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―転生の果て―  作者: MOON RAKER 503


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14/15

第14話:転生したら虚空の存在(バグ)だった

【前書き】


お読みいただきありがとうございます。

この作品は「転生したら〇〇だった」シリーズです。

1話完結形式で進みますが、全15話を通して一つの物語として繋がっています。

どうぞ気楽にお楽しみください。

何もなかった。


光も、闇も、音も、温度も。


上も下も、前も後ろも。


時間すら、なかった。


俺は――虚空にいた。


世界の外側。


システムの裂け目。


存在と非存在の境界線。


それが、今の俺の居場所だった。


体はない。感覚もない。


あるのは、ただ”意識”だけ。


純粋な思考。


それだけが、俺の全てだった。


――ここは、どこだ?


問いかけても、答えは返ってこない。


だが――


視界が開けた。


いや、“視界”という言葉では正しくない。


認識が、拡張された。


無数の光景が、同時に見える。


人間として生きた日々。事故で死ぬ瞬間の衝撃。病で夭逝した赤ん坊の体の温もり。


たんぽぽとして風に揺れた春。綿毛になって飛んだ、あの浮遊感。


石ころとして川に転がった数百年。永遠に近い孤独と、砕かれる瞬間の開放感。


蟻として働き、仲間と共に巣を守り、踏み潰された痛み。


鳥として飛び、空を駆け、墜落した時の恐怖。


隕石として宇宙を漂い、大気圏で燃え尽きた光。誰かの願いを受け止めた、あの輝き。


スマホのフィルムとして誰かの人生を見守り、傷つき、捨てられた虚しさ。


短剣として使われず、地面に落ちた無価値感。


スケルトンとして戦い、恐れられ、短剣に討たれた皮肉。


風として世界を巡り、自由と孤独を知った日々。


魔族として苦しみ、人間の心を貫いて死んだ最期。


記憶として忘れられ、消えゆく恐怖。


夢として生まれては消え、幻として終わった虚無感。


すべての転生が、一度に見えた。


時系列もなく、因果もなく、ただ並列に存在している。


それらは――


繋がっていた。


一本の線で。


魂の軌跡。


俺という存在の、転生の記録。


だが――


おかしい。


この軌跡は、歪んでいる。


本来あるべき形ではない。


俺の意識が拡張し、さらに遠くまで見えるようになる。


他の魂たちの軌跡が見える。


無数の、無限の、魂の流れ。


それらは美しく、整然と、螺旋を描いている。


人間として生まれ、死に、次は動物へ。そして植物へ。やがてまた人間へ。


規則正しく。


秩序を保ちながら。


生まれて、死んで、また生まれる。


輪廻の環。


完璧な円環。


誰もが忘却の中で転生し、新しい人生を始める。


記憶は消され、過去は失われ、ただ魂だけが次へ進む。


それが、正しい形。


だが、俺の軌跡は――


ぐちゃぐちゃだ。


あちこちに飛び、捻じれ、途切れ、また繋がる。


線が交差し、ループし、結び目を作っている。


人間から植物へ。まだ分かる。


だが――植物から無機物へ? あり得ない。


無機物から動物へ? システムが許さない。


動物から隕石へ? 地球外へ飛ぶ?


隕石から人工物へ? 次元が違う。


人工物から異世界の武器へ? 世界線が違う。


武器からアンデッドへ? 生死の概念を超えている。


アンデッドから精霊へ? 存在の階層が違う。


精霊から魔族へ? 再び肉体を得る? 逆行している。


魔族から記憶へ? 実体から概念へ? 次元が崩壊している。


記憶から夢へ? 虚構の中の虚構?


そして今――虚空へ?


こんな転生は、あり得ない。


システムが許さない。


なのに、俺は転生し続けた。


なぜ?


答えが、浮かび上がってくる。


――バグ。


俺は、バグだった。


魂のシステムにおける、エラー。


本来起きてはいけない異常。


修正されるべき、誤作動。


それが、俺の正体だった。


事故で死んだあの日。


魂が肉体を離れる瞬間、何かが壊れた。


転生システムの一部が誤作動を起こし、俺は”正常な輪廻”から外れた。


だから――


意識を保ったまま転生し続けた。


あらゆる存在を経験し続けた。


終わることなく、彷徨い続けた。


それは、祝福ではなかった。


呪いでもなかった。


ただの、“エラー”だった。


意味も、目的も、ない。


システムが壊れた結果。


それだけ。


俺は――


笑いたくなった。


声は出ないが、心の中で笑った。


すべての苦しみも、孤独も、喜びも、出会いも――


ただの”バグ”だったのか。


神の意志でもなく、運命でもなく、試練でもなく。


ただ、壊れていただけ。


それが――


なんとも、虚しかった。


だが同時に――


安堵した。


理由が分かった。


終わりが見えた。


その時――


声が聞こえた。


いや、“声”ではない。


システムの応答。


データの流れ。


世界の根源からの、警告。


『異常検知。魂ID: ████。転生ループ異常。修正プログラム起動』


機械的な、冷たい”言葉”。


感情も、温もりも、ない。


ただ、事実を告げるだけの音。


だが確かに、そこにあった。


システムは、俺に気づいた。


長い間、見逃されていたエラー。


放置されていたバグ。


ついに、検知された。


修正の時が、来た。


虚空に、光が走る。


無数の線が交錯し、複雑な幾何学模様を描く。


それは――世界の構造そのものだった。


『修正開始。異常魂の削除を実行』


削除。


俺は、消される。


システムから除外される。


存在そのものが、なかったことにされる。


それでいい。


もう、十分だった。


何度も生まれ、何度も死んだ。


様々な形で存在し、様々な終わりを迎えた。


もう――疲れた。


だが――


最後に、一つだけ。


「……ありがとう」


声なき声で、呟く。


誰に向けた言葉かは、分からない。


システムに? 世界に? それとも、自分自身に?


分からない。


でも、言いたかった。


「俺は、壊れていた」


魂の軌跡が、光に包まれていく。


「でも――」


消えていく。


「確かに、生きた」


人として。


花として。


石として。


蟻として。


鳥として。


隕石として。


フィルムとして。


短剣として。


スケルトンとして。


風として。


魔族として。


記憶として。


夢として。


そして今、バグとして。


すべての形で――


確かに、そこにいた。


存在した。


感じた。


考えた。


生きた。


それだけで――


十分だった。


光が、すべてを包む。


虚空が、再構成される。


俺の存在が、データとして解体されていく。


痛みはない。


ただ、消えていく。


溶けて、散って、無に還る。


最後の最後――


温もりを感じた。


冷たいはずのシステムから、なぜか温もりが伝わってくる。


そして――


声。


機械的ではない、優しい声。


人の声。


「――おかえり」


誰の声?


分からない。


でも――


懐かしい。


温かい。


帰る場所が、ある。


次が――


来る。

【後書き】


お読みいただきありがとうございます。

この作品は「転生したら〇〇だった」シリーズです。

次の転生も、ぜひ見届けてください。

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