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贈り物  作者: 村上は


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第23話 公衆電話

 週末の訪問者への対応は、たいてい無駄に終わる。ネットのプロバイダーには満足しているし、新聞を取り巻く環境も久しく様変わりした。誰が最初に言い出したのかは知らないが、普通に生活していると、一生で交わる人数は三万人だという。そのうち意味を持つのは三百人ほどらしい。雨を完全に避けられないように、この人数を避けることもできない。


 すべての規則に例外があるように、その例外は、準備もなく突然やって来る。宇宙では星が生まれ、消え続けている。宇宙を引き合いに出すのは大仰かもしれないが、日本に生まれたおかげで発想の自由は守られている。そこに「意味」と「状況」が加われば、なおさらだ。太陽も、地球も、流れ星も、動物も、そして人も、予期せず人生の軌道を変える力を持っている。


 そう考えると、絵空事が起こることも不思議ではない。雨宮の置き土産は、まさにそういう類のものだった。恐るべし、右京。


 片桐に電話をかけかけて、すぐに切った。杞憂かもしれないが、携帯やこの部屋が盗聴されている可能性が頭をよぎった。あり得ない想像で、あり得ない出来事を薄めたかったのだ。自分で髪を切って失敗し、丸刈りにするようなものだ。一度燃え始めたなら、燃料を足して早く燃え尽きた方がいい。


 雨宮は、必要以上に情報を出していた。ドラマの見過ぎかもしれないが、彼に泳がされるのはごめんだ。火から逃れるなら、水の中が安全だ。そもそも、調査会社の人間は本当に名刺を偽造せず、正直に身元を明かすのだろうか。


 盗聴されているなら、雨宮はわざわざ訪ねて来ないだろう。それでも、家から電話をする気にはなれなかった。外からかけることにして、洗濯機の一回目が終わるのを待って家を出た。なぜ洗濯を優先したのか、自分でもわからない。


 公衆電話は思った以上に見つからなかった。自宅から駅まで、一台もない。ようやく駅で見つけた一台に近づき、小銭を探して違和感に気づいた。硬貨の投入口がない。IC電話だった。


 携帯を失くしたら大変なことになる、と、今さらながら思った。向かいのコンビニでICカードを買い、戻ると、先客がいた。理屈の上では僕が先だが、そんな主張を本気でする人間がいるから、戦争はなくならない。


 意外にも、その利用者は若かった。携帯を持たない人間もいるのだと、片桐の顔が浮かんだ。


 電話を終えた片桐二号と入れ替わりで、僕は本家にかけた。さすがに片桐の家までは盗聴されていないだろう。そう思いたかった。


 だが、出ない。こんな時に限って携帯を持たない男だ、と腹が立った。仕方なく留守番電話に吹き込む。


『これを聞いたら、一度俺の携帯を鳴らしてくれ。そのまま待っていてくれ。俺が公衆電話からかけ直す。緊急だ。とりあえず指示に従ってほしい。――幸運を祈る』


 僕のメッセージが終わっても電話から煙が出ることはない。

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