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私の推しは北方の白銀王子  作者: 美雪


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1.私は主人公

 よろしくお願いいたします!



 私はアヤナ・スピネール。十八歳。光の魔法使い。


 現在、北方の国ノーザンに留学している。


 前世の知識によると、アヤナ・スピネールは恋愛系ゲームアプリの主人公。


 ゲームの内容は好みの攻略対象者の性格や過去などを知るためのストーリーを楽しみながらカップリングを目指したり、推したい相手の推し活動を楽しむ。


 私はこのゲームを相当やり込んだらしく、子どもの頃に思い出した前世の記憶として残っているのはほぼこのゲームのことだった。


 この世界がゲーム通りなら、私は魔法学院に特待生として入学できる!


 両親が死んで伯父に引き取られることになったけど、貧乏な男爵家の養女でしかない。


 伯父やその家族から酷い扱いを受け、使用人のように働かされる毎日に希望が宿った。


 つらくても苦しくても大丈夫。私は主人公。魔法学院で運命の相手と巡り合い、結婚して幸せになれると信じて頑張った。


 攻略対象者は魅力的な男性ばかりだけど、私が心から想っていたのはディアマス王国の北に位置するノーザン王国の第二王子オルフェ様。


 オルフェ様は冬休み中に起こるイベントの一つである氷竜襲来の関係者。


 なので、冬休みにイベントを発生させることができるかどうかが勝負。


 でも、三回しかチャンスがなくて、一年生の時に氷竜のイベントが発生する確率はほぼなく、二年生の時に発生する確率も低い。


 三年生の冬休みは高確率でイベントが発生するけれど、オルフェ様の登場が確約されているわけではない。


 なので、物凄く攻略しにくいというよりは登場させるだけでも大変なレア中のレアキャラだった。


 でも、そういうのがかえっていいというか、やる気が出るというか。


 実を言うと、ゲームでオルフェ様とのハッピーエンディングの記憶がない。


 他の攻略キャラの情報を集めながら、どうやって登場させるかに四苦八苦している記憶はあるのに。


 そのせいでわかることは多いけれど、完全攻略は難しい。


 だけど、好きな人と結ばれたい! 絶対にオルフェ様と結婚するわ!


 最初はそう思っていた。私は主人公だからできるに決まっているって。


 でも、やっぱりゲームと現実の差が物凄かった。


 魔法学院を卒業する前にオルフェ様と出会うことはできたけれど、好感度を上げることが全然できていない。


 挽回するには氷竜討伐の関係者になって活躍すればいいと思い、魔法学院卒業後にノーザンへ来たけれど、思うようにいかない。


 むしろ、オルフェ様の目に留まりたい女性がこんなにいるのかと驚き、乗り越えなくてはいけない壁の高さを思い知ることになった。


「アヤナ!」


 呼ばれて振り返ると、同じ医療班の女性が手をふりながらやって来た。


「防御魔法はどう?」

「普通に練習中」


 光魔法が使える女性は医療班でアルバイトができる。


 ノーザン軍のケガ人や病人に治療魔法をするのが仕事。


 北方で年中寒いノーザンでは低体温症と凍傷になる人が多いので、そのための専用治療魔法を習得した。


 だけど、その程度のことができる人は他にもいる。


 オルフェ様の姿をできるだけ多く近くから見たいので、氷竜討伐に同行して防御魔法をかける担当になりたい。


 そこで防御魔法の強化に取り組んでいた。


「アヤナは変わっているわ。討伐隊に同行したいなんて……最悪の場合は部隊が全滅するほど危険なのよ?」


 それはもちろんわかっている。


 魔法学院の三年生だった時、一組全員で氷竜討伐に行った。


 囮役を任された時は信じられないと思ったけれど、オルフェ様のためなら命を懸けることができると思って頑張った。


 結局、一匹だけ釣るはずが三匹も釣ってしまい、死んだかもしれないと思ったけれど、皆のおかげで助かった。


 あの時の経験は今も鮮明に覚えている。


 だからこそ氷竜に向かっていく人たちがいかに危険な役目を担っているか、それでもノーザンを守るために命を懸けて戦ってくれているかがわかる。


「私の防御魔法があれば氷竜のブレスでも防げるって胸を誇れるほど、鍛えに鍛えればいいのよ!」


 それができたら奇跡だと言われてしまうけれど、いつかできるようになると私は信じている。


 だって、主人公だから!


