12.ハイランド
王宮の侍女仲間とはすぐに打ち解けた。
私が狙っているのがオルフェ様で、ディアマスの好条件男性ではないおかげ。
騎士団にいるカートライト様とネイサンの友人だからでもある。
むしろ、私と仲良くなってカートライト様やネイサンを紹介してもらいたい女性が次々やって来る。
周囲から見ると、私は王子妃になるルクレシアの大親友で妹のような存在だけど、下級貴族の養女で元々は平民。
その立ち位置もしっかり活用して貴族でも平民でも身分に関係なく親しくできている。
やっぱり主人公は便利! 何でもうまくいく要素を持っているわ!
そんなある日のことだった。
ハイランドからクルセード様が来た。
ルクレシアの侍女をしていたおかげで声をかけてくれた。
「ノーザンの留学をやめたと聞いた。オルフェを諦めたのか?」
「いいえ! 勝負はこれからです!」
「勝負か」
クルセード様がにやりとする。
魔王系王子らしくてかっこいい。
「クルセード様、実はお願いがあるのです」
ルクレシアはハイランドに私と行きたかったけれど、アルード様に反対されてしまったことを話した。
「ハイランドに行ったことはとても良い経験になりました。でも、アヤナはまだハイランドに行ったことがありません。ハイランドのすごさを伝えたくても、へー、そうなのね、すごそうねという感じで終わってしまいます。全然理解できていません」
クルセード様に睨まれた! 怖い!
ルクレシアのせいで好感度が一気に下がった気がする。
「ハイランドのすごさは言葉だけでは到底伝えられません。短期間だけでもいいので、アヤナを勉強させるために預かってくれないでしょうか? いかにハイランドがすごい国か、強い国かを知ることで世界の広さを感じるはずです」
アルード様は侍女を辞めて行けばいいと言ったけれど、私はハイランドへ行くための資金を持っていない。
一カ月ほどクルセード様に預かってもらい、その間に魔物討伐ギルドでお金を稼ぐというプランが説明された。
「アヤナは光魔法の使い手だ。攻撃ができない」
「私がアヤナの杖を強化しました。攻撃に使えます」
私の防御魔法は以前よりも強くなっている。結界魔法もある。回復もできる。
強い魔物はダメだけど、弱い魔物は一人でも倒せるとルクレシアが主張した。
「多くの魔物に囲まれたらどうする?」
「それは……」
「殴りまくって解決します!」
ルクレシアのプランに乗ることにした。
「身体強化もできますし、防御魔法もあります。普通の女性とは違います! 討伐依頼もできそうなものを厳選します!」
「ハイランドには武器を使って魔物を討伐する者が多くいます。きっとアヤナにもできます!」
「面白そうだ」
クルセード様はにやりと笑い、了承してくれた。
「そうだわ! 念の為に私が護符を作ってあげるわよ」
ルクレシアが火の範囲魔法、焚き火、体温調整魔法などの使えそうな護符を作ってくれた。
「一カ月だけだし、侍女は一時休職で大丈夫よ」
「未来の王子妃が協力してくれると本当に助かるわ!」
ルクレシアのおかげで私はハイランドに行けることになった。
「お世話になります!」
「今日だけです」
クルセード様の側近を務めるアイン様が簡潔明瞭に今回の滞在について説明してくれた。
王宮敷地内にある召使い用の別館に下宿する。
でも、召使いとして働く必要はない。
小遣い稼ぎとして魔物討伐ギルドの依頼を受けつつ、ハイランドがいかにすごくて強いかを実感できるように過ごす。
アイン様が魔物討伐ギルドの登録もさっさと済ませてくれた。
「最初はこの依頼です」
薬草集め。
魔物が出る場所ではあるけれど、遭遇しても弱い魔物なので私でも対応できる。
「魔物討伐ギルドではさまざまな種類の依頼があります。魔物討伐だけをしていても評価は上がりません。採集系、伝達系などの依頼も受けてこなしておくと信用度が上がります」
魔物討伐ばかりしていた者が突然採集依頼を受けたいと言うと、適性や能力がないと思われて受けることができない場合もある。
最初からどんな依頼でも受けるという印象にしておくと、あとで困らないと教えてくれた。
「さすが、アイン様! 適切かつ効率的にランクを上げられそうです!」
「当然です。アルード様とルクレシア様にも同じように説明しました」
アイン様はゲームに登場する攻略対象者の一人。
頭が良くてエリート側近の鏡みたいな人物なので従っておく。
言われた通り、簡単な依頼から受けることにした。
移動魔法も浮遊魔法もないけれど、身体強化魔法を使えばちょっとは速く走れる。
こういう依頼はお金にならない。必要品を購入すると赤字の場合もある。
でも、とにかく簡単。お金のためではなく信用を得るためだと割り切った。
体力と脚力を鍛えることもできると思い、何度も薬草集めの依頼をこなした。
おかげで受付の人とはすぐに仲良くなれた。
若い女の子が自立するために一人で頑張っていると思ってくれた。
むしろ、魔物討伐をしたいと言われたら困ってしまうと言われたので、やっぱり採集系から始めたのは正解だと思った。
「伝達系の依頼も受けてみたいです。経験の幅を増やしたいので」
「そうね。それがいいわ! 女性でもできるのがあるから」
手紙や荷物を届けるようなものから、派遣業みたいな仕事もあった。
回復魔法が使えるので、親切な人や仕事先の関係者に無料でサービスすると喜ばれた。
むしろ、回復魔法で治療系の就職をしたらどうかと勧められたけれど、それはできない。
なぜなら、私が目指すべきは武器で殴りまくること。魔物を自分で攻撃できることの証明だから。
クルセード様が面白いと思ったことを有言実行しておかないとダメなのよ!
でないと、クルセード様に嘘つき、信用できない、無能者だと思われてしまう。
そういうキャラなのはゲームでわかっているし、クルセード様の好感度が低いとバッドエンディングの確率が上がる。
現実世界のバッドエンディングなんて絶対にごめんだわ!
「すごく評判がいいわよ、アヤナちゃん!」
順調な気もするけれど、ちゃん呼びは若い女の子扱いをされている証拠。
反対されるかもしれないけれど、そろそろ弱い魔物討伐も受けてみたかった。
「あの……魔物討伐系も経験してみたいのですが……」
「そろそろ言いそうだと思ったわ。でも、大丈夫? 魔物を見てショックを受けてしまう女の子もいるのよ。戦闘すると、血を見ることになることもわかっている?」
「大丈夫です。血を気にしていたら怪我人を光魔法で治療できません。ノーザンで氷竜を討伐する人々をサポートしていた経験もあります!」
胸を張って言ったら驚かれた。
「氷竜討伐のサポートをしていたの?」
「実は凄腕の白魔導士だったのか?」
ギルドにいる人たちから注目された。
これなら依頼を受けてもいいって言ってくれそう!
「白魔導士ではないですけれど、光魔法を結構使えます!」
「そうなのね。だったら他の人と組むといいかも?」
「複数人でこなす討伐依頼のメンバー募集で、回復役の募集を探してみるといい。掲示板のほうに張り紙が多くある」
「そうですね。でも、短期滞在なのでずっと組むのは難しいというか、とりあえず一人でできそうなのはないですか?」
小さくて弱い魔物を捕まえる依頼を勧められた。
「素早いのよ。無理ならキャンセルの手続きをするから言ってね」
「わかりました。試してみます!」
ついに魔物討伐!
いざ出陣よ!




