。


 ブレス対策として盾魔法で援護しようと思ったけれど、距離感を把握する前にオルフェ様が倒してしまった。


「あっけないわね?」

「オルフェ様がすごいからに決まっているでしょう? 普通の人にはできないわ!」


 氷竜一体につき三十人近くの氷使いで足止めすることを教えた。


「六十人で足止めするのをオルフェ様は一人でしたのよ」

「そう考えるとすごいわね」

「たぶん氷の修復で魔力がものすごく減ったから氷で作った槍を使ったのよ」


 オルフェ様は基本的に氷の魔法しか使わない。


 でも、本気を出すというか、厳しい状況だと感じた時のみ氷で作った槍を使う。


「修復ってどういうこと?」

「氷竜が暴れるほど足止め用の氷が崩れてしまうわ。だから、割れたり溶けたり欠けたところを修復するのよ。一カ所だけでなく、口、翼、足の三カ所をね。それが二体だから六カ所を同時に修復管理しているわけ」

「すごいの?」

「六十人分だって言っているでしょうが!」

「そうだったわ。確かにそれだと魔力の減りがすごいわね」


 戻って来たオルフェ様に回復魔法をかけた。


「お疲れ様です」

「急激に魔力を消耗してしまいました」


 オルフェ様は疲れた顔をしていた。


「的当てをさせてあげたかったのですが、難しくなってしまいました。今日は訓練生が多いので無理はできません。訓練のほうを見学してください」

「わかりました!」

「つまらないわ」


 ジュリアは不満顔。


「一回しか撃てないなんて! 先に説明してくれればよかったのに!」

「そうですね」


 オルフェ様が困ったように微笑む。


「少しだけ待ってくれますか? 釣り役を呼んできます」


 私が釣ると複数の氷竜が来てしまうかもしれないので、別の者を呼びに行くということ。


「オルフェ様! 無理をされなくても大丈夫です。ジュリアは観光というか遊びですから!」

「あら? 私は本気よ? これでもハイランドの魔物討伐ランクは最高なのよ?」

「でも、魔力が減ってしまっている時に無理をしたらオルフェ様が大変だわ!」

「的当てを提案したのはオルフェ様でしょう? 一回だけなんて少なすぎるわ!」

「我儘を言わないで!」

「違うわ! 有言実行を求めているだけでしょう? ハイランドでは常識よ!」


 ここはノーザン。ハイランドの常識が通用する場所じゃない。


 状況だって刻々と変わっているし、危険度だって上がっている。


 でも、ジュリアは気にしない。


 それがいかにもハイランド人らしかった。


「待っていてください」


 オルフェ様が騎士を呼びに行った。


 王子の名誉はノーザンの名誉。守らなくてはならない。


 オルフェ様は有言実行をするつもりだと思った。


 役に立ちたくて来たのに……。


 むしろ、オルフェ様の足を引っ張ってしまっているような気がした。


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