17.魔法大学で
「これがハイランドの魔法大学!」
ハイランド最難関の大学だと言われるだけあって門も建物も立派な感じ。
やっぱりすごそう……。
ご飯がすごく美味しくてすごく安い食堂かどうかも気になった。
「可愛い子じゃん!」
「恋人?」
「友人。アヤナには好きな人がいるからダメだよ。口説かないほうがいい。王宮敷地内の別館に下宿している。困った時はクルセード様に相談できる立場だから」
全員ドン引き。
そりゃまあそうよね……。
クルセード様の名前だけで圧倒的な牽制効果がある。
「見た目はいいけれど、性格は図々しい。女性だけど男性の友人みたいな感じかな」
「それはそれで面白い」
「仲良くするだけならいいだろう?」
「そうそう」
さすがハイランド。強い。ドン引きしたのにすぐ戻って来た。
「学生じゃないよね?」
「何をしている感じ?」
「属性は?」
「光。最近は魔物討伐ギルドで一人解体作業をしているわ」
結界、防御、身体強化、強化した魔法武器で解体する建物をひたすら殴っていることを説明。
狙い通りウケた。
「アヤナ最高!」
「面白い!」
「友達になって!」
やっぱりハイランド。強さは人気に変換される。
「イアンを通しての知り合いで。一気に友人作ると面倒だし、名前を覚えられないから」
「仲介料取るかな」
「ひどい!」
「さすがイアン!
「容赦ない!」
「前の依頼の時に見た人もいるわね? 風使い多め?」
「そうだね。俺が風だから。でも、他の属性もいる」
「全員集まれば全属性かなあ」
「全員いないけどな」
「他のグループと掛け持ちもいるから」
「白はいない」
「白魔導士のこと? 光の使い手ではなく?」
「大学は頭がいいやつが多いけれど、実技はイマイチってやつも多い」
「状態異常を治せる光魔法の使い手が貴重」
「そういうやつは大学なんかに行かない。さっさと就職する」
「あー、なるほどね」
「アヤナの実技はすごい。防御魔法がすごかった」
「だよな」
「防御魔法が得意?」
「得意なのは結界と回復。防御はあんまし。悪くない程度にはなっていると思うわよ」
「それであのレベル?」
「すごい!」
もっと褒めてもいいのよ?
ニヤニヤしちゃう。
私もハイランドに染まりそう。
「アヤナの防御魔法ってどのぐらい耐えられるわけ?」
「中級は防げるわ。上級は術者の技能次第だけど、すぐに身代わりペンダントを割らずに済むとは思うわよ」
ルクレシアやネイサンの攻撃に耐えられるように精進した成果。
「天才だ!」
「実力者だ!」
「ぜひ、お友達に!」
やっぱり私は主人公!
「状態異常も治せる?」
「よく使うのは大丈夫。石化は無理」
「石化はさすがになあ」
「レベルというか次元が違う」
「火傷は?」
「治せるわ。でも、酷いのはわからないわね。軽症しか治したことがないから、何とも言えないわ」
「酷い火傷をしてしまった女性がいる。試しに治せるか挑戦するのはどう?」
イアンに聞かれた。
「友人?」
「まあ……知り合いではあるかな」
「ふーん。いいわよ」
事情がありそうだと思って了承した。
午後は解体作業があったので、夕方に待ち合わせをした。
「夕食は奢るよ」
「遅くなりそう?」
「さあね」
飛行魔法で向かったのは大豪邸。
イアンが面会を求めると、待合室で待たされた。
「どうぞ」
部屋に通されると豪華なドレスを着た女性がいた。
「どうしたの? 急に」
「紹介する。友人のアヤナだ。こっちはジュリア。大学に入ったばかりの頃、親切にしてくれた」
「容姿の優れた男性とデートするのが趣味なの」
ジュリアがにやりとした。
「もう無理だけど」
ジュリアの顔は崩れているような感じだった。
「ハイランドでは異性との交流が積極的で大胆だ。婚約者や恋人がいても関係ない」
ハイランドでは一夫多妻も一妻多夫も認められているので、相手探しの競争がすごい。
なので、ちょっとでも良いと思う人がいたら、とにかく声をかけるらしい。