 光魔法を極めればいいだけだしね。


「はいはい、わかったわよ。だけど終業時間。アルバイトは帰らないとね」

「あー、もうそんな時間なのね」


 暇過ぎて防御魔法の練習をしていたものの、いつの間にか時間が経っていた。


「また明日にしなさいよ」

「そうね」


 さっさと帰ることにしたけれど、嬉しくはない。


「今日も治療行為はなし。医療班にいるのに防御魔法の練習しかすることがないなんて……」


 留学中の生活については後見をしているコランダム公爵家や預かり人であるノーザン王家が面倒を見てくれている。


 生活費をアルバイトで稼ぐ必要はないせいで恵まれていると思う人も多いけれど、医療班での仕事がなければ誰にも評価されない。


 役立たず、無能、邪魔者、雑用者として肩身が狭いだけでなく、留学する意味がないとしてディアマスに帰国するよう言われてしまう可能性があった。


「こんなんじゃオルフェ様に認めてもらえない……」


 結婚するのは夢のまた夢。


 アルード様のおかげでノーザンに来ることができたのに、推し活動で充実している毎日でもなかった。


「あー、もう、全然ダメじゃないの!」


 下宿させてもらっている王城の使用人棟に戻る前にノーザン騎士団の練習場に行くことにした。


 ここではノーザン騎士団の人たちが魔法や武器の練習をしていて、それを応援する女性たちがいっぱいいる。


 騎士目当ての人もいるけれど、多くはオルフェ様目当て。


 オルフェ様が騎士団の人に氷魔法を教えに来るのを待っている。


「アヤナ!」

「こっち来なさいよ!」


 推し仲間が最前列に誘ってくれた。


 推し仲間との交流は何気にうまく行っている。


「治療できた?」

「全然。今日も防御魔法の自己鍛錬だけで終わったわ」

「そうだと思ったわ!」


 ゲラゲラと笑われるけれど、私も同じように笑えばいいので気が楽。


 ルクレシアのおかげで貴族らしい生活ができるようになったけれど、やっぱり私は平民らしくするほうが楽。


スピネール男爵家の養女になる前は平民だったし、礼儀作法なんて面倒と思ってしまう。


「魔法練習の時間になったわ!」


 それはオルフェ様が来る可能性がある時間。


 目つきが変わる女性が多数いた。


「今日はたぶん来ないわよ。オルフェ様は外出しているし」


 王城暮らしをしていると、そういう情報はなんとなく小耳に入る。


「えー!」

「そうなの?」

「アヤナの情報は当たるから帰ろうかしら」


 推し仲間が悩み出す。


「絶対じゃないわよ? 夕方に戻ったついでに騎士団に寄るかもしれないし。でも、魔法練習の指導をするかどうかはわからないわ」

「そうよね」

「疲れているだろうし」


 それでも一目見るチャンスがあればと思って残ってしまう。


 それが推し心であり、押し活でもある。


「最近、あの魔法ばっかりよね」

「そうねえ」


 ルクレシアが考えた氷竜の倒し方を実践するため、地面から鋭い氷を突き上げて対象を串刺しにする魔法の練習が強化された。


 うまくいけば、氷竜を遠くから安全に倒せる。


 より素早く、氷を大きく、強く、太く、鋭くなど、ひたすら練習している。


「下から氷で突き刺して氷竜を倒すわけよね?」

「地上にいる時はそれで倒せるみたいね」

「氷竜の腹部はやわらかいから」

「でも、普通の武器だって刺しにくいはずよね?」

「鱗ほどではないけれど、皮膚もそれなりに硬いわよ」

「とっても分厚い肉みたいな感じ?」

「脂肪じゃない?」

「油の塊よ」


 氷竜の硬い鱗が素材になることは有名だけど、油脂も活用されている。


 寒い地方なので魔物が燃料になるのはとてもありがたい。


 体の一部分が燃料の元になるからこそ、火魔法が効きやすいのもある。


「それでも魔法の効果で突き刺せちゃうってことでしょう?」

「そうそう。魔法だから勢いよくいけるわけよ」

「氷魔法ではなくて土魔法でもいいのよね?」

「同じような魔法ならいいのよ」


 攻撃魔法と言えば火や雷。


 何十人もの火魔法の使い手が一斉に強力な火魔法を使えば氷竜を倒せる。


 でも、ノーザンには火や雷の使い手がとても少ない。


 圧倒的に多いのが氷。その次が土。


 地上戦に持ち込めばルクレシアの考えた方法で氷竜を倒せるため、氷と土の魔法を使える人が多いノーザンには大朗報だった。


「でも、あの魔法って難しいのよ?」

「そうなのね」


 氷使いの推し仲間に解説してくれた。


 氷魔法はたくさんあるけれど、何かを凍らせる。凍った塊を出すというのが基本。


 地面から生えるように出すというのは中級。氷竜を串刺しにするほどの威力やサイズなどを考慮すると上級かもしれないとのことだった。


「上級魔法は難しいわ……」

「そうよね」

「まずは初級魔法からよね」


 千里の道も一歩から。


 でも、一生かけても上級魔法を使えない人が大勢いるというのが現実。


「氷竜対策用の魔法としてはブレス対策で口元を凍らせるのが最も簡単ね。もちろん、普通にはできないけれど」


 その次に成功しやすいのが足。


 しっぽはよく動かすので凍りにくい。


 翼の付け根は飛ぶためにかなりの筋力があり、凍ってもバサバサと動かしてすぐに解除されてしまう。


「一人で氷竜を動けなくしてしまうオルフェ様は天才よ!」

「きっと世界一の氷使いね!」

「絶対にそうだわ!」

「そろそろ私は帰るわ。夕食の時間になっちゃうから」


 召使い用の食堂で一緒に食事をさせてもらっているので、その時間までには戻らないといけない。


「またね!」

「また!」


 推し仲間と話すことでも勉強できる。


 ディアマスにいた時にはわからなかったノーザンの現状やノーザン国民がどう思っているのかを知ることができた。


 知識を増やすことも大事。魔法の練習も大事。


 ちょっとずつだけど、自分のためにもオルフェ様のためにも前進できている。


 もっともっと何かできる。私ならね!


 取り急ぎ、ノーザンへの留学が強制終了にならないための方法を考えようと思った。


*簡単に登場人物紹介


 アヤナ・スピネール……前世の記憶を持つ主人公で光の魔法使い。十八歳。元平民で現在はスピネール男爵家の養女。諸事情によってコランダム公爵家が後見をしている。オルフェとの結婚を目指して奮闘中。


 オルフェ・ノーザン……ノーザン王国の第二王子で氷の魔導士。二十五歳。ノーザン内で生息数と生息域を拡大させている氷竜などの魔物討伐を担っている。


 ルクレシア・コランダム……コランダム公爵家の長女で火の魔法使い。十八歳。ゲームでは悪役令嬢だったが、この世界ではアヤナの大親友。


 アルード・ディアマス……ディアマス王国の第二王子で光の魔導士。十八歳。幼い頃からルクレシアを一途に想っている。


 詳しくは「もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢」をご覧くださいませ。


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