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―転生の果て―  作者: MOON RAKER 503


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6/15

第6話「転生したら隕石だった」

【前書き】


お読みいただきありがとうございます。

この作品は「転生したら〇〇だった」シリーズです。

1話完結形式で進みますが、全15話を通して一つの物語として繋がっています。

どうぞ気楽にお楽しみください。

冷たい。


それが、最初に感じたことだった。


鳥として雲の中で光に呑まれた時、身体は熱に包まれていた。燃えるような、溶けるような熱。


でも今は、冷たい。


凍えるほど、冷たい。


目を開ける。


いや、目はない。


でも、“見える”。


暗闇が広がっている。でも、地上の夜とは違う。完全な、絶対的な暗闇。


そして、その中に――光が瞬いている。


無数の光。


遠くて、小さくて、でも確かに輝いている。


星だ。


俺は、宇宙にいる。


音が、ない。


完全な、無音。


風も、水も、鳥の声も、虫の羽音も、何もない。ただ、静寂だけがある。


人間の時は、常に音に囲まれていた。車の音、人の声、テレビの音、スマホの通知音。


たんぽぽの時は、風の音があった。石の時は、川の音があった。ありの時は、仲間の足音があった。鳥の時は、風を切る音があった。


でも今は、何もない。


静かすぎて、不安になる。


身体を確認する。


硬い。重い。冷たい。


鉱物だ。


岩石の塊。表面はごつごつしていて、内部は密度の高い金属が混ざっている。


隕石。


俺は、隕石になっている。


動けない。


腕も、脚も、翼も、根も、何もない。ただの岩の塊。


石ころだった時と同じか、と思う。


でも、違う。


俺は、動いている。


いや、動かされている。


落ちている。


重力に引かれて、どこかへ向かって落ちていく。


でも、落ちるという感覚も曖昧だ。地上のように速く落ちるわけでもない。ただ、ゆっくりと、確実に、何かに引き寄せられている。


前方を見る。


遠くに、青い星が見える。


美しい。


深い青と、白い雲と、緑の大地。


あれが、地球か。


俺がいた場所。人間として生きて、たんぽぽとして芽吹いて、石として転がって、ありとして働いて、鳥として飛んだ場所。


そこへ、戻っていく。


落ちる恐怖がある。


でも同時に、帰る感覚もある。


矛盾している。でも、どちらも本当だ。


時間が、流れる。


宇宙では、時間の感覚が曖昧だ。一日も、一年も、区別がつかない。ただ、星々の光が瞬き、青い星が少しずつ大きくなっていく。


どれくらい、ここにいるのだろう。


数日か。数ヶ月か。もしかしたら、数年も。


わからない。


でも、時間の流れが遅く感じる。いや、時間という概念そのものが意味をなさない。


過去も未来もなく、ただ”今”だけがある。


永遠に落ち続けているような感覚。でも、確実に地球は近づいている。


周りを見渡す。


他にも、岩の塊が浮いている。隕石の仲間たちだ。


でも、彼らには意識があるのだろうか。俺みたいに、考えているのだろうか。


わからない。


話しかけることもできない。


ただ、同じ方向へ落ちていくだけ。


孤独だ。


鳥の時も孤独だった。でも、あの時は地上があった。森があって、川があって、生き物がいた。


でも今は、何もない。


俺と、星々と、虚空だけ。


話す相手もいない。触れ合う仲間もいない。ただ、独りで落ち続ける。


でも、不思議と苦痛ではなかった。


この静寂が、心地よい。


何も求められない。何も期待されない。ただ、在る。


石だった時と同じだ。


でも、あの時は地上にいた。太陽の熱を感じ、雨に濡れ、誰かに蹴られた。


今は、それすらない。


ただ、冷たい虚空の中で、落ち続けるだけ。


青い星が、近づいてくる。


もっと大きく、もっと鮮明に。


大気が見える。雲の渦が見える。大陸の形が見える。


そして――


熱を、感じる。


最初は微かだった。でも、次第に強くなっていく。


大気に突入したのだ。


摩擦だ。


俺の身体が、大気と擦れて熱を生んでいる。


熱い。


どんどん熱くなる。


表面が赤く光り始める。溶けていく。削られていく。


痛みはない。でも、確かに俺は燃えている。


光になっている。


地上から見たら、俺は流れ星だ。


夜空を裂いて、一筋の光を描いている。


誰かが、見ているかもしれない。


誰かが、願いをかけているかもしれない。


そう思うと、悪くない。


俺の存在が、誰かの希望になっている。


たんぽぽの時も、誰かを笑顔にした。


石の時も、誰かに遊ばれた。


ありの時も、群れの一部として役割を果たした。


鳥の時も、空を飛ぶ姿を誰かが見ていたかもしれない。


そして今、俺は光となって空を駆けている。


俺は、また命を運んでいる。


隕石には、時々、有機物が含まれている。宇宙から来た物質が、地上に新しい命の素をもたらすことがある。


もしかしたら、俺の中にも、何かが含まれているのかもしれない。


地上に落ちた時、それが誰かの命になるかもしれない。


循環だ。


死んで、生まれて、また死んで、また生まれる。


俺は、その輪の中にいる。


熱が、さらに強くなる。


身体が、どんどん削られていく。


小さくなっていく。


でも、恐怖はない。


これが、役目だ。


燃え尽きるまで、光り続ける。


地上に、何かを残す。


それが、俺の存在意義なのかもしれない。


そして――


地上から、声が聞こえた。


いや、聞こえたわけじゃない。でも、感じる。


誰かが、願っている。


「お願い、叶えて」


小さな声。子供の声。


空を見上げて、俺に願いをかけている。


ありがとう、と思う。


俺を見てくれて。


俺の光を、希望にしてくれて。


もっと光ろう。


もっと輝こう。


最後まで、美しく燃え尽きよう。


身体が、ほとんど消えかけている。


でも、まだ光っている。


地上が、近い。


森が見える。川が見える。街が見える。


人々が、空を見上げている。


俺を、見ている。


そして――


意識が、白に溶けた。


熱が消える。音が消える。全てが消える。


でも、満足していた。


俺は、役目を果たした。


光として、誰かの希望になった。


それだけで、十分だった。


白い光の中で、俺は次へ進んでいった。

【後書き】


お読みいただきありがとうございます。

この作品は「転生したら〇〇だった」シリーズです。

次の転生も、ぜひ見届けてください。

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