「そのせいで喧嘩して別れるカップルも多い。ジュリアは婚約解消をする時に揉めてさ」
家の都合もある婚約だっただけに、簡単に別れることはできなかった。
そこで決闘方式で決めることになり、ジュリアの代理人が勝って婚約解消をした。
その後、ジュリアは何者かに襲撃され、顔に酷い火傷を負ってしまった。
元婚約者側の誰かが雇った者かもしれないし、父親の政敵が雇った者かもしれない。
犯人も理由もはっきりとわからないままの事件になってしまったことを教えてくれた。
「ジュリアは被害者だ。見ればわかるけれど、完全に治療することができなかった」
「大金を払って評判の良い治療士に頼んだわ。火傷らしい痕が見えなくはなったけれど、魔法をかけすぎて顔が崩れてしまったのよ。これ以上は綺麗にできない、無理って言われたわ」
「そうなのね。触ってもいい?」
「いいわよ。これ以上、崩れようもないしね」
ジュリアの顔に触って状態を確かめる。
どの程度の化粧をしているのかも。
「イアンに素顔は見せられないわよね。別の部屋に行きましょう。顔をしっかりと洗ってきて。お化粧や化粧水なんかを全部落としてから魔法をかけるわ」
「治療費はいくら?」
「お試しだから無料よ。うまくいったらイアンにお礼をしてあげて」
「俺はいい。もしかしたらって思っただけだから」
「顔を洗ってくるわ」
ジュリアが洗顔をしたあとに浄化魔法をかけた。
「たぶんだけど、一気に治療しようとしたのが間違いね。細かく分けないと」
「そう。でも、今更よね? 魔法での治療はもう無理だって言われたわ」
「試してみるわ」
一番酷いと思うところだけに火傷治療魔法と回復魔法をかけた。
「ましになったかも」
「本当?」
まじまじと鏡に映る顔を確認するジュリア。
崩れた顔で平気なわけがないわよね……。
気丈に振舞っているけれど、つらい気持ちを必死で抑えているに決まっていた。
「確かにそうかも! ありがとう!」
「ちょっと、私を甘く見ないでよ!」
主人公パワーを発揮してなんとかしてあげたい。
現状に合わせて細かく範囲を分け、私の使える光魔法を駆使した。
「もう終わり。意味がなさそう」
ジュリアの顔は歪みがなくなり、綺麗になった。
「奇跡だわ……私の顔に戻ったわ!」
ジュリアの顔を見たイアンも驚いた。
「さすがだよ! アヤナ、ありがとう!」
「実力者だから!」
主人公は最強なのよ!
「お礼をするわ! 一億でいい?」
「一億!」
さすがに驚いた。桁が違う。
これもハイランドのすごさってやつ?
「待っていて!」
ジュリアは部屋を飛び出していった。
「ジュリアは相当なお金持ちなの?」
「この屋敷を見ればわかるよね? 公爵令嬢で父親は大臣だよ」
「イアンは玉の輿狙い?」
「その気は全くない。俺には爵位がないから正夫になれない。側夫になっても飽きたり役に立たないってなったら捨てられるだけだ」
「ハイランドはいろいろな意味ですごいし怖いわねえ」
「ディアマスとは全然違う感覚や常識がある国だよ」
そのあとジュリアの母親が来て感謝され、父親が帰ってくるまで待つように言われ、父親と兄たちから感謝され、イアンと一緒に夕食に誘われて歓待された。
「本当にいいの?」
「当たり前よ!」
本当に一億の小切手をくれた。
「ノーザンへの留学やオルフェ王子の追っかけ費用にして!」
「ありがとう! これでオルフェ様に会いに行けるわ!」
「一緒に行かない? 私もノーザンに行ってみたいわ!」
ジュリアはハイランドから出たことがないらしい。
「許可が貰えたらいいわよ」
ノーザン旅行のための出国をディアマスへの帰国だと勘違いされないように、アイン様を通じてクルセード様の許可をもらった。
ジュリアとノーザンに一緒に行くことが決まる。
「アヤナが一緒なら安心してノーザンに行けるわ! 案内を頼んだわよ!」
「任せて!」
オルフェ様に会える!!!
胸の鼓動が高まるばかりだった。




