18.ノーザン観光
私がノーザンの現地案内をする代わり、旅行費用は全部ジュリアが出してくれることになった。
飛行馬車も手配してくれたので嬉しい。
「ジュリアがオルフェ様に魅了されたら困るわ」
「大丈夫よ。ハイランドに来た時に見たことがあるわ。とても綺麗な人よね」
「そうなのよ! 聖人とか神官みたいって思わない?」
「そのイメージは見た目だけの印象よね? 火属性の女性を積極的に口説いていたわよ」
オルフェ様は各国に行き、女性を口説くと思われている。
それは氷竜討伐の協力者がほしいからであり、観光客や留学者を増やしたくてノーザンに誘うから。
にこやかな笑顔を浮かべるオルフェ様に魅了された女性は特別な好意を期待する。
ようするに恋とか愛とか。
でも、オルフェ様は社交辞令、外交辞令、ノーザンを紹介したくて話しているだけ。
女性ばかり誘うと思われているのは女性たちが寄って来るからであって、オルフェ様は男性にも同じように話しかけようと努めている。
「王子としてノーザンの素晴らしさを話すのは当然よ! 女性が勝手に恋愛的な意味で口説かれたと勘違いするだけだから!」
「そうなの?」
「そうよ! ノーザンに来たらどうかって言っただけで、特別な感情があるなんて思う方がおかしいわ! デートや結婚をするためじゃないの! 観光のために決まっているじゃない! 留学だっていいし、魔物討伐参加も喜んで参加してくれってなるわよ!」
オルフェ様がプロポーズしたのはルクレシアだけ。
主人公のライバルはやっぱり悪役令嬢。
ゲームではなくても、この世界にはゲームの内容に合わせたような補正があると感じるしかない。
でも、ルクレシアはアルード様を好きになって婚約した。
本当に本当に良かったわ!
「ここが王城よ!」
観光の目玉中の目玉。
ノーザンに来てここを見に来ない人はいないと思う。
「まあまあね」
「ハイランドみたいな豪快さや派手な装飾は一切ないけれど、真っ白だから綺麗でしょう?」
「そうね」
「ノーザンは白い建物が多いわ。それは空中から見て氷竜に見つかりにくくするためよ。屋根が斜面になっているのは雪を落とすため。尖塔が多いのは、氷竜が嫌がるようにするためね」
「魔物対策をしているからこその建物なのね」
「そういうこと!」
「王城の中って入れるの? 私もアヤナも貴族よね?」
「他国人なのよ? 観光目的で来ているだけなら無理よ。近くで浮遊魔法を使っていると警備兵に注意されるわ。離れたところから浮遊魔法を使って城壁内を見るのは平気」
「詳しいわね」
「騎士団の応援なら別の出入り口から敷地内に入れるわ。一般人でも入れる訓練施設があって、練習しているところを見ることができるのよ」
ジュリアと騎士団に行ってみた。
オルフェ様が魔法指導をしていた。
「オルフェ様がいるわ!」
奇跡!!!
「ジュリア、浮遊魔法を頂戴!」
「わかったわ」
浮き上がると大きく息を吸った。
「オルフェ様!!! アヤナです!!! ノーザンに来ました!!!」
思いっきり叫んだ。
すると、オルフェ様が振り向いた。
軽く手を振ってくれたので、私もぶんぶん手を振る。
気づいてくれた……それだけでもう幸せ!!!
うるうるしていると、ジュリアが隣で呆れていた。
「知り合いなの?」
「前にオルフェ様預かりで留学していたから」
「そうなのね」
「でも、今はもうダメ。私の大親友の婚約者の知り合いがオルフェ様だから」
「間接的なつながりなのね」
「そうなのよ。アルード様の口利きで特別に留学できていたけれど、私のほうから帰ることにしたから」
「どうして?」
「ここにいても役に立てないから。ディアマスやハイランドで修行しようと思って」
「それで魔物討伐ギルドで解体作業をしていたのね」
「あれはお金稼ぎよ」
杖で殴りまくるというフラグを回収するためでもある。
「本当は魔物討伐とかもしたいけれど、一人だと受けられない依頼もあるし、ランク条件もあるから」
「私と一緒に受ければいいわよ」
「ジュリアのランクは高いの?」
「最高ランクよ」
「えっ? 本当に?」
「私を誰だと思っているの? ジュリア・メルファイアよ!」
この言い方、ゲームに登場する悪役令嬢っぽい。
「でも、素材取りはダメね。全部燃やしてしまうから」
やっぱり悪役令嬢のルクレシアっぽいと思った。
そのあと、騎士団の人が来てお茶に誘われた。
オルフェ様が会いたがっていると言われて有頂天になってしまう。
「アヤナ、久しぶりですね」
「オルフェ様にお会いしたかったです!」
感動の再会!!!
「いつノーザンに?」
「昨日です!」
今はハイランドで勉強中。クルセード様のところで下宿していること、イアンの紹介で知り合ったジュリアとノーザンの観光に来たことを説明した。
「ようこそ、ノーザンへ。歓迎します」
オルフェ様がにっこり微笑んだ。
営業スマイルだとわかっていても麗しい。
「ありがとうございます。まさかお会いできるとは思いませんでした。光栄です」
ジュリアは大貴族の令嬢らしく言うけれど、自己紹介はしない。
無難な対応といった感じ。
「アヤナ、こちらにはどの程度いるのですか?」
「天気次第で観光できなくなるので、一週間ほどいる予定です」
「そうですか。新しい観光地ができたのですが知っていますか?」
「もちろんです!」
ノーザンの情報はルクレシアやこっちにいた時に親しくなった人との文通で把握していた。
「魔物園のことですよね?」
ノーザンの三大危険魔物と言われる氷竜、白剣虎、北方熊を一般人でも見ることができる施設ができた。
各一体しかいないけれど、他国から来た人は本物の危険な魔物が見られるということで大人気らしい。
「行く予定はありますか?」
「もしかして、無料招待券をくれるのですか?」
「氷竜は特に人気で予約しないと見学できない日もあります。私であればいつでも本物を見せてあげられます」
「それはもしかして……」
「明日、氷竜討伐に行きます。魔法訓練を兼ねて行くので小規模の生息地です。一緒に行きませんか?」
氷竜討伐のお誘いが!
「楽しそう! 行きたいわ!」
ジュリアが叫ぶ。
目の輝き方がどこかネイサンを彷彿とさせた。
「ぜひご一緒させてください!」
オルフェ様と一緒に魔物討伐なんて……嬉しい!!!
「では、明日。王城に来てください」
「はい!」
大幸運。
光魔法でサポートして、好感度を上げようと思った。




